第六十四話「黒い檻」
いつも読んでくださりありがとうございます。
辿り着いた先にあったのは、
黒く歪んだ“檻”でした。
恐怖を閉じ込め、
増幅し続ける流れ。
そして、無月との再会。
ここから一気に空気が張り詰めていきます。
よろしくお願いします。
山道を駆ける。
風が強い。
枝が、何度も顔を打つ。
嵐が先頭を走っていた。
「どこだ!!」
焦りが滲む。
弦が、低く言う。
「近い」
風の流れが変わっていた。
黒い。
濁っている。
感情が、絡み合っている。
泣き声。
恐怖。
助けを呼ぶ声。
全部が、山の奥から流れていた。
豪山が、無言で前へ出る。
速い。
地面を踏む音だけが重かった。
蒼真が、その背を見る。
止まっていない。
迷っていない。
間に合わせようとしている。
その時。
弦の目が開く。
「……いた」
全員が止まる。
木々の先。
開けた場所。
そこに――
黒い檻があった。
糸。
絡み合った黒い流れ。
巨大な繭のように、
木々へ絡みついている。
その中。
子供達がいた。
泣いている。
震えている。
そして。
足元には、小さな結晶。
淡く黒ずんでいる。
綾乃の顔色が変わった。
「……もう始まってる」
嵐が歯を食いしばる。
「クソが……!!」
その瞬間。
影が降りた。
音もなく。
木の上。
黒衣。
無月だった。
「……早かったな」
感情のない声。
豪山の目が変わる。
空気が重く沈む。
「返せ」
低い声だった。
無月は、
静かに子供達を見る。
「まだ終わっていない」
「純度が足りない…」
その言葉。
豪山の拳が軋む。
嵐が前へ出ようとする。
蒼真の声が落ちる。
「待て」
黒い糸。
檻。
全部が繋がっている。
下手に動けば、
子供達へ流れる。
弦も気づいていた。
「……駄目だ」
「感情へ反応してる」
子供の一人が泣く。
「やだぁ……」
その瞬間。
黒い糸が脈打つ。
結晶が、少し大きくなる。
綾乃が舌打ちした。
「恐怖を増幅してる……!」
無月が、静かに蒼真を見る。
「断つ者か」
一瞬。
空気が揺れた。
蒼真が、刀へ手をかける。
「お前ら、何をする気だ」
無月は答えない。
黒い結晶を見つめる。
「必要な流れだ」
その瞬間。
豪山が踏み込んだ。
地面が揺れる。
「ふざけるなァ!!」
黒嵐。
一撃。
轟音。
黒い糸が吹き飛ぶ。
無月の目が、初めてわずかに揺れた。
嵐が叫ぶ。
「蒼真!!」
蒼真が走る。
弦が流れを読む。
綾乃が子供達へ向かう。
黒い檻が、一斉に軋んだ。
夜の山へ。
子供達の泣き声が響いていた。
第六十四話 終
今回は、
“感情そのものが武器になる”という、
この世界の怖さを強く描いた回でした。
恐怖が増幅され、
結晶へ変わっていく。
無月達がやっている事は、
単なる誘拐ではなく、
“流れ”を利用した異常な儀式に近いものです。
そして豪山。
彼の怒りが、ついに爆発しました。
次回、さらに激突していきます。
よろしくお願いします。




