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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第十一話「理を視る者」

※ここから“見え方”が変わります


第11話は、

戦いではなく“理”に触れる回です。


何が起きているのか——

その一端が見えてきます。


 空気は、重いままだった。

 風は戻っている。


 しかし、

 何かが残っている。


「……気持ち悪ぃな」


 嵐が肩を回す。


「さっきの、まだ残ってやがる」


「……ああ」

 蒼真も、目を細める。


 糸。


 薄く。


 確かに、

 消えきっていない。


 まだこの場に“痕”がある。


「消えてねぇのかよ……」


「完全には、断てていない」


 その時。

 風が、変わる。


 さっきまでとは違う。

 静かな——

 整った気配。


「……来るぞ」


「またかよ」

 嵐が構える。


  ——違う。


 音もなく、

 そこに“いた”。


 一人の男。


 白装束。

 無駄のない立ち姿。

 目は、静かに全てを見ている。


「……なるほど」

 低い声。


 蒼真を見る。


 嵐を見る。


 そして——


 周囲の“糸”を見る。


「これは……随分と広がっているな」


「……誰だお前」

 嵐が睨む。


「ただの通りすがりだ」

 感情の薄い声。


「嘘くせぇな」


 男は、答えない。


 静かに、

 一歩、前に出る。


 その瞬間。

 空気が、変わる。


 残っていた“糸”が、

 わずかに揺れる。


 男が、手をかざす。


 何も起きない。

 …ように見えた。


 次の瞬間。

 空気が、ほどけた。


 糸が、

 音もなく、

 消える。

 

 まるで、

 最初から存在しなかったかのように。


「……は?」

 嵐が目を見開く。


「断つのではない」

 男が言う。


「整えるだけだ」


 蒼真の視線が、わずかに鋭くなる。


「……何者だ」


 男は、少しだけ考える。


「そうだな」


「陰陽師、とでも言っておこう」


 沈黙。


 嵐が、小さく笑う。

「胡散臭ぇ」


 だが…

 目は、笑っていない。


 蒼真は、黙って男を見る。


 その視線に、

 男は、気づいている。


「……その刀」

 静かに言う。


 蒼真の手が、

 わずかに動く。


「どこで手に入れた」


 間。


「あなたには……関係ない」


 男は、否定しない。


「そうか」


 その目は、

 確信していた。


「妙な流れだ」


「断っているつもりか?」


 蒼真の目が、揺れる。


「……何が言いたい」


 男は、わずかに目を細める。


「いや」


「まだ早いな」


 それだけ言って、

 視線を外す。


 嵐が顔をしかめる。


「なんだよそれ」


「気にするな」

 男は、歩き出す。


「この先、もっと濃くなる」


「行くなら、覚悟しておけ」


 足音は、

 一つ。


 やがて、

 気配が消える。


 沈黙。


「……なんだあいつ」

 嵐が吐き捨てる。


 蒼真は、答えない。


 静かに、

 刀に触れる。


 ほんのわずかに——

 心に“ざらつき”が、残った。


 それは、

 消える気配がなかった。


第十一話 終


 


 


“断つ”以外の方法がある。


その事実が、

流れを大きく変えます。


次話では、

それでも止められない“異常”に踏み込みます。

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