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風鳴りの草原(1〜50)


【1】


 そこで文章は終わっていた。裏返してみる。何も書かれていない。紙は長い年月を経たように黄ばんでいたが、不思議なことに文字だけは鮮明だった。


 あなたはもう一度周囲を見回した。すると今まで気づかなかったものが見えた。東の方角。草原の中に細い石の道が伸びている。そして南の方角。背の高い草が集まった場所があり、その奥へ続く獣道のようなものが見える。


どちらへ向かうべきだろうか。紙に書かれていた「迷宮」という言葉が気になる。しかし、このまま立ち止まっていても何も始まらない。


あなたは紙を折りたたみ、懐へしまった。風が吹く。

遠くで鳥が鳴く。どこかに出口がある。どこかに答えがある。あるいは、何もないのかもしれない。それを確かめるためにも、まずは歩き出さなければならなかった。【2】へ進め。



【2】


 気がつくと、あなたは見知らぬ草原の中に立っていた。風が吹いている。どこまでも続く緑の草が波のように揺れ、その音だけが静かに耳へ届いてくる。空には雲が少なく、陽光が地面を明るく照らしていた。季節は春とも夏ともつかない。暖かいが、どこか肌寒さも残っている。


あなたは振り返ってみた。だが、そこには来た道らしきものはなかった。草が生い茂っているばかりで、自分がどこから歩いてきたのかさえわからない。奇妙なことに、記憶も曖昧だった。名前や過去を忘れているわけではない。しかし、なぜここにいるのかだけが思い出せないのである。


辺りを見回すと、東の方角には石が並んだ細い道が見えた。草原の中に不自然なほど真っ直ぐ伸びている。誰かが歩いている様子はないが、人の手によって作られたものであることは間違いないだろう。


一方、南の方角には背の高い草が密集した一帯が広がっている。風が吹くたびにざわざわと揺れ、その向こう側が見えない。獣でも潜んでいそうな雰囲気だが、何かを隠しているようにも思える。


空を見上げると、一羽の鳥が大きく旋回していた。まるであなたを見守っているかのようである。このまま立ち尽くしていても何も始まらない。どちらへ進むか決めなければならない。


東へ向かい、石の道を調べるなら【3】へ。

南へ向かい、草むらへ足を踏み入れるなら【6】へ。



【3】


石の道は思っていたよりも古かった。大小さまざまな石が地面に埋め込まれているのだが、その多くは欠けたり割れたりしている。長い年月を風雨にさらされてきたのだろう。ところどころ雑草が隙間から顔を出しており、今では誰も手入れをしていないことがわかる。


あなたはしゃがみ込み、石の一つを観察した。表面には何かの模様が刻まれていた。しかし風化が激しく、文字なのか装飾なのか判別できない。指でなぞっていると、ふと奇妙なことに気づく。この道には車輪の跡も蹄の跡もないのである。まるで長い間、誰一人として通らなかったかのようだった。


風が吹き抜ける。その時、あなたは東の方から微かな水音が聞こえてくるのに気づいた。耳を澄ますと確かに聞こえる。小川かもしれない。


一方、南には獣道のような細い通路が続いている。草が踏み固められており、何者かが最近通った形跡もある。


西へ戻るなら【2】へ。

東へ進むなら【4】へ。

南へ進むなら【7】へ。



【4】


石の道をしばらく進むと、一本の巨大な枯れ木が見えてきた。その木は草原の中にぽつんと立っていた。周囲には同じような木は一本もなく、まるで誰かが意図的にそこへ植えたかのようだった。幹は人が数人で手を繋がなければ囲めないほど太く、枝は空へ向かって無数の指を突き出している。


しかし葉は一枚も残っていない。近づくと、木の根元に黒い穴が開いているのが見えた。獣の巣穴だろうか。それとも木の内部が腐り落ちて空洞になっているのだろうか。


あなたは耳を澄ませてみた。風の音しか聞こえない。

だが、ほんの一瞬だけ、穴の奥から誰かが囁いたような気がした。気のせいかもしれない。あなたは枯れ木の周囲を歩いてみた。


すると北側の地面に古い刻み傷があることに気づく。文字のようにも見えるが、長い年月で削られ判読できない。さらに木の東側には細い踏み跡が続いている。草に隠れて見えにくいが、人が通れそうな道だった。


一方で、来た道を戻ることもできる。この草原にはまだ見ていない場所がいくらでもあるのだから。


枯れ木の東に続く踏み跡を進むなら【5】へ。

枯れ木の南に見える白い岩を目指すなら【8】へ。

石の道を西へ戻るなら【3】へ。

枯れ木の穴の中を調べるなら【18】へ


【5】


枯れ木の東側に続く踏み跡を辿ると、水の流れる音が次第に大きくなってきた。やがて草むらが途切れ、あなたの前に小さな小川が現れる。


川幅は二メートルほどしかない。水は驚くほど澄んでおり、川底の丸石まで見える。流れも穏やかで、その気になれば簡単に渡れそうだった。


あなたは膝をつき、水面を覗き込んだ。冷たい。手を浸すと心地よい感触が広がる。しばらく眺めているうちに、不思議なことに気づいた。


水面に映る自分の顔が、ほんのわずかに遅れて動いているように見えるのだ。あなたが首を傾げる。すると水面の自分も首を傾げる。


しかし、一瞬だけ遅れる。まるで鏡の中の人物が考えてから真似をしているようだった。


あなたは思わず身を引いた。再び覗いてみる。今度は普通だった。風が吹いたせいかもしれない。そう思うことにした。


小川の向こう岸にはさらに草原が続いている。その先には何か白いものが見える。岩だろうか、それとも建物の残骸だろうか。


また、川沿いには北へ続く細い道がある。流れを辿るように伸びており、遠くで木々の影が揺れている。来た道へ戻ることもできる。


小川を飛び越え、向こう岸へ渡るなら【9】へ。

川沿いの北の道を進むなら【16】へ。

枯れ木のところへ戻るなら【4】へ。


【6】


あなたは背の高い草の中へ足を踏み入れた。途端に景色が変わる。さっきまで見えていた空が半分ほど隠れ、周囲は緑色の壁に囲まれたようになった。草はあなたの肩ほどの高さがあり、風が吹くたびにざわざわと擦れ合う音を立てている。


振り返ると、草原の入口はまだ見えていた。だが、それも草の揺れに隠れて見えたり見えなくなったりしている。少し進む。すると地面に細い獣道ができていることに気づいた。何かが何度も通ったために草が踏み固められているのだろう。


あなたはしゃがみ込み、その跡を観察した。足跡ではない。少なくとも人間のものではなかった。蹄のようにも見えるし、爪のようにも見える。しかし形が曖昧で、何の動物なのかまではわからない。


その時。ざわり。少し離れた場所で草が揺れた。風ではない。何かが動いたように見えた。あなたは息を止める。しばらく待つ。だが、それ以上の物音は聞こえなかった。気のせいだったのだろうか。


辺りを見回すと、獣道は東へ続いている。また南にはさらに深い草むらが広がっており、何か白いものがちらりと見えた気もする。北へ戻れば、草原の入口へ帰れる。ここで立ち止まっていても仕方がない。


獣道を東へ進むなら【7】へ。

さらに南へ進むなら【10】へ。

草原の入口へ戻るなら【2】へ。


【7】


獣道を辿って進むうちに、周囲の草は次第に低くなっていった。やがて視界が開ける。あなたは小さな空地に出た。


草原の中にぽっかりと空いた場所で、地面は固く踏み固められている。ここを通る者は少なくないらしい。しかし奇妙なことに、人影はどこにもなかった。


空地の中央には平たい石が置かれている。自然に転がってきたようには見えない。誰かがここへ運んだのだろう。あなたは近づいてみた。


石の表面には浅い傷が刻まれていた。最初は落書きかと思ったが、よく見ると簡単な地図のようにも見える。


一本の線。いくつかの丸印。そして北の方角を示しているらしい矢印。しかし肝心の地名や説明は削れ落ちていて読むことができない。あなたが石から顔を上げると、四方へ道が伸びていることに気づく。


北へ向かう道は石の道へ続いているようだ。東には白い岩が見える。南へ向かう道は草に隠れながら遠くへ続いている。西へ行けば、さきほどの草むらへ戻れるだろう。


風が吹いた。その瞬間、石の裏側に何かが挟まっているのが見えた。古い紙切れのようにも見える。調べることもできそうだ。


石の裏を調べるなら【17】へ。

北へ進むなら【3】へ。

東へ進むなら【8】へ。

南へ進むなら【11】へ。

西へ戻るなら【6】へ。


【8】


分かれ道から東へ進むと、やがて草原の中にぽつんと佇む白い岩が見えてきた。遠くから見た時は人の背丈ほどかと思ったが、近づいてみるとそれ以上に大きい。家一軒の半分ほどもある巨大な岩だった。


奇妙なのは、その色である。草原の土とも周囲の石ともまったく異なる。雪のように白く、表面は滑らかで、陽光を受けてかすかに輝いている。


あなたはそっと手を触れた。ひんやりとしていた。だが、それだけではない。まるで岩の奥から微かな振動が伝わってくるような気がする。


どくん。どくん。ほんの錯覚かもしれない。だが、心臓の鼓動に似た何かを感じた。あなたは思わず手を離した。岩の周囲を歩いてみる。


すると北側の地面に、小さな窪みがあることに気づく。獣の足跡のようでもあり、人の手で掘られた穴のようでもある。その中には何か金属質のものが半ば埋まっていた。


一方、岩の東側には崖へ続く細い道が見える。南には古びた建造物らしき影が草の向こうに見えた。そして西へ行けば、分かれ道へ戻ることができる。


風が吹いた。その時、岩の向こう側から誰かが歩くような足音が聞こえた気がした。しかし回り込んでみても、そこには誰もいなかった。


埋まっている金属を掘り出すなら【19】へ。

東の道を進むなら【9】へ。

南の建造物を目指すなら【12】へ。

西へ戻るなら【7】へ。



【9】


白い岩の東側に伸びる細道を進むと、やがて草原は途切れた。あなたの前には崖があった。もっとも、上から見下ろす崖ではない。巨大な岩壁の下に辿り着いたのである。


灰色の岩肌が天へ向かって切り立ち、その頂上は見えない。風が上から吹き下ろしてきて、ときおり低い唸り声のような音を立てている。


あなたは岩壁に近づいた。表面には無数の傷が走っている。自然にできた亀裂もあるが、中には人の手で刻まれたようなものも混じっていた。


その一つに目を留める。縦線。横線。丸。意味はわからない。しかし文字か記号であることだけは確かだった。さらに観察していると、岩壁の根元に小さな裂け目を見つける。


人ひとりがようやく通れそうな幅しかない。奥は暗く、どこへ続いているのかわからない。冷たい風がそこから流れ出している。


洞窟かもしれない。あるいは崖の向こうへ抜ける隠し道かもしれない。一方で、崖に沿って南へ進めそうな獣道も見つかった。


岩壁の影になっていて見えにくかったが、確かに続いている。もちろん、白い岩へ戻ることもできる。あなたは崖を見上げた。その時、一瞬だけ。遥か上の岩棚に人影のようなものが立っている気がした。だが次の瞬間には何もなかった。


裂け目へ入るなら【20】へ。

崖沿いに南へ進むなら【13】へ。

白い岩へ戻るなら【8】へ。



【10】


あなたはさらに南へ進んだ。獣道は次第に細くなり、やがて道と呼べるものですらなくなってしまう。周囲の草はあなたの背丈を超え、見上げれば青空が細い帯のように見えるだけだった。


風が吹く。ざわざわ。ざわざわ。草が擦れ合う音が四方から聞こえてくる。不思議なことに、自分の足音さえよく聞こえない。まるで草原そのものが音を吸い込んでいるようだった。


あなたは立ち止まった。方向感覚が怪しくなっている。振り返っても来た道が見えない。前も後ろも同じ景色である。


その時だった。草の間に白いものが見えた。骨だった。動物のものらしい。鹿か馬か、それとももっと別の何かか。


頭骨はなく、肋骨だけが草の根元に転がっている。近づいてみると、その脇に古びた革袋が落ちていた。かなり傷んでいるが、中に何か入っているかもしれない。


さらに南を見ると、草むらの向こうに黒い影が見える。小屋のようにも見えるし、大きな岩のようにも見える。


だが距離感がおかしい。近いようで遠い。歩いても歩いても辿り着けないような気もする。一方、西側には草が少し薄くなっている場所があり、別の道へ出られそうだった。また、北へ戻れば分かれ道の方角へ帰れるかもしれない。


革袋を調べるなら【21】へ。

南の黒い影を目指すなら【23】へ。

西へ進むなら【24】へ。

北へ戻るなら【6】へ。



【11】


分かれ道から南へ進むと、草原の中に円形の石組みが見えてきた。近づいてみると、それは古井戸だった。


人の腰ほどの高さまで石が積まれている。だが屋根はなく、滑車も桶も残っていない。長い年月の間に失われてしまったのだろう。


あなたは井戸の縁に手をかけ、中を覗き込んだ。暗い。底は見えない。小石を拾い、落としてみる。


一秒。二秒。三秒。かなり待った後で、ようやく「ぽちゃん」という小さな音が聞こえた。どうやら水は残っているらしい。


あなたが耳を澄ませていると、不意に井戸の奥から風が吹き上がってきた。冷たい風だった。地下から吹いてくるにしては妙に強い。まるでどこか別の場所と繋がっているかのようだ。井戸の周囲を歩いてみる。すると石の一つに奇妙な刻印があることに気づく。円の中に縦線が一本。その下に三つの点。意味はわからない。


だが、この草原で見つけた他の印と同じように、人の手によって刻まれたものらしかった。さらに調べると、井戸の内側の壁面に古い鉄の足掛けが並んでいるのが見えた。


錆びてはいるが、慎重に降りれば下へ行けるかもしれない。一方で、東には倒れた建造物のような影が見える。北へ行けば分かれ道へ戻れる。南には丘のような高まりが見えていた。


井戸の中へ降りるなら【25】へ。

東へ進むなら【12】へ。

南へ進むなら【14】へ。

北へ戻るなら【7】へ。



【12】


白い岩の南から続く道を進むと、やがて草原の中に奇妙な建造物が姿を現した。最初は岩山かと思った。


だが近づくにつれ、それが人工物であることがわかる。巨大な石塔だった。もっとも、今では半ば崩れ落ちている。


塔の上部は失われ、無数の石材が周囲に散乱していた。草は石の隙間から伸び、蔦が絡みついている。おそらく何十年、あるいは何百年も放置されているのだろう。


あなたは慎重に近づいた。塔の入口だったと思われる場所は崩落している。しかし完全に塞がれてはいない。


人ひとりが身をかがめれば通れそうな隙間が残っていた。暗い内部へ続いているようだ。あなたは周囲を見回した。


塔の影には風がほとんど届かない。妙に静かだった。草原では絶えず聞こえていた草擦れの音もここでは遠く感じられる。


その時、あなたはあるものを見つけた。崩れた石の一つに文字が刻まれていたのである。風化して読みづらいが、どうにか判読できる。


「……北を……信じるな……」


そこまで読んだところで文字は途切れていた。誰が刻んだのだろう。そして何を警告していたのだろう。


さらに塔の東側には細い道が続いている。崖の方角へ向かっているらしい。南には草原が広がり、遠くに一本の石碑らしきものが見える。西へ戻れば白い岩へ帰ることができる。


塔の内部へ入るなら【26】へ。

東へ進むなら【13】へ。

南へ進むなら【15】へ。

西へ戻るなら【8】へ。



【13】


あなたは崖に沿って南へ進んだ。左手には切り立った岩壁が続いている。右手には草原が広がっている。だが、ここだけ妙に静かだった。


風は吹いているはずなのに、草の揺れる音がほとんど聞こえない。まるで崖そのものが周囲の音を吸い込んでいるようだった。


しばらく歩く。すると地面に奇妙なものを見つけた。

石が並べられている。自然に転がったようには見えない。誰かが意図的に置いたらしい。


一列に。そして一定の間隔で。あなたはその列を目で追った。石は崖へ向かって続いている。終点には、人の背丈ほどの黒い石柱が立っていた。


近づいてみる。表面は磨かれたように滑らかで、周囲の岩とは明らかに材質が違う。


石柱の正面には文字が刻まれていた。だが見たことのない文字だった。読むことはできない。しかし奇妙なことに、その文字を見ていると胸がざわつく。どこかで知っているような気がするのだ。


もちろん、そんなはずはない。あなたは顔を背けた。その時。視界の端で何かが動いた。振り返る。誰もいない。草原だけが広がっている。


だが確かに、今この瞬間まで、誰かが石柱の向こう側に立っていたような気がした。


石柱の先には細い坂道が続いている。崖の上へ登れるらしい。また、南へ進めばさらに崖沿いの道が続いている。北へ戻れば倒れた塔の方角だ。


石柱を詳しく調べるなら【27】へ。

崖の上へ登るなら【28】へ。

さらに南へ進むなら【29】へ。

北へ戻るなら【5】へ。



【14】


古井戸のあった場所から南へ進むにつれ、地面はゆるやかに高くなっていった。草は相変わらず風に揺れている。


だが周囲を見渡せるようになったためか、不思議と心細さは薄れていた。やがてあなたは丘の頂上へ辿り着く。


ここからなら草原のかなり広い範囲が見渡せた。北を見る。遠くに倒れた塔が見える。さらにその向こうには白い岩が陽光を反射していた。東には崖が続いている。西には草むらの海。そして南の彼方には、かすかな黒い線が見えた。


森かもしれない。あるいは城壁のようなものかもしれない。距離がありすぎて判別できなかった。丘の中央には一本の杭が打ち込まれている。古びた木杭だった。何かを繋いでいたのだろうか。


近づいてみると、杭には細い紐の切れ端が残っている。さらに、その足元には錆びた金属片が半ば土に埋まっていた。誰かがここを使っていた証拠なのかもしれない。


あなたは空を見上げた。鳥が飛んでいる。だが妙なことに、鳥たちはみな南から北へ飛んでいた。一羽や二羽ではない。


見える限りの鳥が同じ方向へ向かっている。まるで何かから逃げているかのようだった。その時、丘の南斜面に細い道があることに気づいた。また東側には崖方面へ向かう獣道が伸びている。北へ戻ることもできる。


杭の周囲を詳しく調べるなら【30】へ。


なお、南の小道はよく見ると行き止まりだった。


東へ進むなら【15】へ。

北へ戻るなら【11】へ。



【15】


丘を下り、草原をさらに東へ進むと、一本の石碑が見えてきた。遠目にはただの岩のように見えたが、近づくにつれて人の手によって作られたものであることがわかる。


高さは二メートルほど。灰色の石を削り出して作られている。長い年月を風雨にさらされてきたらしく、角は丸くなり、表面には細かなひびが走っていた。


しかし、それでもなお石碑は倒れることなく立ち続けている。まるで何かを待っているかのように。


あなたは正面へ回った。文字が刻まれている。だが読めない。崖沿いで見つけた石柱の文字とも違う。


もっと古い。もっと奇妙な文字だった。それでも、いくつかの記号だけは妙に印象に残る。


円。鍵のような形。そして、何度も繰り返される一本の縦線。意味はわからない。


だが、どこか不安な気持ちになる。石碑の根元には草が生えていた。その中に、金属の輪のようなものが半分埋まっている。


引っ張れば抜けそうだ。また、石碑の裏側へ回ると、地面がわずかに窪んでいることにも気づいた。


自然にできた窪みには見えない。誰かが掘り返した跡のようだった。さらに北にへ行けば崖方面。西へ行けば丘へ戻ることができる。


あなたは石碑を見上げた。その時だった。ほんの一瞬だけ。石碑の影が動いたように見えた。だが空には雲一つない。影が動く理由などないはずだった。


金属の輪を引き抜くなら【31】へ。

石碑の裏の窪みを調べるなら【32】へ。

北へ進むなら【13】へ。

西へ戻るなら【14】へ。



【16】


石碑から東へ続く細道を進む。草原は次第に痩せ、地面には小石が増えていった。風も強くなる。振り返ると、丘も石碑も遠くなっていた。もう戻れない距離ではない。しかし、どこか境界線を越えてしまったような気分になる。


しばらく歩くと、あなたは立ち止まった。北の方角に、大きな門があった。何もない草原の中に、ただ門だけが立っている。壁もない。柵もない。見渡す限り草原しかないのに、二本の石柱と、その上に渡された横梁によって巨大な門が形作られていた。


高さは五メートルほどあるだろうか。石柱には無数の傷が刻まれている。文字にも見えるし、ただの傷にも見える。あなたは門へ近づいた。不思議なことに、門の向こう側の景色がわずかに揺らいで見えた。


熱気のせいだろうか。しかし今日はそれほど暑くない。あなたは門をくぐろうとして、ふと足を止めた。石柱の根元に何かが置かれている。古い革表紙の本だった。


雨風にさらされているはずなのに、ほとんど傷んでいない。表紙には題名が書かれていた。


「旅人の記録 第三巻」


誰の記録なのだろう。そして第一巻と第二巻はどこへ消えたのだろう。門の向こうから冷たい風が吹いてくる。


草原の風とは違う。どこか遠い場所の匂いを含んでいた。あなたはここで決断しなければならない。


本を読むなら【33】へ。

門をくぐるなら【22】へ。

石碑へ戻るなら【15】へ。



【17】


分かれ道の中央に置かれた石を持ち上げる。思ったより重かった。石の下には湿った土があり、その上に一枚の紙切れが挟まっていた。


あなたは慎重にそれを取り出した。古い紙だった。羊皮紙のようにも見える。


端は茶色く変色し、ところどころ破れている。しかし不思議なことに、文字ははっきりと残っていた。そこには短い文章が書かれている。



もし君がこれを読んでいるなら、


私は既に門を通る前だろう。


北へ向かうな。


だが北東も信じるな。


井戸は下へ続く。


塔は上へ続く。


石碑は記憶へ続く。


そして草原は——



そこで文章は終わっていた。紙は途中から破れている。続きを探してみるが見当たらない。あなたはもう一度文章を読む。


意味はわからない。だが、これまで見てきた場所がいくつも書かれていた。


井戸。塔。石碑。偶然とは思えない。誰かがこの草原を歩いた記録なのだろう。そして最後の一文。


「草原は——」


その先に何が書かれていたのか。あなたは紙を裏返した。すると裏面には小さな地図のような落書きが描かれている。


ただし簡単すぎて正確な地図には見えない。円がいくつか。線が数本。そして端の方に、奇妙な記号が一つ。それはあなたが石碑で見た縦線の記号によく似ていた。


さらに調べるなら【34】へ。

東へ進み白い岩へ向かうなら【8】へ。

南へ進み古井戸方面へ向かうなら【11】へ。

西へ戻り草むらへ向かうなら【6】へ。

北へ進み石の道へ向かうなら【3】へ。



【18】


あなたは枯れ木の根元に口を開けた穴の前へしゃがみ込んだ。外から見ると獣の巣穴のように見えたが、近づくと印象が変わる。


大きい。思った以上に大きいのである。大人が這って進めるくらいの広さがあった。


あなたはしばらく迷った。こんな場所へ入るべきではない。常識的に考えればそうだ。


だが、この草原に来てからというもの、常識そのものが少しずつ意味を失いつつある。あなたは腹を決めた。


身をかがめ、穴の中へ入る。暗い。しかし完全な闇ではない。どこかから光が差し込んでいるらしく、根の絡み合った壁がぼんやり見えた。


土の匂いがする。湿った空気が肌にまとわりつく。しばらく進むと通路は広がった。そこであなたは思わず足を止める。


空洞だった。木の内部である。巨大な枯れ木の幹は、中が空になっていたのだ。天井は高い。


見上げると、はるか上の裂け目から細い光が差し込んでいる。そして空洞の中央には、小さな石の台座が置かれていた。


誰かが運び込んだとしか思えない。その上には黒い木の実が一つだけ載っている。見たことのない実だった。


艶があり、まるで磨かれた石のようにも見える。一方、台座の奥にはさらに細い通路が続いていた。


木の根の間を縫うように伸びている。どこへ繋がっているのかわからない。もしかすると枯れ木の外へ出られるのかもしれない。


黒い木の実を取るなら【35】へ。

奥の通路へ進むなら【36】へ。

穴から這い出て枯れ木へ戻るなら【4】へ。



【19】


あなたは白い岩の北側にある窪みへ近づいた。地面には細かな砂利が混じっている。その中央から、確かに何か金属質のものが顔を出していた。


最初はただの鉄くずかと思った。しかし、しゃがみ込んで土を払うと、その考えは変わる。人工物だった。


かなり古い。長い年月を土の中で過ごしたらしく、表面は錆びている。あなたは周囲の石をどけ、両手で引っ張った。


なかなか抜けない。もう一度力を込める。すると、ぐらりと動いた。


土が崩れる。そして金属は地面から姿を現した。それは鍵だった。あなたの前腕ほどもある巨大な鍵である。


どこの扉に使うのかわからない。少なくとも普通の家の鍵ではない。柄の部分には装飾が施されていた。


円の中に一本の縦線。あなたは思わず眉をひそめる。その記号を見たのは初めてではない。


紙切れの地図。石碑。そして他の場所でも似たものを見た気がする。偶然ではないだろう。


あなたは鍵を持ち上げた。重い。だが持ち運べないほどではない。この鍵がどこかで役立つ可能性は高そうだ。


コードワード【白鍵】を記録せよ。その時だった。足元で小さな音がした。あなたが掘り返した穴の底に、さらに細い隙間が見えている。


地下へ続く穴だろうか。いや、それほど大きくはない。だが中に何かが隠されている可能性はある。


穴をさらに掘るなら【37】へ。

白い岩へ戻るなら【8】へ。

倒れた塔へ向かうなら【12】へ。



【20】


あなたは崖の根元に開いた裂け目の前へ立った。近くで見ると、その隙間は思ったよりも深い。人ひとりがようやく通れるほどの幅しかないが、奥へ向かって続いている。


冷たい風が吹いてくる。草原の暖かな風とはまるで違う。地下の空気のようでもあり、冬の朝の空気のようでもあった。


あなたはしばらく迷った。だが好奇心が勝った。身体を横にしながら裂け目へ入り込む。


薄暗い。岩肌が両肩に触れる。数歩進むだけで、外の光はほとんど見えなくなった。


通路は曲がっているらしい。奥の様子はわからない。あなたは慎重に進んだ。足元には細かな砂が積もっている。


誰かが通った跡は見当たらない。少なくとも最近は。

さらに進む。すると突然、空間が広がった。


小部屋だった。天然の洞窟らしい。天井からは細い根が垂れ下がり、岩の隙間から差し込む光が床を照らしている。


その中央に石箱が置かれていた。箱は閉じられている。蓋には見覚えのある記号が刻まれていた。


円。その中央を貫く一本の縦線。あなたは思わず息を呑む。またこの印である。石碑にもあった。


紙切れにもあった。巨大な鍵にも刻まれていた。何かの組織なのか。あるいは、この世界そのものに関わる印なのか。


箱の傍らには、さらに下へ続く穴が開いていた。人ひとりが降りられる程度の大きさだ。暗闇の中へ続いている。どこへ繋がっているのかわからない。


石箱を調べるなら【38】へ。

下へ続く穴へ降りるなら【39】へ。

崖下へ戻るなら【9】へ。



【21】


あなたは、赤い皮袋を調べたが、何も入っていなかった。カラスがそんなあなたを馬鹿にするように鳴いている。が、人の声のように聞こえた。


「赤い皮袋は何もない。青は危険。黄色は注意」


意味がわからないが、覚えておこう。【10】へ



【22】


 あなたはゆっくりと門をくぐった。石柱の下を通り抜けた瞬間、不思議な感覚が全身を包む。北風だった。草原で感じていた風とは違う。冷たく、鋭く、どこか生き物の息遣いにも似た風が顔を撫でてゆく。


思わず振り返る。すると、そこにあったはずの門が揺らいで見えた。陽炎のように歪み、遠ざかっているようにも見える。


あなたは一歩前へ進んだ。その時だった。影が落ちる。突然、周囲が暗くなった。


雲ではない。あなたは反射的に空を見上げる。そして凍りついた。


巨大な翼だった。それは空を覆うほどの大きさを持ち、青黒い鱗を陽光に輝かせながら旋回していた。


飛竜である。物語の中でしか見たことのない怪物。だが、それは確かに存在していた。飛竜は一声吠えた。

耳をつんざく咆哮が大地を震わせる。あなたは逃げようとした。


だが遅かった。飛竜は翼をたたみ、稲妻のような速度で急降下してくる。巨大な顎が開く。牙が並んでいる。


あなたは走る。必死に走る。だが人間の足で飛竜から逃げられるはずがない。次の瞬間、衝撃があなたを襲った。


空が回転する。草原が遠ざかる。何かが折れる音が聞こえた。痛みを感じる暇もなかった。視界が赤く染まる。最後に見えたのは、再び大空へ舞い上がる飛竜の姿だった。そして、すべてが闇に沈んだ。




あなたの冒険はここで終わる。

ゲームオーバー。



【23】


あなたは草むらの向こうに見えた黒い影を目指して歩き始めた。影は確かに見えている。


大きい。人よりもずっと大きい。遠くに立つ小屋のようにも見えるし、何かの生き物がうずくまっているようにも見える。


あなたは慎重に進んだ。しかし奇妙なことに、どれだけ歩いても距離が縮まらない。影は同じ場所にあるようでいて、少しずつ遠ざかっているようにも見える。


風が吹く。草が揺れる。影も揺れる。いや、動いたのだろうか。あなたは足を速めた。


その時だった。黒い影がふっと消えた。まるで最初から存在しなかったかのように。


あなたは立ち止まる。周囲を見回す。何もない。草原が広がっているだけだった。だが、足元に異変があった。地面が大きく窪んでいる。


一つや二つではない。巨大な足跡だった。あなたは息を呑む。長さだけでも一メートル近い。人間の足に似ている。しかし人間ではあり得ない大きさだ。


しかも、その足跡は一列に並び、草原の彼方へ続いている。あなたはその跡をしばらく見つめた。何者が残したのだろう。


巨人か。怪物か。あるいは、伝説で聞いたことのあるビッグフットのような存在なのかもしれない。もっとも、この世界にビッグフットという伝説が存在するかどうかもわからないのだが。


足跡の先を追いたい気持ちもあった。しかし、その先には何も見えない。そして妙な胸騒ぎがした。


今は追うべきではない。そんな気がする。あなたは踵を返し、元の場所へ戻ることにした。【10】へ



【24】


 どうも、【薄暗い森】への入り口になっているらしい。もし、西にゆくなら【51】へ。東に戻るなら【10】へ



【25】


 井戸の底には、何か蠢くものが感じられる。それでも降りてゆくなら【42】へ。戻るなら【11】へ。



【26】


あなたは崩れた入口の隙間をくぐり、倒れた塔の内部へ足を踏み入れた。外から見た時以上に、内部の損傷は激しかった。


石の床には瓦礫が散乱し、天井の一部は崩れ落ちている。かつては何階建てだったのか想像もつかない。しかし不思議なことに、この場所にはまだ人の手による秩序の名残が残っていた。


壁際には朽ちた棚が並び、床には砕けた陶器の破片が転がっている。あなたは慎重に奥へ進んだ。すると塔の最奥部に、それを見つける。


白い扉だった。周囲の灰色の石壁とは明らかに異質である。木製にも見えない。石製にも見えない。


滑らかな白い表面には傷一つなく、まるで昨日作られたかのようだった。


扉には取っ手がない。その代わり、中央に鍵穴が一つだけ開いている。あなたはその形に見覚えがあった。細長い穴。円を組み合わせた独特の構造。


白い岩の近くで見つけた巨大な鍵とよく似ている。試しに扉を押してみる。びくともしない。引いてみる。やはり動かない。どうやら鍵が必要らしい。


もし【白鍵】を持っているなら【47】へ。


記録していないなら、あなたにはこの扉を開くことができない。

【12】へ戻れ。



【27】


 あなたは黒い石柱へ近づいた。崖沿いにぽつんと立つその石柱は、近くで見るとさらに奇妙だった。


表面は異様なほど滑らかで、長い年月を経ているはずなのに風化の跡がほとんどない。


刻まれた文字を指でなぞってみる。冷たい。まるで金属に触れているような感触だった。


あなたは石柱の周囲をゆっくりと歩く。裏側にも文字がある。こちらはさらに細かい。


読めない。しかし眺めていると、文字が少しずつ動いているような錯覚に襲われる。


目をこする。もう一度見る。やはり動いてはいない。

気のせいだったのだろう。あなたは石柱を軽く叩いてみた。


コン。


乾いた音が響く。その時だった。どこかで小さな音がした。


パキッ。


何かが割れるような音だった。あなたは顔を上げる。石柱が揺れていた。ほんのわずかに。風のせいだろうか。


いや、違う。石柱はもう一度揺れた。そして、ゆっくりと傾き始める。あなたは慌てて後ずさった。


しかし遅かった。長い年月によって地盤が緩んでいたのかもしれない。あるいは、あなたが触れたことが最後のきっかけになったのかもしれない。


巨大な石柱は重々しい音を立てながら倒れてくる。逃げ場はない。あなたは身を翻した。だが足がもつれる。次の瞬間、視界いっぱいに黒い石が迫ってきた。


轟音。衝撃。そして、すべてが闇に沈む。石柱の下敷きになったあなたが再び立ち上がることはなかった。



 あなたの冒険はここで終わってしまう。

 ゲームオーバー。



【28】


あなたは石柱の脇から続く坂道を登り始めた。道は細く、足場もあまり良くない。


右手には崖。左手には岩壁。


足を滑らせれば無事では済まないだろう。慎重に進む。風が強くなってきた。


草原では心地よく感じられた風も、この高さではまるで別物だった。身体を押し返すように吹きつけ、ときおり岩肌にぶつかって不気味な唸り声を上げる。


しばらく登ると、道は小さな平地へ出た。崖の上だった。そこからは草原の大部分を見渡すことができる。


遠くには白い岩。さらにその向こうには倒れた塔。

風鳴りの草原が一枚の地図のように広がっていた。


あなたは辺りを見回した。人影はない。獣の姿もない。だが、岩陰に何かが落ちている。


青い皮袋だった。手のひらに乗るほどの大きさで、口は革紐によって固く縛られている。


新しいものではない。しかし不思議なことに、ほとんど傷んでいなかった。


誰がここへ置いたのだろう。旅人だろうか。それとも、この草原に住む誰かのものだろうか。あなたは皮袋を拾い上げる。


中には何かが入っている。軽い。金属ではなさそうだ。振ると、かすかな音がした。開けて中身を確かめることもできる。だが、そのままにしておくという選択もある。


青い皮袋を開けるなら【44】へ。

崖沿いの道へ戻るなら【13】へ。



【29】


 ここは【風鳴りの草原】と、【髑髏湾】の境目にある。もし、ここから、南東への道を行くのなら、【103】へ。まだ、このエリアでやり残したことがあるのなら、北西への道をゆき、【13】へ。



【30】


 あなたは丘の中央に立つ古い杭へ近づいた。近くで見ると、その杭は想像以上に古かった。木の表面はひび割れ、ところどころ腐りかけている。長い年月、風雨にさらされてきたことは間違いない。


 しかし奇妙なことに、完全には朽ちていない。まるで何者かが意図的に残しているかのようだった。あなたはしゃがみ込み、杭の根元を調べる。


土は固く締まっている。誰かが最近掘り返した形跡はない。その時、草の中に金属の光が見えた。


拾い上げる。小さなハンマーだった。柄は短い。鍛冶屋が使うような立派なものではないが、十分に実用的に見える。


あなたは首を傾げた。なぜこんな場所にハンマーが落ちているのだろう。


丘の上には杭しかない。そして、その杭の傍らに都合よくハンマーがある。まるで誰かがそうしてほしいと願っているかのようだった。


あなたは再び杭を見る。すると不思議な衝動が湧き上がってきた。杭を打ち込みたい。もっと深く。地面の奥まで。理由はわからない。何が起きるのかもわからない。


だが、そうするべきだという確信だけが心の中に生まれてくる。馬鹿げている。そんなことをして何になるというのだ。それでも、その考えは頭から離れない。

あなたはハンマーを握りしめた。



杭を地面へ打ち込むなら【45】へ。

丘を下りるなら【14】へ



【31】


あなたは石碑の表側にある窪みへ近づいた。地面は柔らかく、誰かが昔掘り返したようにも見えた。


その中央に、金属の輪が埋まっている。あなたはしゃがみ込み、両手で掴んだ。


冷たい。錆びてはいるが、かなり頑丈そうだ。少し力を入れて引っ張る。


びくともしない。さらに力を込める。土が崩れる。輪は少しずつ姿を現した。


思ったより大きい。馬具の一部だろうか。あるいは扉を開閉するための取っ手かもしれない。


あなたは周囲の土を払いながら引き続けた。そして、ようやく全体が露わになる。


その瞬間、あなたは気づいた。輪は単独の物体ではなかった。何かに取り付けられている。石だった。巨大な石の塊。


あなたは慌てて土を払いのける。牛の鼻。いや、違う。牛の頭を持つ人間の顔。角。隆々とした首。それは石像だった。


ミノタウルスである。あなたは思わず後ずさった。輪は鼻輪だったのだ。その時だった。


地面が震える。ごごごごご。低い音が響く。石像の目が開いた。赤く光る。


あなたは息を呑む。石の身体にひびが走る。関節が動く。何百年も眠っていた怪物が、ゆっくりと立ち上がった。


逃げなければ。そう思った時にはもう遅かった。ミノタウルスは怒りの咆哮を上げる。そして巨大な身体を前へ倒し、猛然と突進してきた。


大地が揺れる。あなたは走る。だが草原では怪物の脚力に敵わない。次の瞬間、巨大な角があなたを弾き飛ばした。


さらに踏みつけ。衝撃。骨の砕ける音。視界が回転する。そして、すべては暗闇に沈んだ。



 あなたの冒険はここで終わる。

 ゲームオーバー。



【32】


草藪をかき分けて、 石碑の裏に回ると、こんな文字が書いてあった。


『封印されし鼻輪を引きし者には死を』


意味がわからない。【15】へ戻ろう。



【33】



あなたは石柱の根元に置かれていた本を手に取った。革表紙は古びている。しかし不思議なことに、ほとんど傷んでいない。


まるで誰かが最近まで読んでいたかのようだった。表紙には金色の文字で題名が記されている。


『旅人の記録 第三巻』


あなたは本を開いた。中には旅の記録がびっしりと書き込まれていた。日付も著者名もない。ただ、どこかの世界を旅した者の体験談が延々と続いている。


あなたは興味を引かれ、いくつかのページをめくった。砂漠の話。地下洞窟の話。巨大な塔の話。


知らない地名ばかりだった。だが後半のあるページで手が止まる。そこだけ文章に力が込められていた。



もしこの本を手にした旅人がいるなら、忠告しておく。北へ向かう道は多い。だが、急いではならない。


まずは薄暗い森へ行け。森には危険もあるが、そこで得られる知識は後々必ず役に立つ。


そして森を抜けたなら、髑髏湾へ向かえ。多くの旅人は湾を恐れる。だが恐れて避ける者ほど遠回りをすることになる。


湾で得たものは、やがて門を開く鍵となるだろう。私はその助言を無視した。その結果、二度も同じ場所を彷徨うことになった。


もし時間を戻せるなら、私は最初に森へ行き、その後で髑髏湾へ向かう。



そこで文章は終わっていた。


あなたは本を閉じる。


薄暗い森。

髑髏湾。


どちらも聞いたことのない場所だ。だが、この世界のどこかに存在するのだろう。少なくとも、この本を書いた旅人はそう信じていたようだ。あなたは本を元の場所へ戻した。今は先へ進むべきだろう。


【15】へ戻れ。



【34】


 素晴らしい判断だが、結果的に、何も意味がなかった。【7】へ



【35】


 あなたは石の台座の上に置かれた黒い実を手に取った。近くで見ると奇妙な実だった。


果物というよりも、黒曜石を丸く削ったように見える。表面には艶があり、光を受けるたびに鈍く輝いている。


あなたは指先でつついてみた。柔らかい。どうやら本物の果実らしい。


匂いを嗅ぐ。甘いような苦いような、不思議な香りがした。毒かもしれない。しかし、宝かもしれない。


この世界に来てからというもの、常識はほとんど役に立たない。あなたはしばらく考えた。そして、ふと実を口元へ運ぶ。食べるか。やめるか。


その時だった。黒い実を握っている手に妙な感覚が走る。指先が柔らかくなった気がする。


気のせいだろうか。あなたは手を見つめる。確かに変だ。指が少しだけ伸びているように見える。慌てて握り直す。今度は元に戻った。


しかし今度は腕の感覚がおかしい。力が抜ける。いや、違う。身体そのものがゆっくりと緩んでいるようだった。まるで骨や筋肉が溶け、ゴムに置き換わっているかのようである。


あなたは思わず笑った。馬鹿な話だ。そんなことがあるはずがない。だが、この世界ならあり得るかもしれない。ひょっとすると、これは伝説の――


ゴムゴムの実なのではないだろうか。


もちろん、そんな名前を誰が付けたのかはわからない。しかし今のあなたには、それ以外の呼び名が思いつかなかった。


実を食べるなら【46】へ。

やめて石の台座の上へ戻すなら【18】へ。



【36】


洞穴は北へと続いている。もし、北にゆくなら【16】へ。南に戻るなら【4】へ。



【37】


あなたは穴の底をさらに掘り進めることにした。白鍵を取り出した後も、その下にはまだ何かが埋まっているような気がしたのである。土を掻き出し、小石をどけ、さらに深く掘る。やがて指先が硬いものに触れた。その瞬間だった。ぷしゅう、と奇妙な音が聞こえる。最初は風が漏れたのかと思った。しかし次の瞬間、穴の奥から黄緑色の気体が勢いよく噴き出した。あなたは慌てて後ずさる。だが遅かった。毒ガスである。喉が焼けるように痛む。息ができない。目の前が霞む。あなたは地面に倒れ込んだ。手足が痺れ、身体が動かなくなる。草原の風が吹いている。しかしその風が毒をさらに運んでくる。やがて視界は暗くなり、意識は静かに消えていった。


あなたの冒険はここで終わる。ゲームオーバー。



【38】


あなたは洞窟の中央に置かれた石箱を慎重に調べた。近くで見ると、それは箱ではなかった。石棺である。蓋には例の円と縦線の記号が刻まれている。あなたは恐る恐る蓋をずらした。重い音を立てて隙間が開く。中を覗き込んだあなたは息を呑んだ。そこには青白い顔の男が眠っていたのである。黒い衣装をまとい、胸の上で手を組んでいる。その顔には人間離れした鋭い牙が覗いていた。ドラキュラだ。あなたは本能的にそう悟った。その瞬間、男のまぶたがぴくりと動く。目覚めようとしている。あなたは慌てて石棺の蓋を押し戻した。ごとん、と重い音が響く。中から何かを叩く音が聞こえた気もしたが、あなたは聞かなかったことにした。こんな場所からは一刻も早く離れるべきだ。あなたは裂け目の出口へ向かって走り出した。【9】へ進め。



【39】


あなたがさらに進もうとすると、穴は土砂崩れで埋もれた。【9】へ。



【40】


 あなたは台座の上に置かれた黄色い皮袋を手に取った。軽い。中に何か入っているようだが、重さはほとんど感じられない。革紐をほどき、慎重に袋の口を開く。すると次の瞬間だった。けたたましい警報音が宝物庫中に響き渡った。ビーッ! ビーッ! ビーッ! 耳をつんざくようなサイレンである。あなたは思わず袋を取り落とした。音は止まらない。塔の石壁に反響し、何倍もの大きさになって鳴り響く。罠だ。あなたは直感した。怪物避けではない。怪物を呼び寄せるための罠である。誰かが宝物庫を荒らした時、守護者へ知らせるための仕掛けなのだろう。あなたは慌てて周囲を見回した。今にも巨大な怪物が扉を破って飛び込んでくる気がした。しかし一分待っても何も起きない。二分待っても何も起きない。やがてサイレンはぷつりと止まった。静寂が戻る。あなたはしばらく身構えていたが、結局、怪物は現れなかった。どうやら壊れていたのか、あるいは呼び出す相手がとっくの昔に滅びてしまったのかもしれない。いずれにせよ、これ以上ここに留まる理由はなさそうだ。あなたは黄色い皮袋を元の場所へ戻し、宝物庫を後にした。【12】へ戻れ。


【41】


あなたは台座の上に置かれた巨大な靴を持ち上げてみた。見た目ほど重くはない。しかし近くで観察すると、その大きさは異常だった。長さだけでも一メートル近くある。人間が履くことなど到底できない。巨人用かとも思ったが、形は妙に人間の足に近い。あなたはふと草原で見た巨大な足跡を思い出した。あの黒い影。あの一メートル近い足跡。ひょっとすると、これはビッグフット専用の靴なのではないだろうか。もっとも、なぜそんなものが塔の宝物庫に保管されているのかはまったくわからない。持ち帰るには大きすぎるし、今のところ使い道もなさそうだ。あなたは巨大な靴を元の場所へ戻した。そして何事もなかったかのように宝物庫を後にすることにした。【12】へ戻れ。


【42】


あなたは古井戸の内壁に取り付けられた鉄の足掛けを伝い、慎重に下へ降りていった。底は思ったより深い。やがて足が水面に触れる。冷たい。暗闇の中で手探りをしていると、不意に水の中で何かが動いた。次の瞬間、ぬるりとした触手があなたの足首に巻き付く。巨大なタコだった。井戸の底に潜んでいたのである。あなたは悲鳴を上げて逃れようとするが、二本、三本と触手が伸びてきて身体を締め上げる。鉄の足掛けにしがみつこうとしても無駄だった。触手はあなたを水中へ引きずり込む。冷たい水が口と鼻に流れ込む。暗闇の中で最後に見えたのは、赤く光る巨大な目だった。やがてあなたの意識は深い井戸の底へ沈んでいった。


あなたの冒険はここで終わる。ゲームオーバー。


【43】


 あなたは台座の上に置かれた水晶玉へ手を伸ばした。玉は冷たかった。しかし、その冷たさは氷のようなものではない。まるで深い夜空そのものに触れているかのような感触だった。


あなたが水晶玉を持ち上げた瞬間、内部を漂っていた白い霧が激しく渦を巻き始める。光が生まれる。そして部屋が消えた。塔も。壁も。床も。すべてが闇に呑まれる。


あなたは星々の浮かぶ巨大な虚空の中へ立っていた。その中心に、一人の男がいる。長い銀髪。黒い法衣。胸には黄金の紋章。その姿は王にも見えたが、王よりもなお威厳に満ちていた。男は巨大な石の玉座に腰掛けている。


その背後では無数の星々が回転していた。やがて男は目を開く。その瞳は燃える青い炎のようだった。


「我が名はガジタリス」


声が響く。大地を揺るがす雷鳴のように。


「怒れる魔術師ガジタリス」


男はゆっくりと立ち上がった。星々が震える。銀河が軋む。あなたは言葉を失う。だがガジタリスは構わず続けた。


「我は忙しい。そして、この地が魔王ゾグマによって汚されていることも充分に知っておる。勿論、我が盟友、ロード・クリキントンの心の中もな……。

 ゆえに勇者を探している。とても強く、洞察力に優れ、慎重な勇者だ。たんなる脳筋では、もはや勇者は務まらない。シュワちゃんなんて、もっての外だぞ!

 勇者とは力ではない。武勇でもないのだ。知恵である。知恵の回る人間が私は欲しいのだ!少なくともロード・クリキントンの二倍くらいはな……」


彼は長い杖を掲げた。すると虚空の中に巨大な足跡が浮かび上がる。あの草原で見たものとよく似ていた。


「答えよ」


ガジタリスが言う。


「大きな足のもの」

「森に消えしか」

「湾に消えしか」


虚空は沈黙に包まれる。

星々だけが静かに輝いている。


あなたは答えなければならない。


森に消えたと思うなら【48】へ。

湾に消えたと思うなら【49】へ。


【44】


あなたは青い皮袋の革紐をほどいた。長い間放置されていたはずなのに、不思議と袋は傷んでいない。中には何が入っているのだろう。宝石か、地図か、それとも旅人の遺品か。あなたは期待しながら袋の口を開いた。その瞬間、中から黒い影が飛び出した。毒蠍である。しかも尋常ではない大きさだった。蠍は電光石火の速さであなたの手に這い上がり、鋭い尾を突き立てる。激痛が走る。あなたは慌てて振り払おうとしたが遅かった。毒は瞬く間に全身へ広がる。足から力が抜け、視界が揺れる。崖の上の景色がぼやけていく。呼吸も苦しい。やがてあなたはその場に崩れ落ちた。青い皮袋は再び静かに風に揺れている。次の犠牲者を待つかのように。


あなたの冒険はここで終わる。ゲームオーバー。



【45】


あなたは奇妙な衝動に従い、ハンマーを振り上げた。そして丘の中央に立つ杭を力いっぱい打ち込む。ごん、と鈍い音が響く。もう一度打つ。さらに深く。すると足元の地面が震え始めた。最初は気のせいかと思ったが違う。杭の周囲の土がぶくぶくと泡立ち始めたのである。次の瞬間、地面の裂け目から黒緑色の液体が噴き出した。強烈な悪臭が辺りに広がる。そこはかつて毒沼だった場所らしい。杭は何かの栓だったのだ。あなたは逃げようとする。しかし噴き出した毒液と毒気はあまりにも速かった。喉が焼け、肺が痛む。目の前が暗くなる。膝をついたあなたは、なおも吹き上がる毒の泉を見上げながら倒れ込んだ。やがて意識は闇に沈む。


あなたの冒険はここで終わる。ゲームオーバー。



【46】


あなたは決心し、黒い実を口の中へ放り込んだ。味は最悪だった。苦い。酸っぱい。しかも妙に油っぽい。思わず吐き出しそうになる。しかし飲み込んだ瞬間、身体の奥で何かが弾けた。腕が伸びる。足が曲がる。身体全体がぐにゃりと柔らかくなった。やはりゴムゴムの実だったのだろうか。そう思ったのも束の間、変化は止まらなかった。腕は八本に増え、指は吸盤へ変わる。顔まで変形し、あなたは巨大なタコになってしまったのである。あなたは慌てて自分の姿を見回した。あまりにも恥ずかしい。こんな姿を誰かに見られたら生きていけない。幸い近くには古井戸がある。あなたは八本の足をくねらせながら井戸へ向かい、その中へ逃げ込んだ。こうしてあなたは井戸の主となったのである。あなたの冒険はここで終わる。【42】の巨大なタコとは、実はあなた自身だったのかもしれない。


ゲームオーバー。



【47】


 白い鍵を鍵穴へ差し込む。かちり。小気味よい音が響いた。それと同時に、白い扉がゆっくりと開き始める。長い年月閉ざされていたはずなのに、不思議なほど滑らかな動きだった。


 あなたは慎重に中へ入る。そこは小さな部屋だった。塔の外観から想像していたよりもずっと狭い。しかし部屋の中央には石の台座が置かれ、その上に三つの品が並んでいる。


宝物庫らしい。壁には松明も窓もないのに、部屋全体がぼんやりと明るかった。


あなたは台座へ近づく。まず目に入ったのは黄色い皮袋である。手のひらほどの大きさで、口は革紐で固く縛られている。中には何かが入っているようだが、重さまではわからない。


その隣には巨大な靴が置かれている。片方だけだ。人間が履くにはあまりにも大きい。巨人用なのか、それとも別の生き物のものなのか見当もつかない。


そして最後の品。それは透き通った水晶玉だった。拳ほどの大きさで、内部には白い霧のようなものがゆっくりと渦を巻いている。


あなたは三つの品を見比べた。どれも普通の品物には見えない。ここまで来たのだから、一つくらい持ち帰りたい気もする。


だが、この世界の宝物は必ずしも幸運をもたらすとは限らない。慎重に選ぶべきだろう。


黄色い皮袋を手に取るなら【40】へ。

巨大な靴を手に取るなら【41】へ。

水晶玉を手に取るなら【43】へ。


戻るなら【12】へ。



【48】


「正解」


怒れる魔術師ガジタリスは静かにそう告げた。その声は先ほどまでの雷鳴のような響きではなかった。むしろ深い湖の底から聞こえてくるような、穏やかな声だった。


虚空に浮かんでいた巨大な足跡がゆっくりと消えてゆく。星々の回転も静まった。ガジタリスは長い杖を床――いや、星空そのものへ突き立てる。


すると無数の光が集まり始めた。銀色。青色。金色。それらは渦を巻きながら一つの形を作り出す。やがてあなたの目の前に、小さな紋章が現れた。


それは円の中を一本の縦線が貫く意匠だった。どこかで見たことがある。


石碑。

石棺。

白い鍵。

旅人の記録。


この世界のあちこちに現れていた記号と同じである。しかし今、その紋章は黄金色に輝いていた。


「受け取るがよい」


ガジタリスが言う。


「これは勇者の紋章」


「力を与えるものではない」


「道を示すものだ」


あなたは紋章を受け取った。


不思議と重さは感じない。しかし胸の奥に温かな感覚が広がる。まるで遠い昔から持っていたものが、自分の元へ帰ってきたような気さえした。


「覚えておけ」


ガジタリスは最後にそう言った。


「森は答えを隠す」


「湾は答えを運ぶ」


「そして風は、すべてを見ている」


その言葉と共に虚空は崩れ始めた。


星々が流れる。


光が消える。


ガジタリスの姿も遠ざかっていく。


あなたは再び現実の世界へ引き戻されるのだった。


アイテムに、【勇者の紋章】を加えよ。【50】へ。


【49】


「不正解」


怒れる魔術師ガジタリスの声が虚空に響いた。星々の輝きがわずかに暗くなる。あなたは肩を落とした。しかしガジタリスは怒っている様子ではなかった。むしろ少しだけ満足そうに見える。「だが、ここまで辿り着いたことは賞賛に値する」そう言うと、彼は長い袖の中から黒い実を取り出した。艶のある奇妙な果実である。「褒美だ。受け取るがよい」あなたは礼を言い、その実を受け取った。そして何も考えず口へ放り込む。途端に身体の奥で奇妙な変化が始まった。腕が伸び、足がうねり、身体がぐにゃりと柔らかくなる。ガジタリスは何も言わず、ただ遠くから見守っていた。どうやらあなたは、食べてはいけないものを食べてしまったらしい。【46】へ進め。



【50】


おめでとう。あなたはついに試練を乗り越えた。風鳴りの草原に足を踏み入れてからというもの、あなたは数多くの選択を行ってきた。石の道を歩き、草むらをかき分け、崩れた塔を探索し、白い岩の傍らで巨大な鍵を掘り出し、古井戸の闇を覗き込み、崖の上で風に吹かれ、奇妙な記号の意味を追い続けた。その旅は決して楽なものではなかった。巨大な飛竜に食われてしまったかもしれない。毒蠍に刺されて倒れたかもしれない。毒ガスを吸い込み、石柱の下敷きになり、あるいは巨大なミノタウルスに轢き殺されたかもしれない。巨大なタコへ変身してしまった冒険者もいただろう。しかし、それらの失敗もまた旅の一部である。勇者とは一度も間違えなかった者のことではない。何度倒れても再び立ち上がり、正しい道を探し続ける者のことなのだ。あなたはガジタリスの問いに答えた。大きな足のものは森へ消えた。その答えは正しかった。なぜ正しかったのか。今はまだわからないかもしれない。しかし、この世界には意味のないことなど一つもない。草原で見つけた巨大な足跡も、旅人の記録も、円と縦線の記号も、すべてはどこかで繋がっている。そして今、その一端が明らかになったのである。怒れる魔術師ガジタリスはあなたを勇者として認めた。これは単なる称号ではない。あなたは世界の謎へ近づく資格を得たのだ。勇者の紋章は剣ではない。鎧でもない。敵を打ち倒す力そのものでもない。しかし、それは道を示す。迷宮の中で。森の中で。砂漠の中で。地下深くの闇の中で。あるいは海の彼方で。あなたが進むべき方向を示してくれるだろう。だが勘違いしてはならない。この冒険はまだ始まったばかりである。風鳴りの草原は広大な世界のほんの入口に過ぎない。旅人の記録に書かれていた薄暗い森も、髑髏湾も、まだあなたを待っている。北東の門の向こうにはさらに危険な土地が広がっているだろう。古井戸の底には未だ解き明かされていない秘密が眠っているかもしれない。倒れた塔の奥にも、白い鍵で開く扉以外の謎が残されているかもしれない。そして、世界中に散らばる円と縦線の記号。その意味を知る日はまだ遠い。だからこそ油断してはならない。勇者となった者ほど慢心によって滅びる。飛竜の牙は勇者を区別しない。毒蠍の毒も勇者だけを避けたりはしない。巨大な怪物も、深淵の罠も、古代の呪いも、あなたが勇者であることなど気にしないのである。真の試練はこれから始まる。胸を張れ。しかし気を抜くな。誇れ。しかし慢心するな。進め。しかし周囲をよく見ろ。風は常に吹いている。そして風は旅人の行く末を見守っている。あなたは風鳴りの草原を踏破した。第一の島宇宙は攻略されたのである。しかし物語はまだ終わらない。むしろここからが本番だ。新たな土地があなたを待っている。新たな怪物があなたを待っている。新たな謎があなたを待っている。そしていつの日か、あなたは世界の中心に辿り着くかもしれない。その時まで旅を続けよ。勇者よ。風を信じよ。だが油断するな。このエリアはクリアした! しかし冒険はまだ終わらない。とりあえず【12】へ戻れ。


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