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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第六十八話「砕ける檻」

いつも読んでくださりありがとうございます。


 黒い檻。

 循環する恐怖。

 暴走する流れ。


 全てを断ち切る為、

 蒼真そうまが核へ踏み込みます。


 そして今回は、

 “砕ける瞬間”の回です。


 よろしくお願いします。


 蒼真そうまが、核へ飛び込む。


 黒い流れが唸った。

 結晶。

 脈打っている。


 子供達の恐怖。

 泣き声。

 黒い感情。


 全部が、そこへ集まっていた。


 無月むつきが動く。


 速い。


 黒い刃が、蒼真そうまの首を狙う。


 らんが叫ぶ。

「行けェ!!」


 拳。

 轟音。


 無月むつきの軌道が逸れる。


 蒼真そうまは止まらない。


 風。

 流れ。

 全部が見えていた。


 断つ!

 繋がった恐怖ごと。


 蒼真そうまが、剣を振り上げる。


 その瞬間。

 子供の泣き声が響いた。

「やだぁぁ!!」


 黒い結晶が脈打つ。

 流れが暴走する。


 黒い糸が、一気に蒼真そうまへ絡みついた。


「っ!!」

 重い。

 腕が止まる。

 恐怖。

 悲しみ。

 痛み。

 感情が流れ込んでくる。


 知らない。

 知らないはずなのに。


 怖い。

 苦しい。

 助けて。


 蒼真そうまの目が揺れる。


 その時。

 尺八の音が流れた。


 静かに。

 遠くから。

 泣き声を包むように。


 風が吹く。


 黒い流れが、わずかに揺らぐ。


 綾乃あやのが叫ぶ。

「蒼真!!」

「飲まれるな!!」


 げんが歯を食いしばる。

「切れ!!」

「今なら流れが開いてる!!」


 豪山ごうざんが、黒い流れを押さえ込んだまま叫ぶ。

「行けェェ!!」


 蒼真そうまの意識が正常に戻る。


 剣を握る。

 怖い。

 それでも。

 断つ。


「……終われ」

 一閃。

 白い軌跡が走る。


 次の瞬間。

 黒い結晶へ、亀裂が入った。


 空気が止まる。


 無月むつきの目が、初めて大きく揺れた。


 結晶が、音を立てる。


 ピシッ――


 黒い糸が崩れる。


 子供達を包んでいた檻が、一気に砕け散った。


 轟音。

 風が吹き抜ける。

 子供達の泣き声。


 黒い感情。


 全部が、夜空へ解けていく。


 綾乃あやのが、子供達を抱き寄せた。


「大丈夫……!!」


 らんが、荒く息を吐く。


「……終わった、のか?」


 その瞬間。


 無月むつきの気配が消えた。


 蒼真そうまが振り向く。


 木の上。

 黒衣だけが揺れている。


 無月むつきは、静かに蒼真そうまを見ていた。


「……断ったか」

 感情はない。


 どこか、確かめるような目だった。


 次の瞬間。

 風が吹く。

 無月むつきの姿が消える。


 静寂。

 夜の山に、子供達の泣き声だけが残っていた。


 豪山ごうざんが、ゆっくり膝をつく。


 黒嵐が、重く地面へ沈んだ。


 蒼真そうまが目を見開く。


「豪山――」



第六十八話 終

第六十八話「砕ける檻」でした。


 ついに、黒い檻が崩れました。


 ですが今回は、

 単純な勝利ではなく、

 “感情へ触れる怖さ”を強く描きたかった回でもあります。


 蒼真そうまが触れた恐怖。

 子供達の痛み。

 黒い流れ。


 断つという事は、

 その全てへ触れる事でもあるのかもしれません。


 そして無月むつき

 彼もまた、

 ただの敵ではない空気が少しずつ見え始めています。


 さらに、

 豪山ごうざんへ蓄積していく負担。


 戦いは、まだ終わりません。


 次回もよろしくお願いします。

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