第二十四話「定める者」
第二十四話は、
“届くための一手”が加わる回です。
見えなかったものに、
初めて手がかかります。
——来る。
見えない。
だが、わかる。
空気が、歪む。
蒼真が動く。
遅い。
間に合わない。
その瞬間。
“止まる”。
一点だけ。
空間が。
「……は?」
嵐が目を見開く。
そこには何もない。
だが——
逃げない。
歪みが、固定されている。
次の瞬間。
一本の矢が、
“そこ”を貫く。
音は、遅れて届く。
蒼真の目が、細くなる。
「……見える」
一瞬。
確定する。
蒼真が踏み込む。
迷わない。
斬る。
触れる。
確かな手応え。
浅い。
それでも。
“届いた”。
空気が、揺れる。
嵐が振り向く。
「誰だ!」
そこに、
一人の男が立っていた。
弓を構えたまま。
動かない。
視線だけが、鋭い。
「……遅い」
低い声。
感情は、ない。
「今のはズレてる」
蒼真が問う。
「……お前は」
男は答えない。
ただ、
次の矢をつがえる。
「弦だ」
「動くな」
その瞬間。
空気が、また歪む。
来る。
見えない一撃。
今は違う。
弦が、撃つ。
矢が走る。
空間をなぞるように。
そして——
止まる。
“そこ”に。
「今だ」
蒼真が動く。
合わせる。
振る。
斬る。
今度は——
深い。
確かに。
“捉える”。
空気が、裂ける。
嵐が踏み込む。
「おらぁ!」
拳が入る。
確かな衝撃。
初めて。
“存在に当たる”。
しかし——
長くは続かない。
歪みが、崩れる。
固定が外れる。
気配が、消える。
静寂。
戻る。
嵐が息を吐く。
「……なんだよ今の」
弦は答えない。
ただ——
視線は外さない。
まだ、見ている。
「……まだいる」
小さく、言う。
蒼真が頷く。
「……ああ」
「だが、届く」
弦が、わずかに目を細める。
「遅いがな」
嵐が眉を寄せる。
「なんだお前、感じ悪いな」
弦は見ない。
「雑なだけだ」
「はぁ!?」
空気が少しだけ緩む。
すぐに戻る。
蒼真が口を開く。
「……協力してくれ」
弦は一瞬だけ沈黙する。
そして——
「必要ならな」
それだけ。
風が、わずかに揺れる。
もう逃げられない。
見えてしまった。
“奥”が。
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第二十四話 終
新たな存在、弦。
彼の矢が、
戦い方を変えていきます。
ここから、
本格的な対抗が始まります。




