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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第六十六話「壁」

 いつも読んでくださりありがとうございます。


 黒い流れは止まりません。


 押し寄せる恐怖。

 崩れそうになる流れ。


 その中で、

 子供達の前へ立ち続ける豪山ごうざん


 今回は、“壁”になる者達の回です。


 よろしくお願いします。


 黒い流れが、豪山ごうざんへ襲いかかる。


 轟音。

 地面が砕けた。


 黒嵐を中心に、空気が震える。


 豪山ごうざんは動かない。


 子供達の前に立ったまま、黒い流れを受け止めていた。


 黒い糸が、腕へ絡みつく。

 肩へ伸びる。

 足元へ沈む。


 それでも。

 豪山ごうざんは、一歩も退かなかった。


「っ……!!」

 らんが踏み込む。


 拳。

 一撃。

 黒い糸が弾け飛ぶ。


 蒼真そうまも走る。


 剣。

 一閃。

 断つ。

 多い。

 次々と溢れてくる。


 げんが周囲を見る。

「……流れが集まり続けてる」


 山全体。

 空気そのものが、黒く脈打っていた。


 無月むつきが、静かに豪山ごうざんを見る。


「耐えるか」

 感情のない声。


 豪山ごうざんが睨み返す。


「当たり前だ」

 低い声だった。


「後ろにガキがいる」


 その瞬間。

 黒い流れが、さらに膨れ上がる。

 子供達が悲鳴を上げた。


 結晶が脈打つ。


 綾乃あやのが抱き寄せる。


「大丈夫!!」

「こっち見ろ!!」


 震えている。

 呼吸が浅い。


 恐怖が、止まらない。


 げんの目が動く。

「……まずい」


 蒼真そうまが振り向く。

「何だ」


「子供達の感情と、檻の流れが繋がってる」


「このままだと、全部持っていかれる」


 らんが舌打ちする。

「どうすりゃいい!!」


 その瞬間。

 遠く。

 静かな音が流れた。


 尺八。

 小さい。


 それでも、はっきり聞こえる。


 風が揺れる。

 黒い流れが、わずかに乱れた。


 げんが目を見開く。


「……流れが緩んだ」


 綾乃あやのも気づく。


 子供達の震えが、ほんの少しだけ弱まっていた。


 無月むつきの目が、初めて夜の奥を見る。

「……導く者」


 その声。


 豪山ごうざんが、小さく息を吐く。


 蒼真そうまが、刀を握り直した。


 今しかない。

 げんが叫ぶ。


「左奥!!」

「核が見えた!!」


 黒い檻。

 絡み合った糸の中心。

 黒い結晶。

 脈打っている。


 蒼真そうまが走る。


 らんも踏み込む。


 豪山ごうざんが、黒い流れを押さえ込む。


「行けェ!!」


 轟音。

 夜の山が揺れた。



第六十六話 終

第六十六話「壁」でした。


 今回は、

 豪山ごうざんが“受け止める側”として立つ回でした。


 断つ。

 壊す。

 祓う。


 色々な戦い方がありますが、

 彼は“退かない”人です。


 だからこそ、

 流れを真正面から受け止めてしまう。


 そして今回は、

 かがりの尺八も少しだけ動き始めました。


 “導く音”が、

 黒い流れへどう作用していくのか。


 次回もよろしくお願いします。

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