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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
最終章

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第百十七話「白い閃光」

いつもお読みいただきありがとうございます。


第百十七話「白い閃光」。


黒羽へ向かう無月。

そして、その先で久遠と白玖が目にするものとは――。


よろしくお願いいたします。

 山道を、一人の影が駆けていた。


 無月むつき


 水無瀬みなせ家で起きた異変


 あの白い閃光


 胸騒ぎが消えない


 空を埋めるように飛んでいた黒羽のからす達が、一斉に騒ぎ始める


 カァッ――!


 カァァッ――!


 無月むつきは足を止めた


 烏達は岩代いわしろの方角を目指すように飛び続けている。


「……岩代」


 黒羽の烏は知らせを運ぶ


 人より早く


 風より早く


 無月は迷わず地を蹴り、岩代へ向かう。


 ◇


 山を越えようとした、その時


 岩代の方角

 全てが白く染まる。


 光ではない

 景色そのものが白へ塗り潰されていく。


「……っ!」


 次の瞬間

 大地が唸る

 山が揺れ

 木々が裂け


 衝撃が無月むつきを飲み込んだ。


 身体が宙へ浮く

 岩へ叩きつけられた。


「……ぐっ!」

 視界が霞む

 耳鳴り

 土煙


 ゆっくり顔を上げる


 空を見た


 先ほどまで飛んでいた烏達が――


 いない

 一羽も

 羽一枚残さず

 音もなく

 消えていた。


「……。」


 黒羽の伝令は途絶えた

 知らせる者は、もう自分しかいない。


 無月むつきは歯を食いしばり

 重い身体を起こした。


 そして、再び黒羽を目指して走り出した。


 ◇


 しかし身体は限界だった。


 一歩


 また一歩


 足がもつれる

 呼吸が乱れる

 視界が揺れる


 やがて


 無月むつきは静かに倒れ込んだ。


 ◇


 山道を進む二人の姿


 久遠くおん


 そして白玖はく


「……人だ。」


 白玖が足を止める


 黒い装束


黒羽くろはの者か?」


 二人は無月むつきを抱き起こす。


 意識はほとんどない

 唇だけが微かに動く


「……み……な……」


 久遠が耳を寄せる


「……いわ……」


 呼吸が震える


「……つ……」


 白玖が静かに問いかける。


「何を伝えたい?」


 無月は震える唇で、



「……つた……え……」


 そのまま意識を失った。


 久遠くおん白玖はくは顔を見合わせる


 水無瀬みなせ


 岩代いわしろ


 何かが起きている。


 その時


 遠く


 黒羽くろはの方角

 山の向こうを、

 白い閃光が静かに空を染めた。


 久遠くおんの表情が変わる。


 白玖はくも息を呑む。


 二人は言葉もなく、


 ただ、その光を見つめていた。


第百十七話 終

第百十七話をお読みいただき、ありがとうございました。


無月が命懸けで伝えようとした知らせ。

しかし、その想いを言葉にする前に黒羽でも異変が起こります。


次話から、いよいよ十八年前の悲劇の中心へ。

蒼一郎と紡、それぞれの役目が描かれていきます。


次回もよろしくお願いいたします。

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