第六十九話「支える者」
いつも読んでくださりありがとうございます。
黒い檻は砕けました。
ですが、
戦いの傷は残っています。
今回は、
“戦いの後に支える者達”の回です。
少し静かな空気の中で、
豪山達の関係や、
篝の存在も見えてきます。
よろしくお願いします。
夜が、静かに揺れていた。
村へ戻った子供達は、まだ震えている。
泣き疲れ、眠っている子もいた。
綾乃は、黙って薬を煎じていた。
薬草の匂いが広がる。
豪山は、少し離れた場所へ座っていた。
黒嵐を横へ置き、木へ背を預けている。
息が荒い。
嵐が近づく。
「……おっさん」
豪山は目を閉じたまま答える。
「なんだ」
「顔色悪ぃぞ」
「元からだ」
即答だった。
嵐が眉を寄せる。
「絶対違ぇだろ」
その時。
綾乃が、湯気の立つ器を持ってきた。
「飲め」
豪山が顔をしかめる。
「苦ぇ匂いがする」
「薬だからね」
「酒にしろ」
「悪化する」
嵐が小さく笑う。
「わかる」
綾乃が振り向いた。
「お前も飲むんだよ」
嵐の顔が固まる。
「なんでだよ!?」
「怪我してるだろ」
「平気だ!」
「うるさい。座れ」
嵐が渋々座る。
豪山が小さく笑った。
「ガキだな」
「うるせぇ」
その時……
風が吹く。
静かな音色が流れる。
尺八。
小さい音色。
不思議と空気が落ち着く。
蒼真が振り向く。
少し離れた木の下。
編笠の男が座っていた。
篝。
静かに尺八を吹いている。
弦が小さく息を吐く。
「……流れが安定してる」
綾乃も気づいていた。
豪山へ絡みついていた黒い流れ。
それが、わずかに静まっている。
篝は、音を止めないまま口を開いた。
「……受けすぎたな」
豪山が鼻で笑う。
「止めなきゃ、ガキが死んでた」
篝は何も言わない。
静かに音色を流している。
綾乃が、豪山へ薬を押しつけた。
「飲め」
「だから苦ぇんだよこれは」
「死ぬよりマシだ」
豪山が嫌そうな顔で飲む。
一瞬。
顔が歪んだ。
「……っ苦ぇ」
嵐が吹き出した。
「ははっ、おっさんも同じ顔してる」
「笑ってる場合か。次お前」
「嫌だ!!」
綾乃が無理やり器を押しつける。
蒼真が、その様子を静かに見ていた。
戦いの後、疲れている。
傷もある。
誰も、止まっていない。
その時、篝の尺八が止まる。
静寂。
篝が、ゆっくり空を見上げた。
「……まだ終わっていない」
空気が変わる。
豪山が、重く息を吐いた。
「ああ」
短い返事。
蒼真が篝を見る。
「何か知っているのか?」
風が吹く。
篝は、しばらく黙っていた。
やがて。
「……知っている」
静かな声。
「止まれなかった者だ」
夜風が、静かに村を流れていった。
⸻
第六十九話 終
第六十九話「支える者」でした。
今回は、
“戦った後の空気”を大切に描いた回でした。
豪山は強い人ですが、
同時に、
無理を押し込んで立ち続ける人でもあります。
だからこそ、
綾乃や篝の
“支える側”が必要になる。
そして嵐。
薬を嫌がるところは、
少しだけ息抜きでした(笑)
静かな回ですが、
ここから物語は、
さらに“過去”へ踏み込んでいきます。
次回もよろしくお願いします。




