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悪役令嬢が死んだはずなのに、今日も隣の席に座っている  作者: 延々Redo


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8/10

第7話:サロンの夜

どうかブクマと☆をお願いします…!!!

 その夜、私は一人で部屋へ戻ることができなかった。

 回廊で聞こえた靴音が、耳から離れなかったからだ。


 かつ、かつ。

 石畳を叩く、ゆっくりとした足音。

 あれは確かに、こちらへ近づいてきていた。

 なのに、誰もいなかった。

 アルフレッド王子も青ざめた顔をしていた。


 結局、その日はヴィオレット様達が私をサロンへ連れて行ってくれた。


「今夜はご一緒しましょう」


 ヴィオレット様は穏やかにそう言った。


「一人でいると、余計なことを考えてしまいますもの」


 その声音は本当に優しかった。

 優しくて、安心するはずだった。


 なのに最近では、その優しさ自体が少し怖い。



 サロンは女子寮の奥にある、小さな談話室だった。

 暖炉へ火が入っていて、室内は橙色の光で満たされている。

 窓の外は真っ暗だった。雨が降っているらしく、時折、窓ガラスを叩く音が聞こえる。


 私はソファへ腰を下ろした。

 向かいにはヴィオレット様。

 その隣にクロード様。

 少し離れた位置にマリエル様。


 そして。

 暖炉の正面に、一つだけ空席があった。


 私は無意識にその椅子を見つめてしまう。

 誰も座っていない。

 でも。

 なぜかそこへ、誰かが座っている気がした。


「アメリ様?」


 ヴィオレット様が不思議そうに微笑む。


「どうかなさいました?」


「……いえ」


 私は慌てて視線を逸らした。


 暖炉がぱちりと音を立て、赤い火が揺れた。

 その瞬間。

 ふわり、と甘い花の香りが漂った。


 私は凍りつく。

 知っている香りだった。

 夜会の日、フェリシア様が去った時の香水。

 あの香りだ。


「……っ」


 息が勝手に浅くなり、視線が勝手に空席へ向いてしまう。

 誰もいない。

 でも、いる。

 そんな感覚だけがあった。


「お顔の色が悪いですわ」


 マリエル様が心配そうに身を乗り出した。


「本当に大丈夫ですの?」

「だ、大丈夫……です」


 声が震える。

 ヴィオレット様が静かに紅茶を注ぐと、白い湯気が立ち上る。


「少し落ち着かれた方がよろしいですわ」


 差し出されたカップを受け取る。

 でも、指先が冷たすぎて上手く持てなかった。

 その時だった。


 さらり。

 何かが肩へ触れた。

 私は反射的に振り返る。

 長い金髪が見えた。


 すぐ後ろだった。

 揺れる金色、青い瞳。

 顔が、目の前にある。


「――っ!」


 私は悲鳴を上げて立ち上がった。

 カップが床へ落ちる。激しい音と共に、紅茶が飛び散った。


「アメリ様!?」


 ヴィオレット様達が驚いたように立ち上がる。

 でも私はもう、彼女達の声が聞こえていなかった。


 いた。

 今、確かにいた。


「いや……いやぁ…!」


 呼吸が乱れ、足が震える。

 這いずるようにして、私は壁際まで後退した。


 暖炉の火が大きく揺れている。

 窓ガラスが、かたかたと音を立てた。


 そして。

 空席の椅子が、ゆっくりと沈んだ。

 誰かが座ったみたいに。


 私は息を呑む。

 ヴィオレット様達も、動かなかった。

 全員、その椅子を見ている。


「……フェリシア様?」


 マリエル様が、小さく呟いた。

 その瞬間。

 突然、ばちん、と暖炉の火が爆ぜた。


 私は悲鳴を上げる。

 窓ガラスへ視線が映った。


 そこには。

 私達四人と。

 もう一人。

 長い金髪の令嬢が立っていた。


 私は喉を引きつらせる。


「いや……いや、いや…!」


 涙が滲む。

 ヴィオレット様が、ゆっくりと私へ近づいた。


「アメリ様」


 その声は静かだった。

 優しく、どこまでも穏やかだった。


「落ち着いてくださいませ」

「見えたの…! 今、いたでしょう!?」


 私は半狂乱で叫ぶ。

 でもヴィオレット様は首を横へ振った。


「フェリシア様は、復讐なんてなさらない方でした」


 暖炉が、ぱちりと音を立てる。


「……え?」


 ヴィオレット様は、どこか遠くを見るような目をしていた。


「フェリシア様は最後まで、殿下のお幸せを願っておられました」


 クロード様も静かに頷く。


「ですから、アメリ様を傷つけるようなことは、決してなさいません」


 その言葉が、逆に怖かった。


 じゃあ。

 じゃあ今ここにいるのは、誰なのだろう。


 私は震えながら窓ガラスを見る。

 もう、そこには誰も映っていなかった。


 けれど。

 空席だけが、まだゆっくり揺れていた。


買ったハーブティー、アレルギー反応が出ちゃって飲めないんですよね

そこそこ値段したのに…おのれ草め…

どうかブクマと☆をお願いします…!!!

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