第八十話「祠へ」
いつも読んでくださりありがとうございます。
長かった過去の話を越え、
物語は再び“現在”へ戻ります。
断つ者。
繋ぐ者。
止める者。
それぞれの想いを抱え、
蒼真達は祠へ向かいます。
静かな朝の空気と共に、
読んで頂けたら嬉しいです。
朝は、静かだった。
夜を覆っていた冷気が、
ゆっくり山から離れていく。
焚き火は消えていた。
残った灰だけが、白く風へ流れている。
子供達は、まだ眠っていた。
綾乃が、一人ずつ様子を見ている。
豪山は、少し離れた場所へ座っていた。
黒嵐を横へ置き、静かに空を見ている。
嵐が近づいた。
「……起きてて平気かよ」
豪山が鼻で笑う。
「寝たら治るなら苦労しねぇ」
「顔色ひでぇぞ」
「元からだ」
即答だった。
嵐が顔をしかめる。
「またそれ言う」
小さく笑う声。
綾乃だった。
「無理はしてる」
「でも、今は動ける」
豪山が、嫌そうに顔をしかめる。
「余計な事言うな」
「本当の事だろ」
少し離れた場所。
篝が、静かに尺八を吹いていた。
音色が山全体へ、静かに流れていく。
弦が、ゆっくり目を閉じた。
「……流れが変わってる」
蒼真が顔を上げる。
風。
空気。
山の奥。
何かが集まり始めている。
嫌な感覚だった。
篝が、尺八を止める。
「始まる」
静かな声。
空気が変わる。
嵐が、拳を握った。
「祠か」
篝は頷く。
「流れが集まり続けている」
「このまま放置すれば、土地ごと沈む」
綾乃が、静かに薬袋を結ぶ。
「止めるしかないね」
豪山が、ゆっくり立ち上がった。
一瞬。
足が揺れる。
倒れない。
黒嵐を掴む。
「行くぞ」
蒼真が、静かに刀へ触れる。
断つ者。
繋ぐ者。
止める者。
流れは、再び祠へ集まろうとしている。
その時。
風が吹いた。
遠く。
山の奥。
微かに、黒い流れが揺れる。
弦の顔色が変わる。
「……速い」
篝が、静かに山を見る。
「久遠も、待つつもりはない」
空気が張り詰める。
蒼真が、ゆっくり前を見る。
もう、戻れない。
進まなければならない。
風が吹く。
朝日が、山の奥を淡く照らしていた。
⸻
第八十話 終
第八十話「祠へ」でした。
ここまで読んでくださり、
本当にありがとうございます。
第六十一話から続いていた
豪山編、
そして過去と真実の語りが、
ここで一つ繋がりました。
第一世代。
第二世代。
そして第三世代。
それぞれが抱えたものを越え、
物語はいよいよ祠編へ入っていきます。
蒼真達が、
どんな答えを選ぶのか。
最後まで見届けて頂けたら嬉しいです。
次回もよろしくお願いします。




