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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第七十七話「残された者達」

 いつも読んでくださりありがとうございます。


 今回は、

 紡《つむぎ》を失った後に残された者達の話です。


 止める者。

 記す者。

 そして、救われてしまった者。


 それぞれが何を抱え、

 今へ繋がっているのか。


 静かな祠の空気と共に、

 読んで頂けたら嬉しいです。


 焚き火の火が、静かに揺れていた。

 誰も、すぐには口を開かなかった。


 紡《つむぎ》。


 その名だけが、夜の中へ残っている。


 嵐《らん》が、低く息を吐いた。


「……そりゃ、壊れるわ」


 誰も否定しなかった。


 蒼真《そうま》は、静かに刀を見ていた。


 残したかった。

 流れてほしくなかった。

 その気持ちは、分かってしまう。


 だから余計に、重かった。


 篝《かがり》が、静かに続ける。


「久遠《くおん》は、紡の結晶を持ち去った」


「誰にも触れさせなかった」


 綾乃《あやの》が、小さく目を伏せる。

「……残そうとしたんだね」


 篝《かがり》は頷いた。

「流れなければ、消えない」


「止まれば、失われない」


「久遠は、本気でそう信じ始めた」


 弦《げん》が、静かに口を開く。


「だから、黒い結晶か」


「感情を固定する為のものだ」

「悲しみも」

「願いも」

「命すらも」


 豪山《ごうざん》が、苦い顔をした。


「死者を、終わらせねぇ為か」


「そうだ」

「守り人は割れた」


「久遠へ従う者」


「止めようとする者」


「そして――」


 篝《かがり》の目が、静かに伏せられる。

「何も選べなかった者」


 火が、小さく爆ぜた。


 蒼真《そうま》が、静かに顔を上げる。


「白玖《はく》か」


 篝《かがり》は、少しだけ黙った。


 やがて。

「白玖は、久遠を止められなかった」


「紡も、救えなかった」


「だから今も、流れを見続けている」


 弦《げん》が、静かに目を伏せる。


「……記する者」


 篝《かがり》は頷いた。

「忘れぬ為だ」


「壊れた流れも」

「消えた命も」

「全部」


 夜風が流れる。


 嵐《らん》が、小さく舌打ちした。


「じゃあ無月《むつき》は」


 篝《かがり》の目が、少しだけ険しくなる。

「無月《むつき》は、戦の後に拾われた子だ」


 空気が変わる。


「流れへ呑まれ、名前も失っていた」

「久遠《くおん》が引き取った」


 綾乃《あやの》が、小さく息を呑む。

「……あいつ」


「久遠を、父のように見ている」


 嵐《らん》が、顔をしかめる。


「だから従ってんのか」


「救われたからだ」

 篝《かがり》の声は静かだった。


「たとえ、壊れた救いでも」


 蒼真《そうま》が、静かに目を閉じる。


 敵。


 そう呼ぶには。

 あまりにも、苦しみが残りすぎていた。


 篝《かがり》が、ゆっくり立ち上がる。

「……もう戻れん」


「久遠は、祠へ向かった」

「流れそのものを、止める為に」


 夜風が、静かに吹いていた。


⸻


第七十七話 終

 第七十七話「残された者達」でした。


 今回は、

 久遠《くおん》だけではなく、

 “残された側”の人達を描いた回でした。


 白玖《はく》は、

 止められなかった者。


 無月《むつき》は、

 壊れた救いに拾われた者。


 そして久遠《くおん》は、

 失われる事を受け入れられなかった者。


 誰か一人だけが悪かったわけではない。


 だからこそ、

 今の流れは、とても歪で悲しいものになっています。


 次回、

 物語は久遠《くおん》側の視点へ入っていきます。


 次回もよろしくお願いします。

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