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悪役令嬢が死んだはずなのに、今日も隣の席に座っている  作者: 延々Redo


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第2話:金色の髪

どうかブクマと☆をお願いします…!!!

 フェリシア様の訃報が流れてから、学園は不気味なほど早く日常へ戻っていった。

 授業は再開され、教師達はいつも通り黒板へ文字を書き、生徒達も以前と変わらない顔で談笑している。

 笑い声さえ聞こえていた。まるで、何事もなかったみたいに。


 けれど私は、時々ふと周囲の空気が止まる瞬間を感じるようになっていた。

 廊下ですれ違った時、食堂へ入った時、さらに教室で席についた時。

 一瞬だけ、誰かの視線が集まる。

 そして次の瞬間には、何事もなかったように逸らされる。

 そんなことが増えていた。



 その日も、朝から妙に落ち着かなかった。

 授業の準備をしようとして、机へ鞄を置く。

 留め具を外し、中へ手を入れた瞬間だった。

 指先に、何か細いものが絡みついた。


「……え?」


 引き抜くと、それは金色の髪だった。

 細く、長い髪。

 蝋燭の灯りを受けて淡く光るその色を見た瞬間、心臓がどくりと鳴る。


 フェリシア様の髪と、同じ色だった。


 私は慌てて周囲を見回した。

 教室には何人も生徒がいる。

 誰かの悪戯かもしれない、そう思おうとした。

 でも、こんな長い金髪の生徒は学園にほとんどいない。

 まして、こんな色は。


「アメリ様?」


 ヴィオレット様の声に、私は反射的に髪を握り込んだ。


「どうかされまして?」

「い、いえ…なんでもありません」


 慌てて髪を鞄の奥へ押し込む。

 ヴィオレット様は不思議そうに小首を傾げたが、それ以上は何も聞かなかった。

 代わりに、そっと私の机へ小さな包みを置く。


「朝食をあまり召し上がっていないでしょう?」

「え?」

「マリエルが焼き菓子を作ってきてくれたのです。よろしければ」


 見ると、小さなレモンケーキだった。

 甘い香りがふわりと漂う。


「ありがとうございます……」


 戸惑いながら受け取る。

 ヴィオレット様は柔らかく微笑んだ。


「無理をなさらないでくださいませ。最近、ずっと顔色が優れませんもの」


 優しい声だった。

 本当に、優しすぎるくらいに。



 授業中も、私はずっと鞄の中が気になっていた。

 あの髪はまだ入っているのだろうか。

 誰かに見つかったらどうしよう。

 そもそも、どうして入っていたのだろう。

 考え始めると集中できなかった。


 教師の声が頭に入ってこない。

 窓際の空席が視界に入るたび、胸の奥がざわつく。


 フェリシア様の席は、今も空いたままだった。

 誰も座ろうとしない。

 教師でさえ、まるでそこを避けるみたいに立っていた。



 昼休みになり、私はこっそり鞄の中を確認した。

 けれど、そこには何もなかった。

 金髪は消えていた。

 代わりに教科書がきちんと整えられている。

 誰かが触った形跡もない。


「……気のせい?」


 思わず呟く。

 その時だった。


「アメリ様?」


 背後から声がして、私は肩を跳ねさせた。

 クロード様だった。


「そんなに驚かなくても」

「す、すみません」

「最近、本当にお疲れみたいですわね」


 クロード様はそう言って、静かに微笑んだ。

 細い指が、私の乱れた髪へ伸びる。


「少し失礼いたしますね」


 さらり、と耳元の髪を整えられる。

 その仕草があまりに自然で、私は一瞬動けなかった。


「……ありがとうございます」

「フェリシア様も、よく髪を整えてくださいましたの」


 クロード様は懐かしそうに目を細める。


「授業中に乱れると、見ていて気になるとおっしゃって」


 まただ。

 最近、3人は必ずフェリシア様の話をする。

 何気ない会話の中に、食事の最中に、授業の合間に、まるで呼吸をするみたいに自然と。


 それが嫌だとは思わなかった。

 思わなかった、はずなのに。



 その日の放課後。

 ヴィオレット様達と廊下を歩いていた時だった。


「アメリ様、少しこちらを」


 マリエル様が、小さな手鏡を差し出した。


「髪が乱れておりますわ」

「え?」


 私は鏡を受け取り、自分の顔を見る。

 赤茶色の髪に少し疲れた顔。

 緑の瞳の見慣れた自分が、鏡越しに見つめ返す。


 ――その後ろに、金色が見えた。


 長い髪だった。

 鏡の中で、誰かが私のすぐ後ろに立っている。

 金色の髪が、肩から静かに流れていた。


 息が止まる。

 反射的に振り返った。


 誰もいない。

 長い石造りの廊下が続いているだけだった。

 窓から差し込む夕陽が、床を赤く染めている。


「アメリ様?」


 マリエル様が不思議そうに首を傾げた。


「どうかなさいました?」


「……いえ」


 喉がうまく動かなかった。

 鏡を返す私の指先が、少しだけ震えていた。



 その日の夜。

 部屋へ戻った私は、何度も鏡を見てしまっていた。

 映るのは自分だけだ。

 当然ながら誰もいない。

 それなのに、背後が気になる。


 振り返りたくなる。

 誰かが立っている気がする。


 私はぎゅっと目を閉じた。

 きっと疲れているだけだ。

 フェリシア様のことが頭に残っているだけ。

 あの人が亡くなったばかりだから。

 ただ、それだけ。


 ――そう思いたかった。


ランキング入りさせてください…!!!

どうかブクマと☆をお願いします…!!!

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