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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第九十四話「最後はお前に」

いつも読んでいただきありがとうございます。


長い時間を共に過ごした者達だからこそ、

託せるものがあります。


今回はそんなお話です。


よろしくお願いいたします。

 白い結晶は静かに広がっていた。


 腕、肩、首元。

 止まらない。

 じんは立ったままだった。


 残された時間は多くない。


「やめろ……」

 らんの声が震える。


「迅」


 返事はない。

 結晶はさらに広がる。


「やめろよ……」

 らんは首を振った。

 認めたくなかった。

 受け入れたくなかった。

 目の前にいるのは親友だ。

 敵じゃない。


 ずっと。

 ずっと連れ戻したかった相手だ。


 なのに、終わろうとしている。


 じんが小さく笑った。


「……嵐」


 懐かしい声だった。


 らんの肩が震える。


「何だよ……」


 一歩前へ出る。


「そんな顔するなよ……」


 じんは少しだけ空を見た。

 奏多かなを思い出したのか。


 それとも、昔を思い出したのか。

 誰にも分からない。


 迅が次に見たのは嵐だった。


「頼む」


 らんが顔を歪める。


「嫌だ」

 即答だった。


「嫌だ!」

「ふざけんな!」

「何で俺なんだよ!」


「蒼真がいるだろ!」

「神代がいるだろ!」


「俺には出来ねぇよ!」


 じんは怒らない。

 困ったように笑うだけ。

 昔と同じだった。


「本当に変わらねぇな」


「うるせぇ!」


「なぁ…頼むよ」


 静かな声。


「お前にお願いしたいんだ」


 らんが息を呑む。


「俺を断ってくれ」


 空洞が静まり返る。

 誰も口を挟まない。


 それは、

 親友同士の時間だった。


「……嫌だ」

 らんは俯いた。


「そんなの嫌だ……」

 子供のような声だった。


 じんは笑った。


「知ってる」


「でも」

「お前じゃなきゃ駄目なんだ」


 じんは小さく笑った。


「お前だけだ」


「最後まで俺を見てたのは」


 結晶が肩まで覆う。

 時間はない。


 じんは静かに目を閉じた。

 そして。

 もう一度開く。


 嵐を見る。

 親友を見る。


「最後はお前に頼む」


嵐、拳を握る。

震える。

泣いてる。


でも、前へ出る。

らんが震える拳を握り締めた。



第九十四話 終

第九十四話を読んでいただきありがとうございました。


言葉にできること。

言葉にできないこと。


それでも、人は誰かへ想いを託します。


終わりへ向かう物語の中で、

それぞれの選択が少しずつ形になっていきます。


次回もよろしくお願いいたします。

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