第6話:王子の処分
どうかブクマと☆をお願いします…!!!
最近、学園の空気はさらに重くなっていた。
以前のような露骨な噂話は減った。
しかし、その代わり、生徒達は妙に静かになった。
廊下ですれ違っても、誰も大きな声を出さない。食堂でも笑い声は小さく、教師達でさえどこか張り詰めている。
そして何より。
誰も、アルフレッド王子へ近づかなくなっていた。
以前なら、王子の周囲には常に人がいた。
貴族の子息達や取り巻き、出世したい下級貴族の生徒達。
けれど今は違う。
廊下で見かけても、皆どこか距離を置いていた。
誰も王子と視線を合わせず、声もかけない。
まるで触れてはいけないものを見るみたいに。
私はその変化に気づいていた。
アルフレッド王子自身も、きっと気づいていたと思う。
ある日の昼休みだった。
私は中庭へ続く回廊を歩いていて、偶然、王子の姿を見つけた。
一人で窓際へ立ち、外を見ている。
以前より痩せた気がした。
私が憧れた金色の髪も、どこか疲れて見える。
「……殿下」
声をかけると、王子はゆっくり振り返った。
「ああ、アメリか」
王子は微笑もうとしている。
でも上手く笑えていなかった。
私は少し迷ってから、王子の隣へ立つ。
窓の外では、灰色の空が広がっていた。
「最近、お疲れみたいです」
「そう見えるか?」
「……はい」
王子は小さく笑った。
「まあ、色々あってな」
その言い方が、妙に他人事みたいで胸がざわつく。
でも次の瞬間、王子は静かな声で言った。
「正式に処分が決まった」
私は息を止めた。
「処分……」
「ああ」
王子は窓の外を見たまま続ける。
「しばらく王都を離れることになる。学園も、退学扱いになるそうだ」
その言葉に胸の奥が冷える。
そこまで重い処分になるとは思っていなかった。
「理由は表向きには、婚約破棄騒動による王家の威信低下だ」
王子は淡々と言う。
「だが実際は違う。ヴァンホルト公爵家が激怒した」
フェリシア様の実家。
あの夜会でも、参加していた彼女の父親は最後まで何も言わなかった。
けれど。
娘が死んだ今となっては、当然だったのかもしれない。
「学園側も責任を問われているらしい」
王子は自嘲するように笑った。
「未来の王妃候補が孤立した末に死亡したんだからな。まあ、当然だ」
私は何も言えなかった。
廊下へ、冷たい風が吹き込む。
しばらく沈黙が続いた。
「……フェリシアは」
不意に、王子が呟いた。
「最後、何を思っていたんだろうな」
私は顔を上げる。
王子は窓の外を見たままだった。
「怒っていたんだろうか」
掠れた声だった。
「それとも、呆れていたのか」
私は言葉に詰まる。
フェリシア様は、怒っていなかった。
少なくとも、私達の前では。
最後まで静かだった。
怒鳴らず、責めることなく、恨み言ひとつ言わなかった。
でも。
だからこそ、何を考えていたのか分からない。
「俺はずっと、フェリシアなら理解してくれると思っていた」
王子が苦しそうに目を伏せる。
「ちゃんと話せば、納得してくれるって」
私は胸の奥が痛くなるのを感じた。
理解してくれると思っていた。
実際、フェリシア様は受け入れた。
静かに、穏やかに、王子の幸せを願うみたいに。
だからこそ。
だからこそ、壊れてしまったのかもしれない。
「でも結局、俺は何も分かっていなかったんだろうな」
王子が小さく笑う。
その笑い方は、以前よりずっと弱々しかった。
「フェリシアが何を好きで、何を嫌っていたのかも、今になって思い出せない」
私は息を呑んだ。
王子はフェリシア様の婚約者だった。
長い時間を一緒に過ごしてきたはずだった。
なのに。
「……殿下」
「なんだ?」
「フェリシア様は、殿下のことを大切に思っていたと思います」
そう言った瞬間、王子の目が揺れた。
「どうしてそう思う?」
「だって……」
言葉が続かなかった。
だってフェリシア様は。
最後まで怒らなかったから。
自分が捨てられると分かっていても。取り巻き達へ、私を支えるよう頼んで。
王子の幸せを願うみたいに笑って。
そして、一人で消えていった。
そんな人が、愛していなかったはずがない。
でも。
それをどう言葉にすればいいのか分からなかった。
王子はしばらく黙っていた。
やがて、小さく息を吐く。
「……分からないな」
その声は、ひどく空っぽだった。
「フェリシアは、最後まで何も言わなかったから」
私は目を伏せた。
その時だった。
かつ、という小さな音が聞こえた。
私は反射的に顔を上げる。
誰かの靴音だった。
長い回廊の奥、けれど、そこには誰もいない。
灰色の光が差し込む石畳の廊下が、静かに続いているだけだ。
なのに。
かつ、かつ。
ゆっくりと、誰かが歩いてくる音だけが響いていた。
私は息を呑む。
王子も音に気づいたらしく、顔を上げる。
「……誰だ?」
返事はない。
ただ、靴音だけが近づいてくる。
規則正しく、静かに。
まるで。
淑女が廊下を歩くみたいに。
そろそろクドイって?ワイもそう思ってる
どうかブクマと☆をお願いします…!!!




