第七話
その日の夜、連絡先を交換した彼女に、とりあえず一言送ることにした。
何を送ればいいのか悩みに悩んだが、何かは送らねばなるまい。
そもそも俺はまだ、相手の名前すら知らない。
【赤坂稔です。よろしく】
……なんか、ネトゲの最初の挨拶みたいになってしまった。
だが、こう送れば相手もきっと名前を送ってくれるだろうという、俺なりの算段である。
【水流瑞樹です 今日はいきなりごめんね】
【赤坂君が良ければ……明日の部活終わりとか、一緒に帰ってもいいかな】
なんと。
あんなにまごまごした俺を、彼女はまだ誘ってくれるのか。
っていうか、なんで俺なんだろう。
特にバスケが上手いわけでもないし、顔が飛び抜けて良いわけでもない。
和樹の引き立て役にしかなってないと思っていたんだけど。
やっぱり、和樹の対応が冷たすぎるから、対比されて俺が優しそうに見えるんだろうか。
なんて、現実逃避してみたけれど。
本当にどうしたらいいんだ。これ。
部活終わりに一緒に帰るとか、俺にはハードル高過ぎなんだけど!
え?お友達からじゃなかったの?
一緒に帰るなんて、『付き合い始めました』って言ってるようなものでは?
ど、ど、ど、どう返せばいいんだ。
『和樹も一緒で良ければ』
とか、絶対やったらダメなやつだよな。
でも、だからと言って、『女の子と一緒に帰ることになったから、和樹とは一緒に帰れない』なんて言ったら、和樹が傷付くのでは?
ん?
……待てよ?
そう言えば、俺が和樹だった頃でも、そういうのあったな。
確か、高校一年生のゴールデンウィーク前に、稔に彼女ができたのだ。
部活のあと、マネージャーに連れていかれる稔を見て、俺はすぐに察した。
あぁ、告白されるんだな、と。
相手のことは知らなかったけれど、女バスの子だというのは知っていた。なにせ練習中、いつも稔のことを見つめていたから。
本当はマネージャーも稔のことが好きなのに、その女に頼まれて断れなかったんだ、ということも見ていてすぐに分かった。女は不思議な生き物だな、と思ったものだ。
そしてその女は、奥手な稔に対して、迷惑なくらいグイグイ迫っていたっけ。
告白した次の日の放課後には、クラスに押し掛けて彼女面して一緒に帰ろうと誘っていた。『今日はパフェ食べに行きたいな』とか、毎日何かしらを提案していた。
稔はそういうのが苦手なのに。
放課後はまっすぐ家に帰って、大好きな母親の美味しいごはんをたらふく食べるのが稔の何よりの楽しみなのに。
ゴールデンウィークが始まると、稔はその女に毎日のように連れ回され、俺とはまったく遊んでくれなかった。
おかげで、家に出入りしている爺さんたちに心配されたものだ。『ちゃんと手綱握っとけよ』とか言われたっけ。
確か、女の名前は――『つる』。
……え?つる?
待て待て待て。
水流って書いてあるけど?
もしかして、別の人?
え?
水流って何て読むの?すいりゅうさんじゃないの?




