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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
最終章

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第百二十五話「託す想い」

押し寄せる流れは、止まりません。


限界を迎える蒼一郎。

その背中を見つめた紡が、静かに一つの決意をします。


第百二十五話「託す想い」

よろしくお願いいたします。

 つむぎ蒼一郎そういちろうの背中を見つめていた。


 返事はない


 それでも剣は舞い続ける


 一閃


 また一閃


 流れだけを断ち続ける

 蒼一郎の呼吸が乱れ始めた。


 足が震える


 流れはなお、

 その身へ流れ込み続けていた。


「……兄ちゃん」


 小さく呼ぶが

 届かない。


 蒼一郎は振り返らない

 視線は前、押し寄せる流れだけを見据えていた。


 その姿を見て、紡はすべてを理解した。


 『兄は、自分を守っている』


 流れを、自分へ届かせないために

 その身を盾にしている。


「……。」


 紡は静かに目を閉じた。


 幼い頃、いつも前を歩いてくれた背中。


 転びそうになれば、手を差し伸べてくれた。


 泣けば、頭を撫でてくれた。


 守られてきた、兄にずっと。


 だから今度は…


 私の番


 静かに息を吸う

 閉じていた瞳を開く。


 その瞳に迷いはなかった。


 遠くに

 久遠くおんの笑顔が浮かぶ。


『待ってる』


 あの日交わした約束

 帰ってくる

 一緒に笑う

 そんな未来を夢見ていた。


「……ごめんね、凪」


 紡はそっと微笑んだ


 糸をさらに強く結ぶ


 押し寄せる流れ


 水無瀬


 岩代


 黒羽


 すべてを、自らへ受け入れる。


 還せなくてもいい

 今は

 止める

 それだけでいい。


 流れが変わる


 蒼一郎へ向かっていた奔流が、

 一斉に紡へ集まり始めた。


「……!」


 蒼一郎の瞳が、初めて揺れた。




第百二十五話 終

第百二十五話をお読みいただき、ありがとうございました。


ここから過去編は、いよいよ大きな転機を迎えます。


守るために託す者。

受け止めると決めた者。


それぞれの想いが、次話へと繋がっていきます。


次回もよろしくお願いいたします。

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