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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第十九話「流れに触れる」

第十九話は、

“流れ”を再現しようとする回です。


一瞬だけ届く。


けれど、

それを留めることはまだできない。


ここから、戦い方が変わっていきます。


 「……断つな、かよ」

 嵐《らん》が、苛立ったように吐き捨てる。


「意味わかんねぇこと言いやがって」


 蒼真《そうま》は、答えない。


 視線は——


 “流れ”。


 さっき見たもの。

 糸ではない。

 その交差。

 揃う瞬間。


 わずかな“繋がり”。


「……あれを」

 小さく、呟く。


「もう一度、見る」


「見てどうすんだよ」


「再現する」


 嵐《らん》が顔をしかめる。


「無理だろ」


「ああ」

 即答。


「だから、ズラす」


「……は?」


 蒼真《そうま》が、一歩踏み出す。


 無月《むつき》が、立っている。


 変わらない。


 だが——


 その奥。


 “流れ”は、動いている。


「……来る」

 低く言う。


 その瞬間。


 無月《むつき》が、動く。


 速い。


 正確。


 一直線。


 蒼真《そうま》が動く。


 合わせる。


 完全に同じタイミング。


 同じ軌道。


 だが——


 振らない。


 わずかに、遅らせる。


 無月の腕が、通る。


 その直後。


 “流れ”が、交差する。


「……そこだ」


 振る。


 斜め。


 交差点。


 触れる。


 浅い。


 “引っかかる”。


 無月の動きが、


 わずかに鈍る。


「……効いてる」


 嵐《らん》が呟く。


 蒼真《そうま》が、息を吐く。


 もう一度。


 踏み込む。


 今度は、

 さらに遅らせる。


 流れを見る。


 揃う瞬間。


 わずかなズレ。


 そこに——

 合わせる。


 振る。


 深く。


 確かに。


 触れる。


 無月《むつき》の身体が、

 止まる。


 一瞬。


 完全に。


「……今だ!」

 嵐《らん、》が動く。


 拳を振る。


 直撃。


 初めて——


 “当たる”。


「入った……!」


 手応え。


 確かに。


 骨ではない。


 肉でもない。


 そこに存在するものを、


 確かに殴った。


 次の瞬間。


 空気が、軋む。


 糸が、


 揃う。


 再び。


 無月《むつき》の身体が、

 動く。


 元に戻る。


「チッ……!」

 嵐が距離を取る。


「今の、入っただろ!」


「ああ」


 蒼真《そうま》が答える。


「でも——」


「維持できない」


 無月《むつき》が、動く。


 変わらない。


 正確な動き。


 再び。


 同じ圧。


「……やっぱりか」

 蒼真《そうま》が呟く。


「一瞬だけだ」


 流れに触れる。


 留められない。


「……どうすんだよ」

 嵐《らん》が問う。


 蒼真《そうま》は、視線を落とさない。


「繋ぐ」


「は?」


「一回じゃ足りない」


「連続でやる」


 無月《むつき》が、踏み込む。


 蒼真《そうま》が動く。


 合わせる。


 遅らせる。


 見る。


 交差。


 振る。


 触れる。


 また——


 止まる。


 一瞬。


 嵐《らん》が動く。


 だが——


 すぐに戻る。


「くそっ……!」


 蒼真《そうま》が歯を食いしばる。


「……足りない」


 回数。


 精度。


 どちらも。


 まだ、足りない。


 無月が、立っている。

 変わらない。


 だが——


 “奥”は、動いている。


 繋がっている。


 まだ。

 切れていない。


「……もう一つある」


 蒼真が呟く。


 嵐が顔を上げる。


「何がだよ」


 蒼真は、答えない。


 ただ——


 “流れ”を見ている。


 さっきとは違う。


 さらに奥。


 もっと深いところで、


 何かが動いている。


「……あそこか」

 小さく、言う。


 まだ、届かない。

 距離がある。

 方法がない。


「……間に合うか」

 その言葉が、落ちる。


 答えは——


 まだない。


⸻


第十九話 終

初めて、

攻撃が“通る”瞬間がありました。


けれど、それはまだ一瞬だけ。


次話では、

その一瞬をどう繋げるかに踏み込みます。

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