第5話:フェリシアと化す
どうかブクマと☆をお願いします…!!!
それから先、私は少しずつ、自分が変わっていくのを感じていた。
最初は、本当に小さなことだった。
食堂で紅茶を選ぶ時。
以前なら甘い香りの強いものを選んでいたのに、気づけば自然とローズヒップの茶葉を手に取っている。
「あら」
その時、ヴィオレット様が嬉しそうに目を細めた。
「フェリシア様も、その香りがお好きでしたわ」
私は思わず手を止めた。
とっさに戻そうとした。でも、なぜか指が動かなかった。
「……そう、なんですね」
結局、そのままカップを受け取ってしまう。
甘酸っぱい香りが、静かに立ち上った。
飲んでみると、美味しかった。
少し悔しいくらいに。
その日を境に、似たようなことが増えていった。
「その髪型、とても素敵ですわ」
「今日の結い方、フェリシア様みたい」
「最近、本当に雰囲気が変わられましたわね」
最初は偶然だと思っていた。
でも違った。
私は無意識に、フェリシア様を真似していたのだ。
背筋を伸ばす角度や歩幅、椅子へ座る時の姿勢。それから髪を耳へかける仕草。
気づけば、全部。
鏡を見るたび、自分が少しずつ別の誰かへ近づいていく気がした。
ある日の朝だった。
寮の部屋で髪を整えていた時、私はふと手を止めた。
鏡の中の自分が、見慣れない髪型をしていた。
左右を緩く編み込み、後ろでまとめた形。
フェリシア様が、よくしていた髪型だった。
「……なんで」
私は鏡へ手を伸ばす。
いつの間に、どうして、こんな結い方を。
思い出せない。
昨日の夜、自分で結ったはずなのに。
なのに、鏡の中の私はひどく自然にその髪型をしていた。
まるで最初から、自分のものだったみたいに。
ぞわり、と背筋へ寒気が走る。
慌てて髪をほどいた。
けれど指先へ絡みついた感触に、私は息を止める。
金色の髪だった。
一本ではない。
二本。
三本。
細く長い金髪が、私の指へ絡みついていた。
「ひっ!」
反射的に振り払うと、髪は床へ落ちた。
でも次の瞬間には、もう消えていた。
私はしばらく、その場から動けなかった。
その日から、金髪は増え始めた。
机の上、廊下、本の間、制服の肩。
気づくと、どこかに落ちている。
最初は一本だけだった。
でも最近では、何本も見つかる。
昨日は教科書を開いた瞬間、ページの間から長い金髪が零れ落ちた。
今日は靴箱の中に入っていた。
きっと誰かの悪戯だ。
そう考えようとしても、無理だった。
こんなに長く、美しい金髪の生徒なんて、もう学園にはいない。
いるはずがないのだ。
放課後。
私はヴィオレット様達と、暖炉のある小さな談話室にいた。
外は雨だった。窓ガラスを叩く音が、静かな室内へ響いている。暖炉の火は赤く揺れ、甘い香りの茶葉が湯気を立てていた。
「アメリ様、最近本当にお綺麗になられましたわ」
マリエル様が嬉しそうに言った。
「そうかしら……」
「ええ。最初はもっと愛らしい印象でしたのに、今はとても落ち着いて見えます」
「本当に」
クロード様も微笑む。
「最近のアメリ様、時々どきっとするくらいフェリシア様に似ていらっしゃるもの」
暖炉が、ぱちりと音を立てた。
私は思わず視線を落とす。
揺れる火の向こうに、空席があった。
丸いテーブルを囲む椅子は五つ。
でも今、座っているのは私達四人だけだ。
一つだけ空いた椅子。
そこを見た瞬間、妙な感覚が走った。
誰かが座っていた気がした。
ほんの一瞬だけ。
白い指先が見えた気がして、私は反射的に顔を上げる。
誰もいない。
空席だった。
「アメリ様?」
ヴィオレット様が不思議そうに首を傾げる。
「どうかなさいました?」
「……いえ」
喉が乾いていた。
私は紅茶へ手を伸ばす。
ふわり、と香りが漂った。
その瞬間だった。
甘い花の香りが、混ざった。
思わず凍りつく。
知っている香りだった。
夜会の時。
フェリシア様が去った時に漂った香水。
あの香りだ。
心臓が激しく鳴り始める。
「……アメリ様?」
マリエル様の声が遠かった。
私はゆっくり顔を上げる。
暖炉の向こうに視線を向ける。
窓ガラスに、私達の姿が映っている。
ヴィオレット様、クロード様、マリエル様。
そして私。
――その隣に、もう一人いた。
長い金髪に白い肌、静かな青い瞳。
私は息を呑み、瞬きをする。
しかし次の瞬間には、窓ガラスには私達しか映っていなかった。
「どうされましたの?」
ヴィオレット様が心配そうに身を乗り出す。
その優しい声が、今はひどく怖かった。
「顔色が真っ青ですわ」
「……なんでも、ありません」
私は無理やり笑った。
ちゃんと微笑めているだろうか、フェリシア様みたいに。
そう考えた瞬間、自分の背筋が凍りつくのを感じた。
俺…これを投稿し終わったら寝るんだ…
どうかブクマと☆をお願いします…!!!




