■第百二十四話「押し寄せる流れ」
黒羽の流れが、久遠家へ――。
断ち切る蒼一郎。
還し続ける紡。
均衡は、静かに崩れ始めます。
第百二十四話「押し寄せる流れ」
よろしくお願いいたします。
久遠家の祠の中
蒼一郎の剣が舞う
一閃
また一閃
流れだけを見極め、
必要なものだけを断っていく。
紡は静かに還す
断つ
還す
二人の呼吸は、
言葉を交わすことなく重なっている。
その時
――ドクン
祠が大きく震える
流れが、変わった
「……!」
紡の瞳が開く
黒羽
今までとは比べものにならない膨大な流れが、一気に久遠家へ押し寄せてきた。
糸が激しく軋む
祠全体が悲鳴を上げるように震えた
蒼一郎は剣を止めない
一歩
踏み込む
流れへ身を預けるように舞い、
一筋
また一筋
美しい剣筋が、
押し寄せる流れを断っていく。
しかし
断っても
断っても
終わらない。
流れはなお、
祠へ押し寄せる。
蒼一郎は静かに目を細めた。
わずかに立つ位置を変える
流れの前へ
紡を背に庇うように。
断ち切れなかった流れが、
蒼一郎へ流れ込む。
悲しみ
苦しみ
悔しさ
無数の想い
蒼一郎は歯を食いしばる
それでも剣は止まらない
一閃
また一閃
紡は息を呑んだ
「……兄ちゃん?」
呼びかけても、
返事はない。
蒼一郎はただ静かに舞い続ける
紡へ届く流れを、
一つでも減らすために。
祠の中
二人だけの戦いは、
さらに激しさを増していく。
紡は蒼一郎の背中を見つめる。
「……兄ちゃん。」
返事はない。
それでも蒼一郎の剣は、
静かに舞い続けていた。
第百二十四話 終
第百二十四話をお読みいただき、ありがとうございました。
ここから過去編もいよいよ終盤です。
言葉を交わさず、それぞれの役目を果たす蒼一郎と紡。
二人の想いが、次話で大きく動き始めます。
次回もよろしくお願いいたします。




