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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第四章『境界へ至る』

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第六十四話「黒い檻」

いつも読んでくださりありがとうございます。


 辿り着いた先にあったのは、

 黒く歪んだ“檻”でした。


 恐怖を閉じ込め、

 増幅し続ける流れ。


 そして、無月むつきとの再会。


 ここから一気に空気が張り詰めていきます。


 よろしくお願いします。


 山道を駆ける。


 風が強い。

 枝が、何度も顔を打つ。


 らんが先頭を走っていた。


「どこだ!!」

 焦りが滲む。


 げんが、低く言う。

「近い」


 風の流れが変わっていた。


 黒い。

 濁っている。

 感情が、絡み合っている。


 泣き声。

 恐怖。

 助けを呼ぶ声。


 全部が、山の奥から流れていた。


 豪山ごうざんが、無言で前へ出る。


 速い。


 地面を踏む音だけが重かった。


 蒼真そうまが、その背を見る。

 止まっていない。

 迷っていない。


 間に合わせようとしている。


 その時。

 げんの目が開く。


「……いた」


 全員が止まる。

 木々の先。

 開けた場所。


 そこに――

 黒い檻があった。


 糸。


 絡み合った黒い流れ。


 巨大な繭のように、

 木々へ絡みついている。


 その中。

 子供達がいた。

 泣いている。

 震えている。


 そして。

 足元には、小さな結晶。

 淡く黒ずんでいる。


 綾乃あやのの顔色が変わった。

「……もう始まってる」


 らんが歯を食いしばる。

「クソが……!!」


 その瞬間。

 影が降りた。

 音もなく。

 木の上。

 黒衣。


 無月むつきだった。


「……早かったな」

 感情のない声。


 豪山ごうざんの目が変わる。

 空気が重く沈む。


「返せ」

 低い声だった。


 無月むつきは、

 静かに子供達を見る。


「まだ終わっていない」

「純度が足りない…」


 その言葉。

 豪山ごうざんの拳が軋む。


 らんが前へ出ようとする。


 蒼真そうまの声が落ちる。

「待て」


 黒い糸。

 檻。

 全部が繋がっている。


 下手に動けば、

 子供達へ流れる。


 げんも気づいていた。

「……駄目だ」

「感情へ反応してる」


 子供の一人が泣く。

「やだぁ……」


 その瞬間。

 黒い糸が脈打つ。

 結晶が、少し大きくなる。


 綾乃あやのが舌打ちした。

「恐怖を増幅してる……!」


 無月むつきが、静かに蒼真そうまを見る。


「断つ者か」


 一瞬。

 空気が揺れた。


 蒼真そうまが、刀へ手をかける。


「お前ら、何をする気だ」


 無月むつきは答えない。

 黒い結晶を見つめる。


「必要な流れだ」


 その瞬間。

 豪山ごうざんが踏み込んだ。

 地面が揺れる。


「ふざけるなァ!!」


 黒嵐。


 一撃。


 轟音。


 黒い糸が吹き飛ぶ。


 無月むつきの目が、初めてわずかに揺れた。


 らんが叫ぶ。


「蒼真!!」


 蒼真そうまが走る。


 げんが流れを読む。


 綾乃あやのが子供達へ向かう。


 黒い檻が、一斉に軋んだ。


 夜の山へ。


 子供達の泣き声が響いていた。



第六十四話 終

今回は、

 “感情そのものが武器になる”という、

 この世界の怖さを強く描いた回でした。


 恐怖が増幅され、

 結晶へ変わっていく。


 無月むつき達がやっている事は、

 単なる誘拐ではなく、

 “流れ”を利用した異常な儀式に近いものです。


 そして豪山ごうざん

 彼の怒りが、ついに爆発しました。


 次回、さらに激突していきます。


 よろしくお願いします。

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