第八十五話「黒水晶の祠」
ここまでお読みいただきありがとうございます。
ついに蒼真達は祠へ辿り着きます。
長く続いた旅の先に待つものは何なのか。
そして、見えてきた真実とは――。
本日もよろしくお願いいたします。
黒い霧は濃くなっていた。
足元すら見えない。
前を歩く弦だけが迷わない。
ただ真っ直ぐ進んでいく。
やがて。
弦が足を止めた。
「着いた」
蒼真達も立ち止まる。
目の前の黒い霧が揺れた。
風が吹く。
霧がゆっくり割れていく。
そして。
全員が息を呑んだ。
⸻
巨大な塊。
祠。
そう呼ぶには、あまりにも異様だった。
黒い結晶。
黒い柱。
黒い流れ。
山の中心には巨大な黒水晶が聳えていた。
樹木より高く。
岩壁のように広い。
空へ向かって無数の結晶が伸びている。
その中心。
僅かに見えた。
古びた祠。
本来の姿を残しているのは、その一部だけだった。
「……何だよ」
嵐が呟く。
誰も答えない。
答えられなかった。
もはや祠ではない。
災厄だった。
弦が目を細める。
「流れの中心だ」
篝が静かに頷く。
「ああ」
「ここが全ての始まりだ」
⸻
その時だった。
小さな咳が聞こえた。
綾乃だけが振り向く。
豪山だった。
「豪山?」
「何でもねぇ」
豪山が口元を拭った指先。
そこに、僅かな赤が滲んでいた。
綾乃の表情が変わる。
「……」
言葉は出ない。
篝だけが静かに豪山を見る。
一瞬。
二人の視線が交わった。
何も言わない。
互いに理解していた。
豪山自身も。
もう気付いている。
限界が近いことを。
「行くぞ」
豪山が黒嵐を担ぐ。
いつも通りの声だった。
蒼真も何も気付かない。
嵐も。
弦も。
ただ前だけを見ている。
⸻
蒼真は巨大な黒水晶を見上げた。
ここだ。
全てが繋がっている場所。
紬へ。
久遠へ。
流れの中心へ。
刀の柄を握る。
仲間達を見る。
誰も怯んでいない。
誰も引き返そうとしない。
蒼真は頷いた。
「行こう」
全員が頷く。
黒い祠。
黒水晶の中心へ。
蒼真達は、一歩を踏み出した。
⸻
第八十五話 終
第八十五話をお読みいただきありがとうございました。
祠へ到着した蒼真達。
しかし、その姿は彼らの知る祠ではありませんでした。
そして少しずつ見え始める異変。
旅の終わりは近付いていますが、同時に本当の戦いも近付いています。
次回もよろしくお願いいたします。




