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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第九十九話「託された先」

いつもお読みいただきありがとうございます。


それぞれの想いを背負い、

蒼真達は前へ進みます。


誰か一人では届かなかった場所へ。


第九十九話

「託された先」


よろしくお願いいたします。

 世界が鳴いた。

 黒い流れが爆発する。


 轟音。


 空洞全体を埋め尽くす瘴気が、一斉に蒼真そうまへ襲い掛かった。


「ぐっ……!!」


 蒼真そうまは刀を地面へ突き立てる。


 足が沈む。

 全身へ流れ込む。


 記憶。

 感情。

 怒り。

 悲しみ。

 絶望。


 数え切れないほどの流れが押し寄せていた。

 意識が引き裂かれそうになる。


蒼真そうま!!」


 綾乃あやのが叫ぶ。


 白玖はくの結界が軋む。


 白い光が激しく明滅した。


「耐えろ!」

 白玖はくが札を叩き付ける。

 結界がさらに広がる。


 だが流れは止まらない。

 押し潰そうとするように蒼真そうまへ集まっていく。



げん!」


 かがりが叫ぶ。


 げんは既に弓を引いていた。

「見えている」


 矢が放たれる。

 結晶へ。

 一直線。


 轟音。

 白い結晶が砕け散った。


 流れが解放される。


「次は左だ!」

 かがりが指示を飛ばす。


 らんが拳を叩き込む。


 豪山ごうざんが黒嵐を振るう。


 結晶が次々と砕けていく。

 流れが解放される。


 まだ足りない。

 数が多過ぎる。


 空洞の至る所で結晶が脈打っていた。



 蒼真の視界が揺れる。

 知らない景色。

 知らない声。

 泣いている人。

 笑っている人。


 別れ。

 後悔。

 怒り。

 悲しみ。


 全てが流れ込む。


「っ……!」

 膝が沈む。


 意識が遠のく。


 その時だった。


蒼真そうま!」

 らんの声。


 蒼真そうまは顔を上げる。


 らんは笑っていた。

「勝手に倒れるなよ!」


 拳が結晶を砕く。


 豪山ごうざんも吠える。

「終わるまで寝るな!」


 黒嵐が振り下ろされる。

 結晶が吹き飛んだ。


 蒼真そうまは思わず笑う。

「無茶言うな……」


 その時だった…

 豪山ごうざんが足を止める。


「……待て」


 らんが振り向く。

「どうした?」


 豪山ごうざんは耳を澄ませていた。

 流れの音。

 結晶の音。


 その奥。

 かすかな声。


「…………」


 豪山ごうざんの目が変わる。


「子供だ」


 らんが眉を寄せる。

「何?」


「奥だ」

 豪山ごうざんは黒水晶の奥を見る。

 誰にも聞こえない。


 だが確かに聞こえた。

 助けを求める声が。


「まだいる」


豪山ごうざん!」


 かがりの声。


 豪山ごうざんは振り返らない。


「待て!」


 白玖はくも気付いた。


「今行けば――」

 言葉は最後まで続かなかった。


 豪山ごうざんはもう走り出していた。

「待ってろ!!」


 轟音。

 黒嵐が振り下ろされる。

 黒水晶が砕けた。


「おい!」

 らんが叫ぶ。


 そして、

 豪山ごうざんの背中を見る。


 ほんの一瞬、迷う。


 迷ったのは、本当に一瞬だった。



「待て!」

 らんも走り出す。


「一人で行くな馬鹿野郎!」


 豪山ごうざんらんは黒水晶の奥へ消えた。


「…………」


 かがりが目を閉じる。


 白玖はくが額を押さえる。


 綾乃あやのが呆然と立ち尽くす。


 げんが小さく息を吐いた。


「行ったな…」


「あぁ…行ったな」


 蒼真そうまは流れに耐えながら叫んだ。


「お前ら暴走してどーするーーー!!」




第九十九話 終

第九十九話でした。


「託す」という言葉は、

この物語で何度も出てきました。


想い。

願い。

守れなかったもの。


それは時に重く、

時に誰かを前へ進ませます。


受け取った者がどう進むのか。


少しずつ物語は先へ向かいます。


次回もよろしくお願いいたします。

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