↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
国家消滅  作者: Dar_3026
PR
15/30

第15話 救国放送

 市役所前に国旗が戻ってきた。


 残り十二日。

誰かが倉庫から出した古い旗を、正面広場の柱へ掲げた。

国家を終わらせる政府に抗議するため、日本国の旗が使われている。


 広場には数百人が集まっていた。


「移行協力を停止しろ」

「全住民へ最低保障を」

「十七%だけの国を認めるな」


 窓口へ押し寄せた人々とは違う声だった。

自分の判定を直してほしいのではない。

計画そのものを止めろと言っている。


 市長が庁舎の階段へ立った。


『当市は、国家機能継承計画への実務協力を停止します』


 広場から歓声が上がった。


『政府が非継承人口の生命、財産、基本的人権を保障するまで、住民記録の移管、施設の引き渡し、行政閉鎖を行いません』


 職員たちも窓から見ていた。

拍手する者がいた。

泣いている者もいた。


 初めて、止められるかもしれないと思った。


 俺の送った資料が、誰かを動かした。


 午後、全国の公共画面へ緊急放送が割り込んだ。


 映ったのは首相ではない。

制服姿の男と、自治体代表を名乗る数人だった。

背後には国旗がある。


『我々は本日、国民救済会議を設立した』


 男は地方防衛司令部の指揮官だった。


『現政府が強行する国家機能継承計画は、国民の大多数を統治と保障の外へ遺棄するものであり、国家存続の名を借りた国家放棄である』


 放送は、計画の即時停止、資格の再審査、全地域への最低限の医療・水・電力保障を要求した。


『政府が応じない場合、我々は国民の生命を守るため、必要な行政機能を保全する』


 広場の歓声がさらに大きくなった。


 画面には、救国会議へ参加した自治体と部隊が表示された。

切り捨て対象の地域が、次々に青く塗られていく。


 荒谷は画面を見ながら言った。


「最低保障の費用が出てない」

「これから出すんでしょう」

「電力の配分も、薬の調達先もない」

「まず止めないと、話し合いもできない」

「止めている間、物資は誰が運ぶ」


 俺は答えられなかった。


 晴登から通話が入った。


『直路、そっち大丈夫か』

「今のところは」

『こっちは買い占めが始まった。

店の棚が空いてる』

「保障区域なのに?」

『移行が止まるって噂で、みんな契約量以上に買ってる。

門にも人が集まってる』


 晴登の背後で警報が鳴った。

区域内放送が、契約者以外を門へ近づけないよう呼びかけている。


『お前の資料から始まったって、本当か』

「分からない」

『嘘つくな』

「送ったのは俺だ。

でも、武装しろなんて書いてない」

『書かなくても、使う奴は使う』


 晴登の声に怒りより恐怖があった。


「計画を止められるかもしれない」

『その間に親父の薬が止まったら?』

「止めさせないための最低保障だ」

『誰が保証するんだよ』


 通話が切れた。


 夜、市役所の通常業務は停止した。

代わりに、救国会議から協力要請が届いた。

燃料在庫、医薬品備蓄、給水設備、住民数。

維持計画を作るため、各自治体へ数字を求めている。


 少なくとも、何も考えていないわけではなかった。


 俺は追加資料を送るべきか迷った。

地域別の閉鎖手順には、政府がどの施設を重要と考えているかが記されている。

救国会議が守る場所を選ぶ助けになる。


 そのとき、庁舎内の画面が切り替わった。


 地方放送局の正面玄関。

装備を着けた部隊が立ち、出入りを封鎖している。


 次は高速道路の物流拠点。

武装車両が門を塞ぎ、政府契約の輸送車を止めていた。


 国民救済会議は、声明を出しただけではなかった。


 俺の資料を根拠に、国家の設備を占拠し始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。