第4話 初恋
家に着いたけど…本当にこの先輩ついて来ちゃったよ。
「早く入りなよ。」
俺が玄関で躊躇してるとこんなこと言ってくる…てかなんでこの先輩こんなに目を輝かせてるの?
「…ただいま。」
意を決してドアを開けると…
「あら、おかえり。」
母さん、なんで今日に限ってタイミングよくそこにいるの?
母さんの視線がすぐに俺からその後方にいる鬼頭先輩に移動しているのがわかる。
「あら?あらあらあら!」
「母さん!違うよ!母さんが思ってるような関係じゃ…」
俺は慌てて母さんの誤解を解こうとしたけど…
「は?そんな勘違いするわけ無いでしょ。あんたみたいなイモガキとこんなかわいい子とか。そんな甲斐性あるわけないもの。」
母さん、息子をそんなふうに…しかもゴミを見るような目で言わないでくれ。
「ねぇ、静香ちゃん。」
「ご無沙汰してます、有紀さん。」
はへ?何?二人とも知り合いなの?
俺が一人事態を把握できずにいると母さんが語りだす。
「あんた、覚えてないの?母さんの親友、まーちゃんのところの静香ちゃんでしょ!全くお前は。」
「まーちゃんって真佐子おばさん?ええ!?」
真佐子おばさんはよくうちに遊びに来るからわかる。でもその子どもなんて最後に会ったのは多分5歳ぐらいの時でうっすらとしか覚えてないよ!
それがまさか鬼頭先輩だなんてわかるわけない。てか真佐子おばさんの名字も知らなかったし。
「まあまあ、有紀さん。あたしもこのお家に着くまで加藤くんがあのりょーへーくんなんて気づいてなかったので。」
フォローしてくれてる。コート外だと優しいな…
「そりゃそうよ。静香ちゃんみたいな美人でかわいい子がこんなモブ顔小僧なんて覚えてるわけないわよね。」
そして今日の母さんはひどすぎるよ。
「で、なんで静香ちゃんと一緒に帰ってきたの?」
「そうだった!今から先輩とヨガ行くことになったから、着替えってある?」
「あんたの部屋のクローゼットに練習着入れてあるからそれで行けば?」
「ありがと」
俺は2階の自分の部屋に向かおうと靴を脱いで階段へ向かう。
母さんと先輩はそのまま玄関で話してる。
「あの…今日、勝さんは…」
「ああ、ごめんねぇ。今はほら、千葉だから」
なんだろう?父さんの話かな?
着替えて玄関に戻る。
「あっ、戻ってきた。じゃあ行こう。」
先輩が笑顔で言ってくれる。
「二人とも気をつけてね。」
そう母さんに送り出され二人でヨガ教室に向かう…と言っても大通りの方に3分ぐらいしかかからないけど。
「先輩が真佐子おばさんの子どもなんて全然気づきませんでした。」
「私もだよ。あの小さかったりょーへーくんが…今でも大きくはないけど。」
「ぐっ…これでも平均的な身長ですよ!」
なんて会話をしてたらすぐについてしまう。
てか恒哉の言う通りなら学校でも人気の女子の先輩と二人でって結構すごいことなのでは?今になって緊張してきたな。
「あれ、加藤?なんでシズと一緒なんだ?」
「シズ〜、あんたいつの間にそんな肉食系に?年下好きだったんか?」
「……」
なぜかスタジオ内には木村先輩と確か女バスのマリって呼ばれてた先輩…それに確か同じクラスの女子一人の知った顔3人がいた。
「マリ!違うって!ここに来る途中で偶然会っただけだから!りょ…加藤くんもせっかくだからヨガやってみればって誘ってみたの。」
先輩が何やらこっちを見て必死に話を合わせろといわん表情で訴えてきてるが…いや、事実通りなんですけど…多分この先輩、茶化されてるのもちょっと楽しんでるんだな。
「木村くんもマリもちーちゃんもミニバスの頃から一緒にやっててね。その時のコーチにヨガがいいって教えられてみんなでここに通い始めたの。」
そう鬼頭先輩が教えてくれる。
「まあ、そのコーチの親族が経営してるんだけどな、このヨガスタジオ。まんまと金蔓にされたわけだ。」
木村先輩がボヤく。
「そう言うなって匠海。なんだかんだで実際に体にもいいわけだし…加藤くんだっけ?あたしは東内麻里よろしくね。」
東内先輩か…なんとなく親しみやすそうだな…それにしても鬼頭先輩と違って…なんというか胸部装甲がしっかりしてらっしゃる。
「こらこら、シズより大きいからってそんなに凝視しちゃ…ダ・メ♡だぞ。」
ヤベ…バレた!
慌てて俺はちーちゃんと呼ばれてたクラスメイトの…確か山内千亜希さんだっけ?の方に目を向ける。
「……ふんっ!」
なんかそっぽ向かれたですけど…
そんなやり取りをしてたらインストラクターの女の人がスタジオに入ってきてそのまま約50分、思ってたよりかなりしっかりとヨガすることになった。
レッスン終了後、俺以外の4人は着替えのためにそれぞれ男女の更衣室へ。
俺は家で着替えてきたし家まですぐだから着替えなんて持ってきてない。
なので階段を降りてヨガ教室の下にある本屋の前で4人を待った。
「おーい、りょーちん。お待たせ!」
東内先輩が明るく声をかけてくれるけど…りょーちんって
「マリは相変わらず距離の詰め方がシズ以上だな。」
「何?匠海ってばヤキモチかな〜?」
「ちげーよ!」
木村先輩と東内先輩、仲いいな。
「みんな、あたし、自転車を加藤くんのお家に停めてきたから取りに行くね。先に帰ってて。」
鬼頭先輩がそう言うと3人はそれぞれ。
「おう。」
「りょ!」
「……チッ!」
と返して…って!山内さん?思い切り舌打ちしませんでした!?俺なんかしたのかな?
3人と別れ俺は鬼頭先輩と並んで歩いた。
「結構みんな繋がってるんですね。」
「そだね。特に女バスはあたしたちの代からはちょっと理由があってミニバス時代から一緒にやってる子が多いんだよね。」
「へぇ〜。じゃあ男バスの方の木村先輩たちもそんな感じなんすか?」
「ううん。木村くんだけだよ。そうそう木村くんとマリの2人ね、付き合ってるから。」
そうなの!?
「意外…いやお似合いなのか?」
「このことは美和先輩…うちのキャプテンの三浦先輩には秘密ね。あの人ってば木村くんガチ恋勢だから。」
まあ、木村先輩って親しみやすいイケメンだもんな…
「…了解っす!てか鬼頭先輩ってバスケ以外のそういう恋愛的なことも話すんすね。」
「そりゃあたしだってお年頃ですからね。」
なんでドヤ顔してるんだ?
「先輩はそういう誰か好きとかは無いんですか?」
軽くそんなこと聞いたら先輩は立ち止まって俯いてしまった。なんかやらかしてしまったか俺?
「うん…好きな人いるよ。」
立ち止まった先輩が顔を上げて俺の目をしっかりと見つめてそんなこと言うから緊張感がマックスだ。
無言で聞いているしかできない。
「あたしの初恋でバスケを始めるきっかけになった人…」
先輩は目をうるませて肩にかかるぐらいの横髪を指でいじりながら話し始める。
「10年ぐらい前にね、Bリーグがはじまったでしょ。その開幕戦にお母さんと有紀さんに連れられ観に行ってね…」
「あっ…それって俺も行った…」
「うん。りょーへーくんもいたよね…その試合でさBリーグ初のトリプルダブルを達成した人に憧れてバスケ始めたの。」
え?Bリーグ初のトリプルダブル?
ちょっと待ってくれ!それって…
「せ、先輩?それって…」
「うん。加藤勝選手。君のお父さんだよ。」




