第十四話
「島、行きたい」
すっかり気分が良くなった俺は、五時間目が終わるなり、和樹を振り返ってそう言った。
隣で堤谷は『はぁ?』と怪訝な顔をしていたけど、和樹はすぐにスマホを開いて調べ始めてくれた。
「佐渡島とか?新潟から船で行けるよ。廃墟とか金山とかあるけど。たらい舟とか乗れるって。古い木造家屋の集落とか見ても良いな。後は、海鮮丼かな」
出来る男、和樹。
最近のスマホは本当にすごいよな。ちょっと聞いたらすぐにプランまで立ててくれる。
朝の七時に新幹線に乗れば、午前中には佐渡島に上陸できるらしい。
昼は海鮮丼で決まりだ。
午後は、金山と鉱場跡を巡ってホテルに。
次の日は青の洞窟あたりでたらい舟に乗って、午後は木造集落散策で帰宅。
「今から予約できないだろ。佐渡島とか、GWは大混雑だぞ」
堤谷が横から覗いて来た。確かに、その通りだ。
GWが間近に迫った今からでは、予約も無理そうだな。
「他には、広島の方の、穏やかそうな島も候補にあるな。聞いた事ないけど。新幹線の駅から直ぐに島に行けるらしい。混んで無さそうだし。島渡る前にチャリ借りたら良い感じだそうだ。駅前のホテルなら今からでも取れるな。……トータルで七、八万するけど。」
七、八万か。
でも、何も無い穏やかな島も魅力的だな~。
潮風に吹かれてボーっとしたい。
「たこ、食べたくなってきた」
うん。決定。
和樹と目が合って頷き合う。決定だ。
「いやいや、何で決定みたいな空気出てんの。何で二人だけで行く感じになってんの。俺の意見もちゃんと聞いて」
俺と和樹は、決定したと思って話しを終えようとしたのに、堤谷が口を出してきた。
確かに、さっきから口は出していたけど。一緒に行くつもりだったとは。
「堤谷がいるなら、ボウリングでもやりに行くか?堤谷は勝負とかの方がいいだろ」
島もたこも関係なくなっちゃった。
和樹に堤谷と遠出する気は無い様だ。俺も無いけど。
堤谷と三人で行くならわちゃわちゃ遊べるところが良い。
落ち着きのない堤谷と一緒に何もない島なんて行っても、『何もねぇな』とか言うだけだろうし。
「あ、俺、あそこのゴーカートやりたい。」
俺が曖昧に提案すると、すぐに和樹が『ここか?』と画面に表示してくれる。
『なんであそこのゴーカートだけで分かるんだよ』とか堤谷が言っているけど、無視。
前からやりたいと思っていたけど、二人でやるのは何となくちょっと恥ずかしかったのだ。
堤谷くらい、一人で熱くなっている男がいたら、俺の恥ずかしさは和らぐ気がする。
「いや、GWなんて地獄なくらい混んでるだろ。なんか、入るだけで四時間待ちとか聞いたことあんだけど」
四時間待ち……絶対、イヤだ。
やっぱ、GWって大変だな~。もう、何処にも行きたくなくなってきた。
「いや、そこじゃなくて、こっち」
和樹が少し遠くの施設を表示する。
確かに、こっちまで行けばそれなりに人は少なくなるだろうか。
あとは、朝早くだな~。
結局、どこに行くかは決まらないまま、先生が来て授業が始まってしまった。




