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紡ぎの剣 〜見えない糸を断つ者〜  作者: つるぎまる
第二章 交わるもの

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第十話「広がる糸」

ここまでの流れが、

一度“整理される”回です。


断片だったものが、

少しだけ繋がります。


 空は、重かった。


 雲が低く垂れ込めている。

 風はない。


 だが——


 空気だけが、淀んでいた。

 息が、わずかに重い。


「……妙だな」


 嵐が呟く。

 周囲を見渡す。


「気配が多すぎる」


 蒼真も、足を止める。


 目を細める。


 見える。


 糸。


 細く、薄く。


 だが確かに、

 いくつも伸びている。


「……増えている」

 昨日までとは、明らかに違う。


「何がだ」


「絡人《らくと》だ」


 嵐が、舌打ちする。

「またあれかよ……」


「違う」

 蒼真が言う。


「数が、異常だ」


 風が、止まる。

 その瞬間。

 気配が、動いた。


 影。


 一つではない。

 二つでもない。


 森の奥。

 無数。


「……おい」

 嵐の声が、低くなる。


「冗談だろ」


 絡人《らくと》が、現れる。


 一体、二体。


 いや——


 十。


 さらに、

 その奥にも。

 終わりが見えない。


「……来るぞ」


「見りゃ分かる!!」

 嵐が叫ぶ。


 次の瞬間。

 動いた。


 群れ。

 一斉に。


 蒼真は、糸を見る。


 嵐は、前を見る。


 だが——

 今度は違う。

 数が、多すぎる。


「チッ……!」


 嵐が踏み込む。

 拳を振るう。


 一体を吹き飛ばす。


 だが——

 次が来る。

 その次も。


 蒼真が動く。

 糸を断つ。

 一体、倒れる。


 だが——

 減らない。


「キリがねぇぞ!!」


「分かっている」

 蒼真の声は、変わらない。


 その動きに、わずかな遅れ。


 声。

「守れなかった」


 頭の奥で、響く。


「……っ」


 刃が、鈍る。

 一瞬だけ、

 “踏み込みをためらった”。


 その一瞬。

 絡人《らくと》が、迫る。


「危ねぇ!!」

 嵐が割り込む。

 拳で弾く。


「今の何だよ!!」


「……問題ない」


「嘘つけ!!」


 さらに、押し寄せる。

 足場が崩れる。

 囲まれる。


「……下がるぞ」


「はぁ!?」


「ここでは、捌ききれない」


「逃げんのかよ!」


「違う」

 蒼真が言う。


「生き残る」


 一瞬。

 嵐が、言葉を失う。


 その間にも、

 絡人《らくと》は迫る。


「……チッ!!」

 嵐が舌打ちする。


「分かったよ!!」


 二人、同時に動く。

 走る。

 振り切る。

 糸が追う。


 ようやく、

 距離が開く。


 やがて

 気配が、遠のく。


 止まる。

 呼吸が荒い。


「……なんだよ今の」

 嵐が吐き捨てる。


「増えている」

 蒼真が言う。


「このままでは——」


 言葉を切る。


「広がる」


 沈黙。


 風が、戻る。


 だが、

 空気は、重いままだった。


「……デカくなってきたな」

 嵐が呟く。


「……ああ」

 蒼真は、空を見る。


 糸は、

 まだ続いている。


 どこかへ。


 それは——

 まだ見ぬ“中心”へ。

 

 何かが、

 すべてを束ねている。



第十話 終


▼続きはこちらから(次話)

そして——


ここから、

さらに大きな変化が入ります。


次話は、

空気が一変します。

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