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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第八十話「祠へ」

いつも読んでくださりありがとうございます。


 長かった過去の話を越え、

 物語は再び“現在”へ戻ります。


 断つ者。

 繋ぐ者。

 止める者。


 それぞれの想いを抱え、

 蒼真そうま達は祠へ向かいます。


 静かな朝の空気と共に、

 読んで頂けたら嬉しいです。

 朝は、静かだった。


 夜を覆っていた冷気が、

 ゆっくり山から離れていく。


 焚き火は消えていた。


 残った灰だけが、白く風へ流れている。


 子供達は、まだ眠っていた。


 綾乃あやのが、一人ずつ様子を見ている。


 豪山ごうざんは、少し離れた場所へ座っていた。


 黒嵐を横へ置き、静かに空を見ている。


 らんが近づいた。

「……起きてて平気かよ」


 豪山ごうざんが鼻で笑う。

「寝たら治るなら苦労しねぇ」


「顔色ひでぇぞ」


「元からだ」

 即答だった。


 らんが顔をしかめる。

「またそれ言う」


 小さく笑う声。

 綾乃あやのだった。


「無理はしてる」


「でも、今は動ける」


 豪山ごうざんが、嫌そうに顔をしかめる。


「余計な事言うな」


「本当の事だろ」


 少し離れた場所。


 かがりが、静かに尺八を吹いていた。

 音色が山全体へ、静かに流れていく。


 げんが、ゆっくり目を閉じた。

「……流れが変わってる」


 蒼真そうまが顔を上げる。


 風。

 空気。

 山の奥。

 何かが集まり始めている。


 嫌な感覚だった。


 かがりが、尺八を止める。


「始まる」

 静かな声。

 空気が変わる。


 らんが、拳を握った。


「祠か」


 かがりは頷く。

「流れが集まり続けている」


「このまま放置すれば、土地ごと沈む」


 綾乃あやのが、静かに薬袋を結ぶ。

「止めるしかないね」


 豪山ごうざんが、ゆっくり立ち上がった。


 一瞬。

 足が揺れる。


 倒れない。

 黒嵐を掴む。


「行くぞ」


 蒼真そうまが、静かに刀へ触れる。


 断つ者。

 繋ぐ者。

 止める者。


 流れは、再び祠へ集まろうとしている。


 その時。

 風が吹いた。


 遠く。

 山の奥。


 微かに、黒い流れが揺れる。


 げんの顔色が変わる。

「……速い」


 かがりが、静かに山を見る。


「久遠も、待つつもりはない」


 空気が張り詰める。

 蒼真そうまが、ゆっくり前を見る。


 もう、戻れない。


 進まなければならない。


 風が吹く。

 朝日が、山の奥を淡く照らしていた。



第八十話 終

 第八十話「祠へ」でした。


 ここまで読んでくださり、

 本当にありがとうございます。


 第六十一話から続いていた

 豪山ごうざん編、

 そして過去と真実の語りが、

 ここで一つ繋がりました。


 第一世代。

 第二世代。

 そして第三世代。


 それぞれが抱えたものを越え、

 物語はいよいよ祠編へ入っていきます。


 蒼真そうま達が、

 どんな答えを選ぶのか。


 最後まで見届けて頂けたら嬉しいです。


 次回もよろしくお願いします。

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