第百四話「始まりの祠」
いつもお読みいただきありがとうございます。
失ったもの。
託されたもの。
それぞれの想いを胸に、
蒼真達は最後の目的地へ向かいます。
第百四話
「始まりの祠」
よろしくお願いいたします。
静寂が広がっていた。
先ほどまで荒れ狂っていた黒い流れは消えている。
砕けた結晶だけが地面へ散らばり、空洞には重い沈黙が残されていた。
蒼真は肩で息をする。
刀を握る手は震えていた。
だが、その視線だけは一点を見つめている。
「紬……」
返事はない。
蒼真は結晶の中心へ駆け寄った。
何もない
誰もいない
さっきまでそこにいたはずなのに。
「紬!」
叫ぶ
返事は返らない。
嵐も周囲を見回した。
「どこだ!?」
綾乃も顔を曇らせる。
「いない……?」
誰も理解できなかった。
その時、
「終わった」
白玖の声。
全員が振り向く。
白玖は静かに札を下ろした。
「流れは止まった」
「暴走は終わった」
篝も目を閉じる。
そして小さく息を吐いた。
「世界は保った」
重く張り詰めていた空気が僅かに緩む。
誰も口には出さない。
だが全員が理解していた。
終わったのだと
世界は救われたのだと。
白玖が蒼真を見る。
「神代蒼一郎は届かなかった」
蒼真が顔を上げる。
白玖の目は穏やかだった。
「お前は届いた」
「蒼真」
「よくやった」
蒼真は首を振る
「そんなことどうでもいい」
声が震えている。
「紬はどこだ」
誰も答えられない
沈黙が落ちる。
弦が目を閉じた。
篝もまた目を閉じる。
二人は何かを探るように動かない。
誰も邪魔をしない。
やがて
篝が目を開いた。
「あそこか……」
蒼真が振り返る。
「分かるのか!?」
篝は頷いた。
「紬は生きている」
全員が息を吐く。
篝は続ける。
「ここにはいない」
空気が再び張り詰めた。
白玖の表情が変わる。
「まさか……」
「始まりの祠」
蒼真が眉を寄せた
「始まりの祠?」
白玖は静かに頷く
「あそこは久遠家が代々守ってきた場所だ」
誰も言葉を発しない。
「紡が眠る場所」
「守り人の始まりの場所」
「全ての始まりだ」
嵐が拳を握る。
「久遠の所か」
「ああ」
白玖は遠くを見る。
「あの男が守り続けた場所だ」
蒼真は刀を握り締めた。
『久遠』
全ての始まり。
そして紬がいる場所。
「久遠……」
低い声が漏れる。
「紬を返してもらう」
弦が弓を背負う。
綾乃が札を握る。
嵐が拳を鳴らす。
篝が歩き出す。
白玖も静かに頷いた。
蒼真は仲間達を見る。
誰も迷っていない。
誰も立ち止まらない。
蒼真は前を向いた。
「行くぞ」
その一言に全員が頷く。
「迎えに行く」
遥か山の奥
誰も知らない場所。
始まりの祠。
その場所で
久遠と
紬が待っている。
第四章 完
第百四話でした。
第四章、ここで完結です。
振り返れば、
蒼真達もずいぶん遠くまで来ました。
仲間と出会い、
失い、
支えられ、
託されて。
その旅の先にあるものが何なのか。
次章では、
いよいよ物語の核心へ踏み込んでいきます。
第五章もよろしくお願いいたします。




