第四十一話「残された側」
第四十一話から、
第四章が始まります。
戦いの後に残るもの。
“残された側”の物語です。
風が、静かに流れている。
山道を、四つの影が歩いていた。
蒼真。
嵐。
弦。
そして――
小さな子供。
足取りは、重い。
時折、ふらつく。
それでも、
止まらない。
嵐が、前を見たまま言う。
「……もう少しだ」
返事はない。
子供は、ずっと黙っていた。
村が見えた。
山の中。
古い集落。
大きくはない。
だが――
人の気配がある。
煙。
薪の匂い。
小さな話し声。
「……残ってたか」
嵐が小さく呟く。
完全に、消えてはいない。
蒼真は、その空気を見る。
“流れ”は乱れている。
傷ついている。
それでも――
繋がっている。
⸻
薪を割る音が響く。
重い音。
一定の間隔。
村の中央。
一人の男が立っていた。
大きい。
肩幅。
背中。
岩みたいな体。
手には、大きな薪。
男が、こちらを見る。
「……増えたか」
低い声。
子供が、わずかに蒼真の後ろへ隠れる。
だが――
村の子供達は違った。
「豪山ー!」
数人が走っていく。
男の服を掴む。
笑う。
豪山は、困ったみたいに小さく息を吐いた。
「走るな」
それだけ。
だが、追い払わない。
嵐の目が、わずかに細くなる。
「……あんたが面倒見てんのか」
豪山が頷く。
「残った奴らをな」
短い。
蒼真が、村を見る。
怪我人。
老人。
子供。
静かだ。
だが、諦めてはいない。
⸻
「……その子か」
豪山の視線が、後ろの子供へ向く。
子供が怯える。
豪山は、しゃがまない。
近づかない。
ただ、少しだけ視線を落とす。
「腹減ってるだろ」
その一言で。
子供の肩が、わずかに揺れた。
⸻
夜。
焚き火が、小さく燃えている。
子供達が、静かに飯を食べていた。
豪山が、大鍋を運ぶ。
重いはずなのに、音がしない。
「食え」
器を置く。
それだけ。
子供達は、何も言わずに頷いた。
嵐が、少し離れた場所で座っている。
その視線の先。
昼間の子供が、黙って飯を食べていた。
小さい手。
震えている。
嵐の拳が、わずかに握られる。
「……死んだ奴は戻らん」
声。
豪山だった。
いつの間にか、
隣に座っている。
嵐は答えない。
豪山が続ける。
「だが」
「残った奴は、生きる」
焚き火が揺れる。
嵐の視線が落ちる。
「……簡単に言うなよ」
低い声。
豪山は否定しない。
「簡単じゃない」
「だから残る」
沈黙。
風が吹く。
静かに。
蒼真は、
少し離れた場所で村を見ていた。
流れ。
傷ついている。
欠けている。
それでも――
消えていない。
「……残された側、か」
小さく呟く。
その言葉は、
夜の中へ静かに消えた。
第四十一話 終
繋ぐことも、
簡単ではありません。
それでも、
生き残った者達は前へ進きます。




