第百一話「届くまで」
いつもお読みいただきありがとうございます。
手を伸ばしても、
すぐには届かないものがあります。
それでも諦めずに進むからこそ、
辿り着ける場所があるのかもしれません。
第百一話
「届くまで」
よろしくお願いいたします。
轟音が響く。
黒水晶が崩れ落ちる。
天井が砕ける。
地面が揺れる。
それでも、
豪山は走っていた。
「待ってろ!」
誰に向けた言葉か。
自分でも分からない。
ただ、
足を止める理由だけはなかった。
血の味がする。
息が苦しい。
視界も揺れる。
まだ聞こえる。
「たすけて……」
小さな泣き声。
助けを求める声。
豪山は歯を食いしばる。
崩落する黒水晶を拳で弾き飛ばした。
道を作る、前へ。
さらに前へ。
一方、
嵐は立ち尽くしていた。
腕の中には子供。
周囲にも救い出された子供達。
泣いている。
震えている。
助けを待っている。
「くそっ……!」
拳を握る。
行きたい。
追い掛けたい。
豪山を一人にしたくない。
子供達を置いてはいけない。
豪山が託した。
だから、ここを離れられない。
「くそぉぉぉ!!」
嵐の叫びが崩落音へ消えた。
豪山は進む。
奥へ。
さらに奥へ。
そして、見つけた。
黒水晶の中。
小さな子供。
まだ生きている。
涙で顔を濡らしながら。
必死にこちらを見ていた。
「いた……」
豪山が笑う。
安心したように…
本当に安心したように。
「もう大丈夫だ」
子供の瞳から涙が溢れる。
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴゴ……!!
巨大な亀裂。
天井が割れる。
黒水晶宮全体が悲鳴を上げる。
限界だった。
豪山は迷わない。
黒嵐を振るう。
轟音。
結晶が砕け散る。
子供を抱き上げる。
「行くぞ!」
走る。
出口へ。
崩落の中を。
「ごほっ……!!」
大量の血。
膝が落ちる。
視界が揺れる。
子供が泣く。
「おじちゃん……!」
豪山は笑った。
「大丈夫だ」
全然大丈夫じゃない。
それでも…
立つ。
守るために。
その時。
「豪山ーーー!!」
嵐だった。
豪山が目を見開く。
「馬鹿野郎!!」
嵐が走って来る。
「何で来た!!」
「うるせぇ!!」
嵐の目には涙。
「置いて行くな!!」
轟音。
崩落。
迫る黒水晶。
豪山と嵐。
そして子供。
出口はまだ遠い。
崩壊は止まらない。
二人は前を向いた。
第百一話 終
第百一話でした。
助けを待つ人がいる。
だから進む。
それは難しい理屈ではなく、
誰かを見捨てたくないという想いなのだと思います。
届くまで。
その一歩を止めない者達の物語です。
次回もよろしくお願いいたします。




