第六十五話「守る者」
いつも読んでくださりありがとうございます。
黒い檻を前に、
それぞれが動き始めます。
断つ者。
癒す者。
そして――守る者。
今回は、豪山の“覚悟”が強く出る回になりました。
よろしくお願いします。
轟音。
黒い糸が、吹き飛ぶ。
豪山の一撃だった。
黒嵐が、空気ごと叩き割る。
子供達の悲鳴。
黒い檻が軋む。
無月が、わずかに後ろへ跳んだ。
「……力任せか」
感情のない声。
豪山は答えない。
止まらない。
踏み込む。
地面が沈む。
黒嵐が振り下ろされる。
轟音。
木々が揺れる。
無月が、影のように避ける。
「蒼真!!」
嵐が叫ぶ。
蒼真が走る。
黒い流れ。
糸。
全部が、子供達へ繋がっている。
斬れば、流れる。
弦が叫ぶ。
「右三本!!」
「そこなら流れが薄い!!」
蒼真の目が動く。
見えた。
黒い糸の重なり。
わずかな隙間。
剣が走る。
一閃。
断つ。
黒い糸がほどける。
子供の一人が、小さく息を吐いた。
綾乃が駆け込む。
「大丈夫」
「こっち見ろ」
震えている。
冷たい。
恐怖が、まだ流れている。
綾乃が、子供を抱き寄せた。
「泣いていい」
「もう我慢しなくていい」
その瞬間。
結晶の光が、わずかに揺らぐ。
弦が目を見開いた。
「……感情が戻った」
無月の目が、初めて綾乃を見る。
「癒す者か」
綾乃が睨み返す。
「子供泣かせる趣味はないんでね」
その時。
黒い糸が、一斉に動いた。
地面。
木々。
空中。
全部が、蒼真達へ伸びる。
「来るぞ!!」
嵐が踏み込む。
拳。
一撃。
黒い糸が弾け飛ぶ。
多い。
止まらない。
無月が、静かに呟く。
「恐怖は尽きない」
その言葉。
子供達が、再び震え始める。
結晶が脈打つ。
豪山の顔が歪んだ。
「やめろ」
無月は止まらない。
「必要な流れだ」
その瞬間。
豪山が、子供達の前へ立った。
大きな背中。
黒嵐を地面へ突き立てる。
轟音。
空気が震える。
「見るな」
低い声だった。
「怯えるな」
風が揺れる。
黒い糸が、豪山へ集中する。
蒼真の目が動く。
「豪山!!」
豪山は動かない。
ただ、前に立つ。
「ガキは、守るもんだろうが」
その瞬間。
黒い流れが、一気に豪山へ襲いかかった。
第六十五話 終
第六十五話「守る者」でした。
今回は、
豪山の“背中”を描きたかった回でした。
守れなかった記憶を持つ人だからこそ、
もう一度、子供達の前へ立つ。
無茶だと分かっていても、
退かない。
第二世代の人達は、
“壊れた後の世界”を見続けてきた世代です。
だからこそ、
守る事への執着が強いのかもしれません。
そして戦いも、
さらに激しくなっていきます。
次回もよろしくお願いします。




