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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
最終章

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第百二十話「最後の守り」

いつもお読みいただきありがとうございます。


第百二十話「最後の守り」。


黒羽の祠、そして長年この地を守り続けてきた老人達。

それぞれが最後の役目を果たします。


よろしくお願いいたします。

 祠は、応えた。


 十蔵じゅうぞうの手が触れたその奥で、

 かすかな震えが返ってくる。


 『まだ、いける』


 そう告げるように


 次の瞬間…


 ピシ……


 小さな音が響いた


 一本の亀裂が、祠の表面を走る。


 続けて


 ピシッ


 ピシピシッ――


 無数の亀裂が、祠全体へ広がっていく。


 地が震えた


 山が唸る


 黒い流れが、祠の奥から溢れ出す。


 十蔵は一歩も退かなかった


 背後にいた老人達もまた、

 誰一人、逃げようとはしない。


「来たか」


 十蔵は静かに印を結ぶ


 それに続き、

 老人達もまた印を結んだ。


 黒羽くろはに伝わる最後の守り


 もう若い者達はいない


 逃げるべき者達は、

 すでに山を越え始めている。


 ならば、

 あとは自分達の役目


 黒い流れが、

 獣のように祠から溢れ出す。


 十蔵の足元が軋む


 老人達の肩が震える


 それでも、

 誰も手を下ろさない。


 祠もまた、

 崩れかけながら耐えていた。


 まるで最後まで、

 黒羽くろはを守ろうとするように。


 十蔵は小さく笑った


「……まだ頑張るか」


 老人の一人が笑う


「頑固なのは、お互い様じゃ」


 別の老人も肩を震わせる


「長い付き合いじゃからのう」


 十蔵は目を細めた。


「ああ」


 地鳴りが大きくなる


 祠の亀裂がさらに深く走る


 黒い流れが押し寄せ、

 白い光がその奥から滲み始めた。


 もう、限界を超えてる


 誰もが分かっていた


 それでも、

 誰も言わなかった。


 老人の一人が、ふっと笑う。


「終わったら、また皆で飲もうや」


 別の老人が笑う


「今度は祠も一緒にな」


「酒、残しとけよ」


 小さな笑いが漏れた


 十蔵もまた、

 静かに笑った。


「ああ」


 その笑顔のまま


 眩い光が、

 祠を包み込んだ。


 第百二十話 終

第百二十話をお読みいただき、ありがとうございました。


十蔵達が守り抜いたのは、黒羽という土地だけではなく、未来へ託す時間でした。

その想いは、次の世代へと繋がっていきます。


次回からは神代家、そして蒼一郎と紡の戦いへ。

十八年前の出来事が、いよいよ核心へ近づいていきます。


次回もよろしくお願いいたします。

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