第3話:フェリシア様なら
どうかブクマと☆をお願いします…!!!
それから先、ヴィオレット様達は、ますます自然に私の側にいるようになった。
朝は部屋まで迎えに来る。
昼は一緒に食堂で食事を取る。
放課後になれば、お茶へ誘われる。
最初は戸惑っていたけれど、次第にそれが当たり前になっていった。
不思議なことに、3人と一緒にいる時だけは、あの金髪のことを忘れられた。
だから私は、なるべく彼女達と一緒にいた。
その日の午後も、私達は中庭に面したサロンで紅茶を飲んでいた。
窓の外では、秋風に揺れる薔薇が陽を受けて輝いている。
ヴィオレット様が紅茶を口へ運びながら、ふと微笑んだ。
「アメリ様、最近紅茶の飲み方が綺麗になられましたわね」
「え?」
思わず、自分の手元を見る。
白いティーカップを持つ指先。
背筋を伸ばした姿勢。
ほんの少し傾けた首。
「そうかしら?」
「ええ」
クロード様が嬉しそうに頷く。
「今の角度、とても上品でしたわ」
「フェリシア様みたいでした」
マリエル様の言葉に、私は思わず動きを止めた。
一瞬だけ、空気が静かになる。
けれど3人は、本当に穏やかに微笑んでいた。
嫌味を言っているようには見えない。
むしろ、褒めてくれているみたいだった。
「フェリシア様も、カップを持つ時はいつもそうなさっていましたの」
ヴィオレット様が懐かしそうに目を細める。
「指先まで綺麗で、見惚れてしまうほどでしたわ」
私は曖昧に笑った。
嬉しい、と思った。
フェリシア様みたい。それは、この学園では最高の褒め言葉に近かったからだ。
フェリシア様は完璧だった。
美しく、聡明で、誰より令嬢らしい人だった。
そんな人に似ていると言われて、悪い気はしない。
……最初は。
その日からだった。
私は時々、自分の動きを意識するようになった。
歩く時の姿勢、そして椅子へ座る時の角度。
紅茶を飲む時の指先も。
少しでも下品に見えないように。
少しでも美しく見えるように。
そう考えて動くようになっていた。
すると不思議なことに、ヴィオレット様達はすぐ気づくのだ。
「まあ、今の礼、とても綺麗でしたわ」
「歩き方も素敵です」
「ふふ、本当にフェリシア様みたい」
最初は嬉しかった。
認められている気がした。
私は下級貴族の娘で、学園へ入った頃は礼儀作法も下手だった。
フェリシア様達みたいな高位貴族の令嬢と並ぶだけで緊張していたくらいだ。
だから褒められると、どうしても嬉しかった。
でも。
いつからだろう。
その言葉を聞くたび、胸の奥がざわつくようになったのは。
ある日の授業終わりだった。
教師へ挨拶をした時、ヴィオレット様がふっと笑った。
「今のお辞儀、とても綺麗でしたわ」
「そうでしょうか?」
「ええ。背筋の伸ばし方が、フェリシア様そっくりでした」
私は反射的に顔を上げた。
ヴィオレット様は微笑んでいる。クロード様も、マリエル様も。
優しく、穏やかに、少しも悪意などない顔で。
なのに、その瞬間、なぜか背筋が寒くなった。
私はフェリシア様じゃない。
そう言いかけて、口を閉じる。
そんなことを言ったら、何かがおかしい気がした。
何が。
どうおかしいのかは、自分でも分からなかったけれど。
その日の夜。
部屋で鏡を見ていた時だった。
私は無意識に、昼間ヴィオレット様に褒められた角度で礼をしていた。
ゆっくりと頭を下げる。指先を揃え、背筋を伸ばす。
鏡の中の自分を見る。
そこに映っていたのは、いつもの私だった。
赤茶色の髪に緑の瞳の平凡な顔。
フェリシア様とは全然違う。
なのに。
ほんの一瞬だけ。
鏡の中の自分が、知らない誰かに見えた。
私は慌てて顔を上げた。
誰もいない。当然だ、部屋には私しかいない。
「……疲れてるだけ」
小さく呟く。
でも声は少し震えていた。
翌日。
食堂でスープを飲んでいた時、クロード様が突然「あ」と声を漏らした。
「どうかなさいました?」
「いえ……今のアメリ様の微笑み方が、とてもフェリシア様らしかったものですから」
スプーンを持つ手が止まった。
「……そう、ですか」
「ええ」
クロード様は微笑んでいる。
「口元の上げ方がよく似ておりましたわ」
「最近、本当に雰囲気が変わられましたものね」
マリエル様も嬉しそうに言う。
「最初はもっと可愛らしい感じでしたのに、今はとても落ち着いて見えます」
「まるで、フェリシア様が戻ってきたみたい」
ヴィオレット様がそう言って、紅茶へ口をつけた。
その瞬間。
私の中で、何かが凍りついた。
戻ってきた。
誰が?
フェリシア様が?
私の中へ?
そんなはずない。
そんなこと、あるわけない。
なのに。
その日の午後、廊下を歩いていた時。
窓ガラスへ映った自分の立ち姿が、一瞬だけフェリシア様に見えた。
ガッチガチに肩こり起こしました
どうかブクマと☆をお願いします…!!!




