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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第七十話「止まれなかった者」

いつも読んでくださりありがとうございます。


 戦いが終わった後も、

 流れは止まりません。


 今回は、

 かがりが語る“止まれなかった者達”の話です。


 静かな夜の中で、

 少しずつ過去と真実へ踏み込んでいきます。


 よろしくお願いします。

 夜は、深かった。


 子供達は、

 綾乃あやのの薬で眠っている。

 泣き疲れた寝息だけが、

 静かに揺れていた。


 焚き火の音。


 風。


 そして、小さな尺八の音色。


 かがりは、少し離れた場所で静かに奏でる。


 豪山ごうざんは、木へ背を預けたまま目を閉じていた。

 黒嵐は横。

 その呼吸は、まだ少し重い。


 綾乃あやのが、小さく息を吐いた。

「……無茶しすぎだ」


 豪山ごうざんが鼻で笑う。

「今更だろ」


「笑い事じゃない」

 綾乃あやのの声が響く。

「黒い流れが、まだ残ってる」


 豪山ごうざんは答えない。


 尺八の音色だけが流れている。


 やがて。

 かがりが、静かに音を止めた。

「……抱え込みすぎる」


 豪山ごうざんが目を開く。

「守るってのは、そういうもんだろ」


 かがりは、焚き火を見る。

「お前は昔から変わらん」


 豪山ごうざんが小さく笑う。

「お前もな」


 らんが、その空気を見ていた。

「……知り合いだったのか?」


 かがりは答えない。

 代わりに、豪山ごうざんが口を開いた。


「戦場で何度か会った」


 蒼真そうまが目を細める。

「戦場?」


 風が吹く。

 火が揺れる。

 かがりの目が、静かに細くなる。


「……死が多すぎた時代だ」

 沈んだ声。


「流れが、溢れていた」


 げんが、小さく顔を上げる。

「……結晶か」


 かがりが頷く。


「恐怖。憎しみ。後悔」


「流れは濁り、留まり続けた」


 綾乃あやのが、静かに呟く。

「だから……

 結晶を集めてる奴がいる」


 かがりは、しばらく黙っていた。


 やがて。

「……止めようとした者がいた」


 空気が変わる。


 豪山ごうざんの目が、わずかに伏せられる。


 蒼真そうまが、かがりを見る。


「誰だ」


 尺八が、小さく鳴った。


「流れに、

終わりを与えようとした者だ」


 げんの顔色が変わる。


「まさか……」


 かがりが、静かに頷く。

「守り人だった」


 沈黙。

 風。

 火。


 誰も、すぐには言葉を出せない。


 らんが低く言う。

「……敵じゃねぇのかよ」


 かがりの目が、静かに揺れた。


「違う」

「違ってしまった」

 その言葉。


 豪山ごうざんが、ゆっくり目を閉じる。


 蒼真そうまが、低く問う。


「そいつは今、何をしようとしてる」


 かがりは、夜の奥を見る。


「止まった流れを、無理やり終わらせようとしている」


 げんが息を呑む。

「……全部、結晶化する気か」


 かがりは答えない。

 その沈黙が、答えだった。


 焚き火が揺れる。

 遠く。


 風の奥で。


 何かが、静かに軋んでいた。




第七十話 終

第七十話「止まれなかった者」でした。


 ここから物語は、

 “戦い”だけではなく、

 “何故こうなったのか”へ入っていきます。


 かがり

 豪山ごうざん

 綾乃あやの


 それぞれが見てきたもの。


 そして、

 止められなかったもの。


 この辺りから、

 『紡ぎの剣』の核心へ近づいていきます。


 次回もよろしくお願いします。

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