第六十六話「壁」
いつも読んでくださりありがとうございます。
黒い流れは止まりません。
押し寄せる恐怖。
崩れそうになる流れ。
その中で、
子供達の前へ立ち続ける豪山。
今回は、“壁”になる者達の回です。
よろしくお願いします。
黒い流れが、豪山へ襲いかかる。
轟音。
地面が砕けた。
黒嵐を中心に、空気が震える。
豪山は動かない。
子供達の前に立ったまま、黒い流れを受け止めていた。
黒い糸が、腕へ絡みつく。
肩へ伸びる。
足元へ沈む。
それでも。
豪山は、一歩も退かなかった。
「っ……!!」
嵐が踏み込む。
拳。
一撃。
黒い糸が弾け飛ぶ。
蒼真も走る。
剣。
一閃。
断つ。
多い。
次々と溢れてくる。
弦が周囲を見る。
「……流れが集まり続けてる」
山全体。
空気そのものが、黒く脈打っていた。
無月が、静かに豪山を見る。
「耐えるか」
感情のない声。
豪山が睨み返す。
「当たり前だ」
低い声だった。
「後ろにガキがいる」
その瞬間。
黒い流れが、さらに膨れ上がる。
子供達が悲鳴を上げた。
結晶が脈打つ。
綾乃が抱き寄せる。
「大丈夫!!」
「こっち見ろ!!」
震えている。
呼吸が浅い。
恐怖が、止まらない。
弦の目が動く。
「……まずい」
蒼真が振り向く。
「何だ」
「子供達の感情と、檻の流れが繋がってる」
「このままだと、全部持っていかれる」
嵐が舌打ちする。
「どうすりゃいい!!」
その瞬間。
遠く。
静かな音が流れた。
尺八。
小さい。
それでも、はっきり聞こえる。
風が揺れる。
黒い流れが、わずかに乱れた。
弦が目を見開く。
「……流れが緩んだ」
綾乃も気づく。
子供達の震えが、ほんの少しだけ弱まっていた。
無月の目が、初めて夜の奥を見る。
「……導く者」
その声。
豪山が、小さく息を吐く。
蒼真が、刀を握り直した。
今しかない。
弦が叫ぶ。
「左奥!!」
「核が見えた!!」
黒い檻。
絡み合った糸の中心。
黒い結晶。
脈打っている。
蒼真が走る。
嵐も踏み込む。
豪山が、黒い流れを押さえ込む。
「行けェ!!」
轟音。
夜の山が揺れた。
⸻
第六十六話 終
第六十六話「壁」でした。
今回は、
豪山が“受け止める側”として立つ回でした。
断つ。
壊す。
祓う。
色々な戦い方がありますが、
彼は“退かない”人です。
だからこそ、
流れを真正面から受け止めてしまう。
そして今回は、
篝の尺八も少しだけ動き始めました。
“導く音”が、
黒い流れへどう作用していくのか。
次回もよろしくお願いします。




