第九十九話「託された先」
いつもお読みいただきありがとうございます。
それぞれの想いを背負い、
蒼真達は前へ進みます。
誰か一人では届かなかった場所へ。
第九十九話
「託された先」
よろしくお願いいたします。
世界が鳴いた。
黒い流れが爆発する。
轟音。
空洞全体を埋め尽くす瘴気が、一斉に蒼真へ襲い掛かった。
「ぐっ……!!」
蒼真は刀を地面へ突き立てる。
足が沈む。
全身へ流れ込む。
記憶。
感情。
怒り。
悲しみ。
絶望。
数え切れないほどの流れが押し寄せていた。
意識が引き裂かれそうになる。
「蒼真!!」
綾乃が叫ぶ。
白玖の結界が軋む。
白い光が激しく明滅した。
「耐えろ!」
白玖が札を叩き付ける。
結界がさらに広がる。
だが流れは止まらない。
押し潰そうとするように蒼真へ集まっていく。
「弦!」
篝が叫ぶ。
弦は既に弓を引いていた。
「見えている」
矢が放たれる。
結晶へ。
一直線。
轟音。
白い結晶が砕け散った。
流れが解放される。
「次は左だ!」
篝が指示を飛ばす。
嵐が拳を叩き込む。
豪山が黒嵐を振るう。
結晶が次々と砕けていく。
流れが解放される。
まだ足りない。
数が多過ぎる。
空洞の至る所で結晶が脈打っていた。
蒼真の視界が揺れる。
知らない景色。
知らない声。
泣いている人。
笑っている人。
別れ。
後悔。
怒り。
悲しみ。
全てが流れ込む。
「っ……!」
膝が沈む。
意識が遠のく。
その時だった。
「蒼真!」
嵐の声。
蒼真は顔を上げる。
嵐は笑っていた。
「勝手に倒れるなよ!」
拳が結晶を砕く。
豪山も吠える。
「終わるまで寝るな!」
黒嵐が振り下ろされる。
結晶が吹き飛んだ。
蒼真は思わず笑う。
「無茶言うな……」
その時だった…
豪山が足を止める。
「……待て」
嵐が振り向く。
「どうした?」
豪山は耳を澄ませていた。
流れの音。
結晶の音。
その奥。
かすかな声。
「…………」
豪山の目が変わる。
「子供だ」
嵐が眉を寄せる。
「何?」
「奥だ」
豪山は黒水晶の奥を見る。
誰にも聞こえない。
だが確かに聞こえた。
助けを求める声が。
「まだいる」
「豪山!」
篝の声。
豪山は振り返らない。
「待て!」
白玖も気付いた。
「今行けば――」
言葉は最後まで続かなかった。
豪山はもう走り出していた。
「待ってろ!!」
轟音。
黒嵐が振り下ろされる。
黒水晶が砕けた。
「おい!」
嵐が叫ぶ。
そして、
豪山の背中を見る。
ほんの一瞬、迷う。
迷ったのは、本当に一瞬だった。
「待て!」
嵐も走り出す。
「一人で行くな馬鹿野郎!」
豪山と嵐は黒水晶の奥へ消えた。
「…………」
篝が目を閉じる。
白玖が額を押さえる。
綾乃が呆然と立ち尽くす。
弦が小さく息を吐いた。
「行ったな…」
「あぁ…行ったな」
蒼真は流れに耐えながら叫んだ。
「お前ら暴走してどーするーーー!!」
第九十九話 終
第九十九話でした。
「託す」という言葉は、
この物語で何度も出てきました。
想い。
願い。
守れなかったもの。
それは時に重く、
時に誰かを前へ進ませます。
受け取った者がどう進むのか。
少しずつ物語は先へ向かいます。
次回もよろしくお願いいたします。




