第九話
次の日、俺は和樹の事を意識しまくっていた。
昨日の事を、何も説明していない事に気付いたのだ。
呼び出された事も何も説明しなかったし、連絡先を交換した事なんて見ていたら分かるだろうに何も聞かれなかったし、帰りは『校門の時間制限ってキツイよな』っていう話しかしなかった。
これは、どうすべきだろうか。
昨日、告白された事を報告する?
告白されたけど、付き合ってはいないよとか言い訳みたいなこと言うのも、何で?って感じだし。
なんて言ったら言い訳臭くなく報告できるんだ?!
「おい、赤坂」
悩みに悩みながら、何も言えずに既に昼休みに突入してしまったと焦り始めた時、堤谷が不機嫌そうに話しかけてきた。
「え、何?何か怒ってる?」
和樹が不機嫌になっているなら分かるけど、何故、堤谷?
不思議に思っていたら、顎で教室の入り口を示された。
『何だよ、態度悪いな』と思いながらそちらを向くと。
何と、扉の所に昨日の女子が――。
「あぁ、なるほど、悪い」
一緒に帰るの『恥ずい』って言ったのに、何で教室に?!
いや、『緊張する』って言ったから、別に『恥ずい』とは違うと思ったのか?
って言うか、昼休みに和樹に説明したかったのに。
とりあえず、扉の所まで行かない事には始まらない。
堤谷に睨まれながら、俺が向かうと、彼女は廊下の窓際に移動していた。
多分、クラスの連中に聞こえないように距離を取っているのだろう。
そういう気遣いが出来るなら、教室に来るんじゃなくてメッセージで教えてくれても良かったのでは?
「あ、赤坂君。いきなり、ごめんね、あの、赤坂君って、お昼はいつもお弁当って聞いたんだけど、一緒に食べても良いかな?」
いや、もうそれは恋人じゃん。
マジでこの子、グイグイくるな。
なんか、気を使って断るのも面倒になってきた。
確かに、好きな相手と仲良くなろうと努力するって凄い事だし、大事な事だと思うけど。
俺としては、ちょっと迷惑にしか思えない。
それを、傷付けないようにって気を使って遠回しに断ったりするから、彼女も頑張ろうって思っちゃったんだよな。
これは、ちゃんと断らなかった俺の責任だ。
「俺、いつも和樹と食ってるから。ごめん。一緒には食べられない」
俺に気持ちがないって事を、ちゃんと表さなきゃいけなかったんだ。
ハッキリ断ったら、彼女は凄く傷付いた顔をした。
告白って、されたらただ嬉しいだけのものかと思っていた。
でも、された方もこんなに申し訳なくなるんだ。知らなかった。
和樹だった頃の俺は、告白を断るのなんて何の苦もなかった。
『俺は稔が好きでも伝えられないのに、女はすぐに伝える』なんて思って、嫉妬までしていたっけ。
稔になって、和樹とは全く違う感じ方をするのが不思議だ。
「そっか、ごめんね。じゃあ、私、教室に戻るから」
ちょっと慌てたようにそう言って帰って行く姿に、ただ黙って去っていく和樹が重なった。
いつか、こうやって俺から和樹も去っていくんだろうか。
なんて、湿った事を考える。




