表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
81/105

第八十一話「山へ向かう者たち」

いつもお読みいただきありがとうございます。


祠へ向かうことを決めた蒼真達。

静かな朝。

それぞれが覚悟を胸に、山の奥へと足を踏み入れます。


第八十一話「山へ向かう者たち」

よろしくお願いします。

 朝は、静かだった。

 夜の冷気は薄れ始めている。

 風だけが、木々の間を抜けていた。


 子供達は、まだ眠っている。

 綾乃あやのが、一人ずつ様子を見ていた。


 豪山ごうざんは黒嵐を背負う。


 らんは拳へ布を巻いていた。


 かがりは尺八を腰へ差す。


 蒼真そうまは、静かに刀へ触れた。


 誰も、多くを語らない。

 必要な話は終わっていた。


 向かう先も。

 やるべき事も。

 全員が理解している。


 誰が合図したわけでもない。


 気付けば、皆が一斉に立ち上がっていた。


 蒼真そうまが仲間達を見る。


「行こう」


 短い一言。

 誰も返事はしない。

 

 ただ、静かに頷いた。


 げんが山の奥を見る。

 目を閉じる。

 風を聞くように。

 何かを探るように。


 やがて。

 ゆっくり目を開いた。


「向こう側に糸が繋がっている」


「まずは、そこを目指そう」


 皆が頷く。

 そして歩き出した。



 山道は細かった。

 獣道に近い。

 人が通った跡も少ない。

 木々は深く。

 枝が空を覆っている。


 進むほどに、光は減っていった。


 らんが周囲を見回す。

「静かだな」


 蒼真そうまも頷く。


 鳥の声がない。

 虫の音もない。

 風だけが吹いている。

 生き物の気配が薄い。


 まるで、何かを避けているようだった。


 げんが前を見たまま呟く。

「流れが濃くなっている」


 その声に、全員の表情が僅かに引き締まる。


 祠へ近付いている。

 それだけは分かった。


 かがりが静かに口を開いた。

「集まっているな」


「何がだ?」

 らんが聞く。


 かがりは少しだけ空を見る。

「流れだ」


 短い言葉。

 その声には、わずかな緊張があった。


 蒼真そうまは山の奥を見る。

 見えるのは木々だけ。


 その先に何かがある。

 そんな感覚だけが残る。



 しばらく進んだ時だった。

 げんが足を止める。


 全員が立ち止まった。


「どうした」

 豪山ごうざんが聞く。


 げんは答えない。

 山の奥を見ている。


 やがて、低く呟いた。


「……速い」

 空気が変わる。

 蒼真そうまが眉を寄せる。


「何がだ」


「流れだ」

 げんの視線は動かない。


「集まる速度が上がっている」

 風が吹いた。

 冷たい風だった。

 木々が揺れる。

 葉が擦れる。

 その音だけが山に響いた。


 かがりが静かに目を細める。

「急いだ方が良さそうだな」


 誰も異論はなかった。


 祠は近い。


 そして。

 何かが始まろうとしている。


 そんな予感だけが。

 山全体を覆っていた。




第八十一話 終

第八十一話をお読みいただきありがとうございました。


今回は祠編へ向かうための出発回でした。

大きな出来事はありませんが、嵐達の「言葉にしなくても通じる関係」が少しでも伝わっていたら嬉しいです。


次回からは、いよいよ祠へ近づいていきます。

山の異変と流れの行方を見守っていただければ幸いです。


よろしければ感想・ブックマーク・評価などいただけると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ