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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第三章 繋がる根

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第二十二話「根を辿る」

第二十二話は、

“上位存在”との初接触です。


見えない。

届かない。


それでも、

確かに存在しています。


 地面が、わずかに軋む。


 踏み込むたびに——

 “下”へと流れている感覚がある。


 蒼真そうまは止まらない。


 視線は、足元ではない。

 その先。


 見えない“流れ”の奥。


「……本当に下か?」

 らんが言う。


「地面に穴でもあんのかよ」


「違う」


 蒼真そうまは短く答える。


「場所じゃない」



「“繋がり方”だ」


 らんが顔をしかめる。

「ますますわかんねぇよ」


 森は静かだ。


 違う。


 音が、吸われている。


 風も、


 足音も、


 すべてが“流されている”。


「……濃いな」

 らんが低く言う。


 蒼真そうまが止まる。


 その瞬間。


 空気が——

 歪む。


 遅れて、

 気配が落ちる。


 無月むつき


「……違う」

 蒼真そうまが呟く。


 らんも気づく。


「なんか……軽いな」


 目の前の無月むつきは、

 薄い。


 存在が、曖昧だ。


「……枝か」

 蒼真そうまが言う。


「本体じゃない」


 無月むつきが動く。


 遅い。

 今までより明らかに。


 蒼真が踏み込む。

 迷いはない。

 流れを見る。


 交差。


 振る。


 触れる。


 断つ。


 ——崩れる。


 無月むつきの身体が、

 そのまま霧のように消える。


 手応えは、ない。


 “中身がない”。


「……なんだよ今の」

 らんが呟く。


「薄すぎるだろ」


「……増えてるな」

 蒼真そうまが言う。


「は?」


「本体は一つじゃない」


「枝が広がってる」


 その瞬間。

 空気が、揺れる。


 今度は——

 一つじゃない。


 複数。

 同時に。

 気配が落ちる。


「……チッ、来やがったか!」

 らんが構える。


 無月むつき


 複数。


 どれも“薄い”。


「一気に行くぞ」

 蒼真そうまが言う。


 踏み込む。


 連続。


 流れを見る。


 斬る。


 断つ。


 崩れる。


 消える。


 だが——


 終わらない。


 次が来る。


 また来る。


「キリがねぇ……!」

 らんが叫ぶ。


 蒼真そうまは止まらない。


 違和感。


 “流れ”が。

 さっきとは違う。


「……ずれてる」


「誘導されてる」


「は?」


 その瞬間。

 空気が——

 変わる。


 さっきまでの“薄さ”が消える。


 重い。


 深い。


 濃い。


「……来るぞ」

 蒼真そうまの声が落ちる。


 気配が——

 “上”から落ちる。


 違う。

 今までと違う。


 無月むつきではない。

 形がない。


 だが——

 確かに“いる”。


 視線。


 圧。


 存在。


「……なんだ、これ」

 らんの声が低くなる。


 蒼真そうまは動かない。


 視線を上げる。

 何もない空間。


 “見られている”。


 はっきりと。

 認識されている。


 次の瞬間。

 空気が、裂ける。


 “何か”が、

 通った。


 音はない。


 蒼真そうまの頬が、

 わずかに切れる。


「……っ!」


 一拍遅れて、


 血が流れる。


 らんの目が見開かれる。


「おい、今の——!」


「……見えてない」


 蒼真そうまが低く言う。


 視線は外さない。


 次の瞬間。


 地面が、


 一直線に——

 裂ける。


 何もないはずの空間が、


 “削られる”。


「避けろ!」

 蒼真そうまが叫ぶ。


 らんが跳ぶ。


 直後。

 いた場所が、

 遅れて抉れる。


「なんだよそれ……!」

 らんの声が、低くなる。


 蒼真そうまは、理解する。


「……違う」


「“見えてない”んじゃない」


 さらに一歩。


 踏み込む。


 血が頬を伝う。


「“認識できてない”」


 空気が、震える。

 また来る。


 だが——


 場所がわからない。


 方向も。


 距離も。


 何もかもが、


 “外れている”。


「……これは」

 小さく、呟く。


無月むつきじゃない」


「その“上”だ」


 沈黙。


 森が、静まり返る。


 終わっていない。


 むしろ、


 始まったばかりだ。


「……根か」


 蒼真そうまが呟く。


 その瞬間。

 気配が、

 わずかに遠ざかる。


 引いた。

 

 試しただけだ。


 そう言うように。


 そして——

 消える。

 残るのは、


 削られた地面と、

 切り裂かれた空気。


 嵐が、息を吐く。


「……笑えねぇな」


 蒼真そうまは、答えない。


 ただ——


 視線は、

 その先へ。


 見えない“奥”へ。


 確かに、

 そこにある。


 “本体”。


 触れてはいけない何か。


 だが、

 行くしかない。



第二十二話 終

無月ではない“何か”が、

初めて直接干渉してきました。


次話では、

この存在との距離を詰めていきます。

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