表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第三章 繋がる根

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/105

第三十九話「選ばない者」

第三十九話は、

“選ばない者”の話です。


進むこと。

留まること。


人は時に、

どちらも選べなくなることがあります。

 風が、止まる。

 さっきまでの揺れが、嘘みたいに消える。


 静かだ。

 軽くはない。


「……来る」

 蒼真そうまが言う。

 低く。


 その瞬間。


 “いた”。


 音はない。

 気配も、ほとんどない。


 最初からそこにいたように、白装束の男が立っている。


 白玖はく


 らんが舌打ちする。

「……またかよ」


 白玖は答えない。

 ただ――

 嵐を見る。

 その奥を見る。


「……揺れているな」

 小さく言う。


 嵐の眉が動く。

「は?」


「選びきれていない」


「断つか」


「繋ぐか」


 風が止まる。


 嵐が前に出る。

 一歩。


「……うるせぇ」

 低く言う。

「お前に関係ねぇ」


 白玖は動かない。

 ただ、見ている。


「関係はある」


「お前は、触れている」


 その言葉。

 空気が、わずかに歪む。


 蒼真の目が細くなる。

「……何をだ」


 白玖の視線が、落ちる。

 地面。

 さっきの“流れ”。


「繋がりだ」

「本来、触れるべきではないもの」


 嵐の顔が歪む。

「……だったらどうした」


「壊れる」

 即答。


「繋ぎ続ければ」


「いずれ、耐えきれずに」


 嵐の拳が、わずかに震える。


「……それを」


「見ただろう」


 その言葉。

 刺さる。

 深く。


「……チッ……!」

 嵐が踏み込む。

 拳。

 一直線。


 白玖は動かない。

 触れる直前。


 “ズレる”。


 嵐の拳が、空を切る。

「……くそっ!」


 白玖は、そのまま言う。

「それは“繋ぐ”ではない」


「ただの執着だ」


 空気が、落ちる。

 嵐が止まる。

 完全に。


「……違う」

 低く言う。

 絞り出すように。


「……あいつは」

「まだ残ってる」


 白玖の目が、わずかに動く。


「そうだな」

 あっさりと肯定する。


 嵐が顔を上げる。

「……は?」


「残っている」


「だが――」

 その先。


「それを繋ぎ直すことは」


「同じものにはならない」


 沈黙。

 風が止まる。

 嵐の呼吸が乱れる。


「……じゃあ」


 声が震える。


「どうすりゃいい」


 白玖は答えない。

 ただ、見る。


「選べ」

 それだけ。


 嵐の顔が歪む。

「……またそれかよ」

 低く吐き出す。


 白玖は動かない。


「断つのか」

「繋ぐのか」


「あるいは――」


 ほんのわずかに、視線が蒼真へ向く。


「別の道を探すのか」



 沈黙。

 その言葉が、

 静かに残る。

 風が戻る。


 白玖の姿が、わずかに揺れる。


 次の瞬間。

 消える。

 最初からいなかったように。


 静寂。

 嵐が立っている。

 動かない。

 拳が、わずかに震えている。


 蒼真が言う。

 小さく。


「……別の道」


「あるかもな」

 風が通る。

 だが――

 答えは、まだない。



第三十九話 終

選ばないという選択もまた、

一つの在り方です。


ですが——

止まり続けた時間は、静かに人を蝕んでいきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ