表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
76/105

第七十六話「紡《つむぎ》」

いつも読んでくださりありがとうございます。


 今回は、

 久遠くおんが壊れてしまった理由。


 そして、

 “つむぎ”という存在へ触れる回です。


 優しかった人達が、

 どうして壊れていったのか。


 静かな夜の火と共に、

 読んで頂けたら嬉しいです。

 焚き火が、静かに揺れていた。


 誰も、すぐには口を開かなかった。

 風だけが流れている。


 久遠くおん

 その名は、重かった。


 蒼真そうまには、まだ分からなかった。

 なぜ、そこまで壊れたのか。


 かがりが、静かに火を見る。


「……つむぎがいた」


 蒼真そうまの目が、わずかに揺れた。


 らんが顔を上げる。


つむぎ……?」


 かがりの声は、どこまでも静かだった。


神代かみしろの紡ぎ手だ」


「流れを繋ぐ者」


 火が揺れる。


久遠くおんとは、よく共にいた」


 綾乃あやのが、小さく目を伏せる。

「……有名だった」

「誰よりも、人へ寄り添う人だった」


 豪山ごうざんが、重く息を吐く。

「馬鹿みてぇに優しかった」


 その言葉に、少しだけ空気が揺れた。


 かがりが続ける。


つむぎは、流れを恐れなかった」


「悲しみも」


「苦しみも」


「憎しみも」


「全部、受け止めようとしていた」


 蒼真そうまが、静かに聞いている。


「久遠とは、よくぶつかっていた」


 風が吹く。


『全部抱え込めば、お前が壊れる』


『それでも、流れは止めちゃいけない』


 かがりの声ではない。

 まるで。

 遠い記憶を、そのまま聞いているようだった。


「戦は激しくなっていた」


「祠は濁り」


「守り人も減っていた」


「もう、限界だった」


 げんが、静かに拳を握る。


 かがりの目が、静かに伏せられる。


「ある日、一つの祠が壊れた」


「流れが溢れた」


「感情が暴走した」


「土地一つが、黒く沈んだ」


 綾乃あやのが、小さく息を呑む。


「……まさか」


「村が消えた」

 静かな声だった。


「人も」

「流れも」

「全部、呑み込まれた」


 誰も動かない。


「紡は、最後まで祠へ残った」


 豪山ごうざんが、目を閉じる。


「流れを、繋ぎ止めようとしたんだろうな」


 かがりは頷く。

「一人でも逃がそうとしていた」


「最後まで」


 蒼真そうまの喉が、小さく鳴る。

「……助からなかったのか」


 風が吹く。


 かがりが、ゆっくり目を閉じた。


久遠くおんが辿り着いた時には、もう遅かった」


 焚き火が、小さく爆ぜる。


「祠は壊れ」


「流れは暴走し」


つむぎは――」


 声が止まる。


 かがりが、初めて苦しそうに息を吐いた。


「結晶になっていた」


 風が止む。


 誰も、言葉を出せなかった。


 蒼真そうまの指が、わずかに震える。


「……っ」


 かがりの声が、静かに落ちる。


「久遠は、その結晶を抱いていた」


「壊れた祠の中で」


「ずっと」


『どうして、流れてしまう』


『どうして、残せない』


 らんが、何も言えなくなる。


 豪山ごうざんが、静かに目を伏せる。


 綾乃あやのの拳が、小さく握られていた。


「その日からだ」


 かがりが、静かに空を見る。


「久遠が、流れを止め始めたのは」


 夜風だけが、静かに吹いていた。



第七十六話 終

 第七十六話「つむぎ」でした。


 今回は、

 『紡ぎの剣』の中でも、

 かなり重要な過去の回でした。


 つむぎは、

 “流れを繋ぐ者”として、

 最後まで人を救おうとした人です。


 そして久遠くおんは、

 その喪失によって、

 “止める者”になってしまった。


 流れていくもの。

 残したいもの。


 その想いが、

 今の世界へ繋がっています。


 次回は、

 “残された者達”の話へ続いていきます。


 次回もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ