第十三話
和樹だった頃は稔の事ばっかり考えていて、好きな教科とか考えた事も無かった。でも、稔になった今は、色んなものに好き嫌いがある。
午後一にある日本史の授業は、俺の一番のお気に入りだ。
昼飯後に日本史なんて、寝ろと言っているようなものだとかいうやつもいるが、俺には全く理解できない。
この人がこうしたから、この人にこういう影響があって、この人がこうする。
この人がこうすることによって、この国がこういう事を始めて、世界がこうなる。
一人の人の行動が多くの人を動かしている。もしくは、どれだけ行動しても変わらない現状に嘆いている。一人では成し得ないことを、多くの人が集まって成し得ている。
そんな人間ドラマの総集編みたいな話が面白くない訳がない。
多分、歴史が嫌いな人は、試験のためだけに勉強しちゃっているんだ。
確かに、それが何年に起こったかとか言われたら俺も正確には覚えてないけど、因果関係を覚えていれば、事が起こった順序は分かる。
記憶力って言うのは、訓練で鍛えられる能力だから、記憶する練習をするのも大切だしな。
と言うか、高校生くらいまでは、そんなに頑張らなくても興味があれば覚えられるものなんだよ。好きこそものの上手なれってやつ。
後は、教科で壁を作らない事だ。
歴史で地図を作った人が出てきた時に、どうやって地図を作るのかって言う計算方法を数学に繋げたり、その時にどこでどんなことを体験したかを地理に繋げたり、どういう星を見ていたかを地学に繋げたり。
そんな勉強法を、俺と和樹は昔から一緒に実践してきた。
キッカケは、小学校の頃だったと思う。
戦時中は教科書が真っ黒に塗りつぶされて、何の役にも立たなかったからと、一人の教師がある小説を元に授業を行った的なテレビ番組を見た。
小説に出てくる単語で分からない事が出てきたら、それを調べに図書館に行って辞書を引く。数学的な話が出来たらそれを考える。物理的な話が出てきたらそれを試してみる。
そんな勉強法を実践する学校があったみたいな内容だったと思う。
それが面白そうだなってなって、和樹と二人で始めたんだ。
ただ、何の小説だったかは覚えてなかったし、昔の小説を読むのは難しすぎた。
だから、俺たちは身近なもので代用する事にした。社会の教科書だ。
教科書に出てきた地名を地図で調べて特産品を纏めたりするところから始めた。
特産品って言うのが何なんだろうって考えて、特産品のランキングを探したりもした。そしたら、そのランキングの方法って言うのを調べて、統計学を調べることにも繋がる。
他にも、どういう気候の所でどういうものが採れるかも分かった。そこから日本の気候だけじゃなくて世界の気候とかも纏めてみたりした。雨量とか気温だけじゃなく潮の流れとか地形とか色んな事が関係して、特産品というのが出来ていた。
そうなると、その気候にあった建物の形とかが決まっていて、世界中の建物を調べた。昔の建築方法とかも調べてみると楽しかったな。模型も作ったっけ。地震の起きない土地と起きやすい土地で建材が違うなとかいう話にもなった。
一旦その調べものに一段落したら、今度は山を調べた。たまたま、近い場所にも山があったので、一緒に山登りに行ったりもした。野外調査ってやつだな。
山に登る前に山登りの注意点を調べて野生動物や気圧の事を知ったり、標高を知る方法を調べたり、現地の花を観察して纏めてみたり、頂上付近の火を使っていい所で水の沸点が低い事を確かめたり、山から見えた景色を昔誰が見たのかを調べて俳句を作ってみたり。
俺は和樹と中学まで、そういう事を楽しんでいた。
高校に入ってからは、部活に入ってバスケばっかりしているけど、たまにはどっかに行きたくなって週末出かけたりしている。
でも、最近は本当に、近場ばっかりだったな。




