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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第八十五話「黒水晶の祠」

ここまでお読みいただきありがとうございます。


ついに蒼真達は祠へ辿り着きます。


長く続いた旅の先に待つものは何なのか。


そして、見えてきた真実とは――。


本日もよろしくお願いいたします。

 黒い霧は濃くなっていた。

 足元すら見えない。


 前を歩く弦《げん》だけが迷わない。

 ただ真っ直ぐ進んでいく。


 やがて。

 弦《げん》が足を止めた。


「着いた」


 蒼真《そうま》達も立ち止まる。

 目の前の黒い霧が揺れた。


 風が吹く。

 霧がゆっくり割れていく。


 そして。

 全員が息を呑んだ。


⸻


 巨大な塊。


 祠。

 そう呼ぶには、あまりにも異様だった。


 黒い結晶。

 黒い柱。

 黒い流れ。


 山の中心には巨大な黒水晶が聳えていた。

 樹木より高く。

 岩壁のように広い。

 空へ向かって無数の結晶が伸びている。


 その中心。

 僅かに見えた。

 古びた祠。


 本来の姿を残しているのは、その一部だけだった。


「……何だよ」

 嵐《らん》が呟く。


 誰も答えない。

 答えられなかった。

 もはや祠ではない。


 災厄だった。


 弦《げん》が目を細める。

「流れの中心だ」


 篝《かがり》が静かに頷く。

「ああ」

「ここが全ての始まりだ」


⸻


 その時だった。

 小さな咳が聞こえた。

 綾乃《あやの》だけが振り向く。


 豪山《ごうざん》だった。


「豪山?」


「何でもねぇ」


 豪山《ごうざん》が口元を拭った指先。


 そこに、僅かな赤が滲んでいた。

 綾乃《あやの》の表情が変わる。


「……」

 言葉は出ない。

 篝《かがり》だけが静かに豪山《ごうざん》を見る。


 一瞬。

 二人の視線が交わった。

 何も言わない。


 互いに理解していた。

 豪山《ごうざん》自身も。

 もう気付いている。

 限界が近いことを。


「行くぞ」

 豪山《ごうざん》が黒嵐を担ぐ。

 いつも通りの声だった。


 蒼真《そうま》も何も気付かない。

 嵐《らん》も。

 弦《げん》も。


 ただ前だけを見ている。


⸻


 蒼真《そうま》は巨大な黒水晶を見上げた。

 ここだ。

 全てが繋がっている場所。

 紬《つむぎ》へ。

 久遠《くおん》へ。

 流れの中心へ。


 刀の柄を握る。

 仲間達を見る。

 誰も怯んでいない。

 誰も引き返そうとしない。


 蒼真《そうま》は頷いた。

「行こう」


 全員が頷く。

 黒い祠。

 黒水晶の中心へ。


 蒼真《そうま》達は、一歩を踏み出した。


⸻


第八十五話 終

第八十五話をお読みいただきありがとうございました。


祠へ到着した蒼真達。


しかし、その姿は彼らの知る祠ではありませんでした。


そして少しずつ見え始める異変。


旅の終わりは近付いていますが、同時に本当の戦いも近付いています。


次回もよろしくお願いいたします。

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