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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第七話 「火の男」

第7話は、

“認識”に焦点が当たる回です。


同じものを見ていても、

捉え方が違う。


「一人だった道に、別の足音が重なった。」


⸻


 風が、強く吹いていた。


 山道を抜けた先。

 開けた土地に出る。


 土が荒れている。

 踏み荒らされた跡。

 戦いの痕。


 そして——


 音。


 拳がぶつかる、鈍い音。


「……っらァ!!」


 怒号。


 蒼真は足を止める。

 視線を向ける。


 そこにいた。

 一人の男。


 複数の人間に囲まれている。


 だが——


 押しているのは、その男だった。


 拳が振るわれる。

 骨の軋む音。


 一人、また一人と倒れていく。


 だが。

 倒れた者は——

 立ち上がる。


 目は、空っぽだ。


(絡人……)


 蒼真は目を細める。


 だが、その男は止まらない。


まるで、

 “止まる理由を持っていない”かのように。


「何度来ても同じだっつってんだろ!!」


 拳を叩き込む。

 力任せ。


 だが——

  迷いがない。

  躊躇う気配すらない。


 叫びながら、殴っている。


 怒り。

 苛立ち。


 そして——

  “消せない何か”。


「……やめろ」


 蒼真が口を開く。


 男の動きが、一瞬止まる。


「……あ?」

 振り返る。

 鋭い目。


 その奥で、感情が燃えている。


「斬らなきゃ終わらねぇだろうが!!」


 男が怒鳴る。


「殴っても、戻らない」


 蒼真は静かに言う。


「……は?」


「そいつらは、人だ」


「だからなんだよ!!」

 一歩、詰める。


「じゃあどうすりゃいいんだよ!!」

 拳を握る。


「見捨てろってか!?」


 蒼真は、黙る。


 その問いに、

 すぐ答えられない自分がいる。


「……斬る」

 短く言う。


「は?」


 男の顔が歪む。


「正気かお前」


「断てば、戻る」


「全部がか?」


 沈黙。


「……戻らねぇやつもいるんだろ」


 低い声。

 図星だった。


「……それでもだ」


 蒼真が言う。


「それでも、断つしかない」


 空気が張り詰める。


「……ふざけんなよ」


 男が吐き捨てる。


「そんな答えで納得できるかよ」


 その言葉には、

 痛みがあった。


 絡人が、再び動き出す。


「来るぞ」


 蒼真が言う。


「分かってるっつーの!!」


 男が踏み込む。

 拳と刃が、交差する。


 一瞬だけ、

 互いの動きが噛み合う。


 やり方は違う。


 だが——


 見ているものは、同じだった。


 蒼真が糸を断つ。


 男が吹き飛ばす。


 やがて、最後の一体。


「どけ!!」


 男が叫ぶ。

 突っ込む。


「……無駄だ」


 蒼真が動く。


 刃が閃く。

 絡人が崩れる。


 静寂。


「……っ」

 男が歯を食いしばる。


 拳が震えている。


「……名前は」

 蒼真が言う。


「……嵐だ」


 吐き捨てるように。


「蒼真」

 短く返す。


「……気に食わねぇ」

 嵐が言う。


「やり方がな」


「……そうか」


 短い沈黙。


「でもな」


 嵐が、ふっと笑う。


「目は、嫌いじゃねぇ」


 風が吹く。

 空気が、変わる。


 孤独だった道に、

 “もう一つの足音”が混ざる。


 まだ、並んではいない。


 だが——


 確かに、同じ方向を向いていた。


——だが、まだ交わってはいない。


第七話 終


▼続きはこちらから(次話)

ここから少しずつ、

“普通の戦いではない”ことが見えてきます。


次話は、

一歩踏み込んだ衝突へ。

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