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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第六十九話「支える者」

 いつも読んでくださりありがとうございます。


 黒い檻は砕けました。


 ですが、

 戦いの傷は残っています。


 今回は、

 “戦いの後に支える者達”の回です。


 少し静かな空気の中で、

 豪山ごうざん達の関係や、

 かがりの存在も見えてきます。


 よろしくお願いします。

 夜が、静かに揺れていた。


 村へ戻った子供達は、まだ震えている。

 泣き疲れ、眠っている子もいた。


 綾乃あやのは、黙って薬を煎じていた。

 薬草の匂いが広がる。


 豪山ごうざんは、少し離れた場所へ座っていた。


 黒嵐を横へ置き、木へ背を預けている。

 息が荒い。


 らんが近づく。

「……おっさん」


 豪山ごうざんは目を閉じたまま答える。

「なんだ」


「顔色悪ぃぞ」


「元からだ」

 即答だった。


 らんが眉を寄せる。

「絶対違ぇだろ」


 その時。

 綾乃あやのが、湯気の立つ器を持ってきた。

「飲め」


 豪山ごうざんが顔をしかめる。

「苦ぇ匂いがする」


「薬だからね」


「酒にしろ」


「悪化する」


 らんが小さく笑う。

「わかる」


 綾乃あやのが振り向いた。

「お前も飲むんだよ」


 らんの顔が固まる。

「なんでだよ!?」


「怪我してるだろ」


「平気だ!」


「うるさい。座れ」


 らんが渋々座る。

 豪山ごうざんが小さく笑った。


「ガキだな」


「うるせぇ」


 その時……

 風が吹く。

 静かな音色が流れる。


 尺八。

 小さい音色。


 不思議と空気が落ち着く。


 蒼真そうまが振り向く。


 少し離れた木の下。

 編笠の男が座っていた。


 かがり


 静かに尺八を吹いている。


 げんが小さく息を吐く。

「……流れが安定してる」


 綾乃あやのも気づいていた。


 豪山ごうざんへ絡みついていた黒い流れ。

 それが、わずかに静まっている。


 かがりは、音を止めないまま口を開いた。

「……受けすぎたな」


 豪山ごうざんが鼻で笑う。

「止めなきゃ、ガキが死んでた」


 かがりは何も言わない。

 静かに音色を流している。


 綾乃あやのが、豪山ごうざんへ薬を押しつけた。

「飲め」


「だから苦ぇんだよこれは」


「死ぬよりマシだ」


 豪山ごうざんが嫌そうな顔で飲む。

 一瞬。

 顔が歪んだ。


「……っ苦ぇ」


 らんが吹き出した。

「ははっ、おっさんも同じ顔してる」


「笑ってる場合か。次お前」


「嫌だ!!」


 綾乃あやのが無理やり器を押しつける。


 蒼真そうまが、その様子を静かに見ていた。


 戦いの後、疲れている。

 傷もある。


 誰も、止まっていない。


 その時、かがりの尺八が止まる。


 静寂。

 かがりが、ゆっくり空を見上げた。


「……まだ終わっていない」


 空気が変わる。


 豪山ごうざんが、重く息を吐いた。


「ああ」

 短い返事。


 蒼真そうまかがりを見る。

「何か知っているのか?」


 風が吹く。


 かがりは、しばらく黙っていた。


 やがて。


「……知っている」

 静かな声。


「止まれなかった者だ」


 夜風が、静かに村を流れていった。



第六十九話 終

第六十九話「支える者」でした。


 今回は、

 “戦った後の空気”を大切に描いた回でした。


 豪山ごうざんは強い人ですが、

 同時に、

 無理を押し込んで立ち続ける人でもあります。


 だからこそ、

 綾乃あやのかがり

 “支える側”が必要になる。


 そしてらん

 薬を嫌がるところは、

 少しだけ息抜きでした(笑)


 静かな回ですが、

 ここから物語は、

 さらに“過去”へ踏み込んでいきます。


 次回もよろしくお願いします。

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