表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
93/105

第九十三話「断つ者」

いつも読んでいただきありがとうございます。


止まっていた流れが再び動き始めます。


選ぶこと。

断つこと。


その意味と向き合う時が訪れました。


よろしくお願いいたします。

 空洞は静まり返っていた。


 誰も動かない。

 誰も声を出さない。


 黒い糸だけが、じんの傷口から零れ落ちている。


 一本。

 また一本。

 止まることなく。

 流れ続けていた。


 じん蒼真そうまを見ている。

 蒼真そうまは動けなかった。

 刀を握っている。

 だが、振れない。


 目の前にいるのは敵ではない。

 迅だ。

 らんの親友だ。


 まだ立っている。

 まだ話している。

 まだ人に見える。


「神代の者よ――」

 じんが静かに言った。

 空洞に響く。

 誰も口を挟まない。


「迷うな」

 蒼真そうまの肩が震えた。


 じんは続ける。

「それがお前の役目だ」


 黒い糸が零れる。

 足元へ。

 床へ。

 流れ続ける。


「……迅」

 らんの声が震えた。


 じんは振り返らない。

 視線は蒼真そうまだけを見ている。


「断て」

 短い言葉だった。


 だが。

 重い。


 蒼真そうまは刀を握り締めた。

 父の言葉が過る。



 妹を守れる強い男になれ。



 幼い頃。

 何度も聞いた言葉。

 意味など考えたこともなかった。


 だが今は違う。

 守るために。

 断たなければならない。


 蒼真そうまは目を閉じる。

 短く息を吐いた。


 そして、刀を構える。


「……すまない」

 誰に向けた言葉か。

 自分でも分からなかった。


 じんは小さく笑う。

「謝るな」


 その声は穏やかだった。


 蒼真そうまが踏み込む。

 刀が走る。


 白い軌跡。

 黒い糸。

 交差する。


 一閃。

 静寂。


 そして、黒い糸が断ち切られた。


 空洞が震える。

 無数の糸が悲鳴のように揺れた。


 蒼真そうまは息を呑む。

 終わらない。


 黒い糸は消えた。


 だが、じんの身体が軋む。


 腕。

 肩。

 胸。

 白い結晶が広がっていく。


 かがりが静かに目を伏せた。

「核が残っている」


 誰も答えない。

 答えは分かっていた。


 らんが一歩前へ出る。

「やめろ……」


 じんの腕が結晶へ変わる。

 指先。

 肩。

 首元。

 止まらない。


「やめろ」

 らんの声が震える。


「迅……」


 じんは静かに親友を見る。

 何も言わない。


 ただ、少しだけ笑った。




第九十三話 終

第九十三話を読んでいただきありがとうございました。


ずっと旅を続けてきた蒼真達。


辿り着いた先で、それぞれが抱えてきた想いが形になり始めます。


断つということは、

決して簡単なことではありません。


次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ