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AIに意識を移植されたのでちょっと異世界行ってきます  作者: 鉛風船
三章 貴族社会のあれやこれ
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入団試験

「それで? ギルドに入団を希望しているんだってな?」


 俺たちは酒場の奥にある応接室に通された。国営なだけあって最低限の節度はあるようだ。外観とは裏腹にすこしばかり値の張るお茶が目の前に並べられ、俺たちが座っている三人掛けのソファも悪くない座り心地である。


「ああ、まさか駄目とは言わないよな?」


「当たり前だ。ネモの実力はよく知っている。だが、お前さんが連れている三人は……」


「この三人のことなら心配しなくていいぞ。多分あんたと同じくらい強い」


「おいおい、本当か? 三人とも俺の娘よりも小さいじゃねえか」


「……」


「確かに女でもギルドに所属している変わり種はいるが、俺たちに劣らず筋力はついている、が……」


 この筋肉達磨に娘がいたとは……ここ何日かで一番の驚きである。もしやすると、父親よろしくムキムキなのだろうか?


「おい、今失礼なことを考えただろう」


「いや、そんなことはない」


「……まあいい。兎に角、ネモはまだしもこの三人に実力があるとはとても思えない――とはいえ、ネモが言うのなら、それなりに腕に覚えはあるのだろうな。その体格で俺と張り合えるとなると……嬢ちゃんたちの中に付与魔法の使い手がいるのか……?」


「まあ、そういうことだ」


 いるはずがない。いるのは破壊魔法のみである。しかし、俺のナノマシンは体表を覆えば筋力を底上げしてくれるバトルスーツのように使うことも出来る。更に、硬質化によりある程度の防護も可能だ。

 それと似たようなことを付与魔法は出来る。硬質化の魔法陣と怪力の魔法陣を重ね掛ければいい。まあ、両方必要なのはエリシャだけなので、細かい箇所は適当に辻褄を合わせればいい。

 ガドは暫く考え込んでいたようだったが、目を瞑って何度か頷くと組んでいた腕をほどいた。


「わかったそういう話なら確かめてみるのが一番手っ取り早い。後ろの訓練棟で入団試験でもしてみるか」


「だそうだ。いいな?」


「そうね。じゃあ早く行くわよ」


「わ、私に、で、出来るでしょうか……?」


「うなー、楽しみだな! 僕頑張っちゃうもんね!」


「決まりだな。訓練所はこっちだ、ついてこい」


 ガドは立ち上がると、手招きをした。

 俺たちは幾つかの部屋を通り過ぎ、ギルドの裏手へ出た。裏手は広場となっており、そこには対ダンジョン戦を模した幾つもの訓練設備があった。

 塹壕や蛸壺を張り巡らせた簡易的なフィールド……その隣には馬防柵が……決闘用のステージらしきものまであある。

 いやにちぐはぐだ。俺はなんとも言えないモヤモヤとした気持ちに陥った。

 しかし、よく考えてみるとそれもよくわかる。ダンジョンは過去三回に渡って出現している。第一回は四百年前、二回目は二百年前、そして三回目はつい四年前……。

 そして、それらのダンジョンは出現した時期によって区分けされている。一回目は地球で言えば、およそ西暦千五百年程度の文化レベルの技術が……二回目は魔術という謎の要素があるものの西暦千九百年程度の文化レベルの技術が……そして三回目は俺の存在を考えると、西暦二千五百年程度の文化レベルの技術がダンジョンに眠っている。

 故に、訓練施設がちぐはぐになる。

 俺は、魔術師がガチムチばかりな理由を垣間見た気がした。彼らも本当のところは役割分担をしたいというのが本音だろう。

 歩兵が前線に立ち、弓兵は後方支援をするという戦場の定石は、俺が暮らしていた西暦二千五百年頃も形こそ変われども、本質は変わらない。

 だが、それは技術の進歩がきちんと一本の線の形を執ってきたからである。この世界の様に今昔入り交じる戦場では勝手が違う。全員が前衛であり、弓兵であり、援護兵であり、工作兵であるのだ。

 これら一連の流れとして、ダンジョンでの戦闘というものは定石と明確に呼べるものはない。一応、戦闘になったら広いところへ移動する、という決まりという名の経験則があるものの、不規則なダンジョン戦闘はそれが裏目へ出ることもある。

 俺は予め入手していたダンジョンへの知識と一見した印象を照らし合わせて、その修正を行った。その結果、概ね俺の予想と違わなかった。


「ガド、ここにある設備だけですべてのダンジョンは網羅できるのか?」


「いや、無理だ。精々六割もカバー出来れば御の字だろう」


「それは第三次ダンジョン群も入れての計算か?」


「残念だが入っていない。入れたらどれだけ下がるか分からんから計算していない。がははは」


 などとガドは豪快に笑っているが、半分は本音だろう。正直に言ってしまえば、第三次ダンジョン群へ彼らが行けば全滅必須である。

 何よりも、俺が目覚めたダンジョンを攻略しようとした軍の連中が一番よくわかっているはずだ。

 んん? 待てよ? 軍があのダンジョンを攻略することに失敗しているのだから、国営になったギルドにもそれを踏まえて対策させているはずでは……?

 俺は周りを見渡してもそれらしき設備は見えない。あるのは第二次ダンジョン群までの設備である。

 ははあ、軍の連中は攻略の結果を隠蔽しているのか。エリシャが仲間殺しを行ったことをスケープゴートに自分達の失敗を隠匿……と。中々上手くいっているらしい。

 俺がそんなことを考えていると、いつの間にか目的地に着いていた。凡そ三十メートル四方の闘技場である。


「取り敢えず、まずは戦闘センスを見させてもらう。ダンジョン攻略ではこれが一番大事だからな」


「結構広いわね」


「ここで試験……ですか。……緊張しますね」


「うなー!」


「どうやって見るつもりだ?」


 俺が聞くと、ガドは親指を立ててニヤリと笑った。


「無論、一対一の模擬戦だ」


「結局それか……」


 やはり筋肉達磨は筋肉達磨だった。


「なんだよ、一番手っ取り早いだろうが」


「まあな」


 無論、こうなることは折り込み済みだ。初対面の相手に町中で堂々と決闘を申し込むような奴だぞ? すぐにわかる。

 俺は三人に目配せをした。

 ギルドに入団するにあたって、俺たちは役割を決めている。本当ならば全員破壊属性の魔術師、という風にしてしまいたかったのだが、キキョウとカエデの身体能力的にそれは厳しいという結論になり、結局俺が付与属性、エリシャにキキョウ、カエデの三人をまとめて破壊属性の魔術師という役割にしている。

 何故キキョウとカエデの役割を破壊属性の魔術師にしたかと言うと、魔法が使える俺は札などなくともいいわけで、魔術の使えないキキョウとカエデへのサポートにはもってこいなのである。

 しかし、それだけでは足りない。キキョウとカエデの身体能力の高さの言い訳をしなくてはならない。

 魔術でこのような身体能力を発揮できるのは付与属性の魔術師だけなので、実は俺は付与属性の魔術師でした、という設定を無理矢理くっつけたのだ。

 バレるだろうって? 欺いてなんぼの魔術師なのだから問題ないのだ。

 ガドが三人を一人一人見て、


「最初にやりたい奴はいるか?」


 と言った。

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