第5話 クラスメイト
今、俺はいつもの待ち合わせ場所で恒哉を待っていた。
てか昨日は色々ありすぎて頭が処理しきれなくて…なんかメッチャ寝れちゃったよ。なんなら目覚めもスッキリ!
あれか?これヨガの効果か?ヨガすげー!
「おはよ。」
「おう!」
恒哉が俺の爽やかな返事に少し驚いたような顔をしている。
「意外と大丈夫そうだな?」
「ああ、なんかヨガの効果か頭も体もなんか軽い。」
「…そうか。」
2人で歩き出す。
学校まで15分ぐらいだ。
恒哉が口を開く。
「で、なんだっけ?鬼頭先輩がおばさんの親友の娘だっけ…それでその上で初恋相手が勝おじさんと…」
「そーなんだよ!それに木村先輩や東内先輩、同じクラスの山内さんと小学生の頃から同じクラブでミニバスやっててさ、しかも木村先輩と東内先輩は付き合ってるんだぜ!」
「……は?」
学校まであと少しのところで恒哉がなんかフリーズした。
「どした?」
「いや、今の情報は初耳だ。」
「えっ?昨日メッセージ送ったじゃん。」
恒哉何スマホを制服のズボンのポケットからスマホを取り出しその画面を俺に見せながら言った。
「昨日お前から報告を受けたのは鬼頭先輩とのことだけだぞ。」
恒哉のスマホを覗き込むと…本当に鬼頭先輩のことしか送ってなかった…
俺は無言で恒哉の顔に目を向ける。
今まで見たことのないニヤけ顔だ。
「…なんだよその顔!」
「いやぁ、凌平君もそういう年頃になったなぁって。」
「そういうんじゃない!」
それはない!絶対にない!
そう自分に言い聞かせる。
そのまま恒哉に茶化されつつ校門をくぐり昇降口でスリッパに履き替えて目の前の階段を上がるとすぐに俺たち1-Cの教室だ。
前の扉から教室に入ると…
1人の女子が俺の正面に歩いてきた。
昨日ヨガを一緒にした山内さんだ。
「…」
無言でこれの前に立った山内さんは…
パシッ!
いきなり俺の左脚にとても綺麗なカーフキックを入れてきた。
多分、かなり軽くなんだろうけど…それ当たりどころが完璧だから痛いのよ。
「痛っ!」
思わずかがみ込んで蹴られた所を手で押さえてしまった。
「おい加藤、ちょっと面貸しな。」
えっ、山内さんってそんなキャラなの?
「ねえ山内さん、どういうつもり?山内さんもバスケ部だよね?脚の怪我がどれだけ深刻かわかってるよね。」
俺が戸惑ってると隣にいた恒哉が一歩前に出て山内さんを見下ろしながら真顔で淡々と語りかけてる。
恒哉…気をかけてくれるのは嬉しいけど女子にその態度は…山内さんちょっと怯えてるぞ。
「大丈夫だから!いきなりで驚いただけだから!山内さんもなんか話があるの?ちゃんと聞くよ!」
恒哉は怪我に関しては色々あって敏感だしな…
俺はすぐに立ち上がり山内さんに場所を移そうと目で訴えると気づいた山内さんも
「う、うん。ついて来てよ。」
と言って教室を出て行った。
「恒哉、俺は平気だから。間入ってくれてありがとな。」
「ああ、俺もちょっと良くない態度だったな…戻って来たらそれは山内さんに謝るよ。」
よかった。いつもの恒哉だ。
「じゃあちょっと行ってくるわ。」
「ああ。」
俺は教室を出て山内さんについて廊下を歩いた。
少し歩いてこの時間あまり使われてない階段を降りて踊り場で山内さんは立ち止まった。
「加藤…まずはさっき蹴ったことは謝る。ごめん。」
申し訳なさそうな顔で謝ってくれた。
昨日からやけに攻撃的な表情しか見てないからちょっと意外に感じてしまう。
「ほんと、全然大丈夫!流石に山内さんみたいなちっちゃい女子に蹴られたぐらいじゃ怪我なんてしないから。恒哉の言ったことならそんな気にしないで。」
言ってすぐに自分がいかにノンデリなこと言ったのか自覚する。
山内さんが昨日のヨガ中に見せてたあの攻撃的な表情にすぐに切り替わったからだ。
「は?ちっちゃくないし!ちゃんと平均身長です!加藤こそチビのくせに!」
「俺だって平均身長はあるぞ!」
俺だってわかってる。背が低いと自覚してなければ平均身長なんて気にしないことを…
「チッ…とりあえず加藤、シズちゃん…鬼頭先輩にちょっかいかけてるんじゃねーよ!」
「は?」
急に何を言い出すんだこの子は?
「だって加藤、どう見ても女子に免疫なさそうじゃん。それなのにいきなりシズちゃんみたいな美人とバスケとはいえ近距離で向き合っちゃったから勘違いしてんでしょ?だから昨日も強引にヨガまでついて来たんじゃないの?」
…どうやらとんでもない誤解をされているらしい。
「えっとですね…」
俺は山内さんに俺の母さんと鬼頭先輩のお母さん、真佐子おばさんが高校からの親友だったこと、そもそも昨日は先輩の方から誘われたこと…そして鬼頭先輩が俺の父さん、加藤勝に初恋してると聞いことを話した。
「うーん…まあ、納得できる理由ではあるか。
シズちゃんって男子との距離感近すぎることよくあるし…
それにしてもあんたがあの加藤勝選手の息子ねぇ…」
山内さんは一応は理解してくれたらしい。
「あのさ、あんまり俺が父さんの子供だって言わないで欲しいんだよね。」
「何で?」
「いや、中学の時にそれでちょっと色々あってさ。」
「そうね。あんたみたいな下手くそが息子なんて加藤勝の経歴に傷がつきかねないもんね。」
山内さんもかなりノンデリのようだ。
俺は半ば諦めて
「うん。もうそれでいいよ。」
とため息混じりにそう答えた。
「じゃあ、あらためて…ごめんね。勝手な勘違いで蹴っちゃって!」
「それは本当にいいよ。そのかわり父さんのことだけはマジのお願い。」
俺は両手を合わせて頭を下げた。
「了解…交換条件ってやつね。じゃあクラスメイトとして、バスケ部同士としてこれからよろしくね。」
そう言って山内さんは右手を前に出してきた。
俺はその手をちょっと恥ずかしいけど握って握手した。
「こちらこそよろしく。山内さん。」
「あたしのことはちーって呼んでくれていいよ。かわりにあたしもりょーへって呼ぶね。」
鬼頭先輩に勝る劣らずに山内さんも距離感おかしいって!
俺は思わず俯いてしまう。
「何、照れてんの?ムフフ…りょーへはウブいのぉ。」
「だってさ…」
「まあいいや。ゆっくりでいいから慣れっていってよね。じゃ、そろそろホームルーム始まっちゃうから戻ろっか、りょーへ」
山内さん…ちーはそうやってすごくいい笑顔で言った。




