第六十八話「砕ける檻」
いつも読んでくださりありがとうございます。
黒い檻。
循環する恐怖。
暴走する流れ。
全てを断ち切る為、
蒼真が核へ踏み込みます。
そして今回は、
“砕ける瞬間”の回です。
よろしくお願いします。
蒼真が、核へ飛び込む。
黒い流れが唸った。
結晶。
脈打っている。
子供達の恐怖。
泣き声。
黒い感情。
全部が、そこへ集まっていた。
無月が動く。
速い。
黒い刃が、蒼真の首を狙う。
嵐が叫ぶ。
「行けェ!!」
拳。
轟音。
無月の軌道が逸れる。
蒼真は止まらない。
風。
流れ。
全部が見えていた。
断つ!
繋がった恐怖ごと。
蒼真が、剣を振り上げる。
その瞬間。
子供の泣き声が響いた。
「やだぁぁ!!」
黒い結晶が脈打つ。
流れが暴走する。
黒い糸が、一気に蒼真へ絡みついた。
「っ!!」
重い。
腕が止まる。
恐怖。
悲しみ。
痛み。
感情が流れ込んでくる。
知らない。
知らないはずなのに。
怖い。
苦しい。
助けて。
蒼真の目が揺れる。
その時。
尺八の音が流れた。
静かに。
遠くから。
泣き声を包むように。
風が吹く。
黒い流れが、わずかに揺らぐ。
綾乃が叫ぶ。
「蒼真!!」
「飲まれるな!!」
弦が歯を食いしばる。
「切れ!!」
「今なら流れが開いてる!!」
豪山が、黒い流れを押さえ込んだまま叫ぶ。
「行けェェ!!」
蒼真の意識が正常に戻る。
剣を握る。
怖い。
それでも。
断つ。
「……終われ」
一閃。
白い軌跡が走る。
次の瞬間。
黒い結晶へ、亀裂が入った。
空気が止まる。
無月の目が、初めて大きく揺れた。
結晶が、音を立てる。
ピシッ――
黒い糸が崩れる。
子供達を包んでいた檻が、一気に砕け散った。
轟音。
風が吹き抜ける。
子供達の泣き声。
黒い感情。
全部が、夜空へ解けていく。
綾乃が、子供達を抱き寄せた。
「大丈夫……!!」
嵐が、荒く息を吐く。
「……終わった、のか?」
その瞬間。
無月の気配が消えた。
蒼真が振り向く。
木の上。
黒衣だけが揺れている。
無月は、静かに蒼真を見ていた。
「……断ったか」
感情はない。
どこか、確かめるような目だった。
次の瞬間。
風が吹く。
無月の姿が消える。
静寂。
夜の山に、子供達の泣き声だけが残っていた。
豪山が、ゆっくり膝をつく。
黒嵐が、重く地面へ沈んだ。
蒼真が目を見開く。
「豪山――」
第六十八話 終
第六十八話「砕ける檻」でした。
ついに、黒い檻が崩れました。
ですが今回は、
単純な勝利ではなく、
“感情へ触れる怖さ”を強く描きたかった回でもあります。
蒼真が触れた恐怖。
子供達の痛み。
黒い流れ。
断つという事は、
その全てへ触れる事でもあるのかもしれません。
そして無月。
彼もまた、
ただの敵ではない空気が少しずつ見え始めています。
さらに、
豪山へ蓄積していく負担。
戦いは、まだ終わりません。
次回もよろしくお願いします。




