第3話 帰り道
「わかりやすくヘコんでんな。」
俺は今、青稜バスケ部での練習初日を終えて恒哉と並んで帰っているところだった。
「そりゃあんだけ何にもさせてもらえなかったらさ…」
結局あの後、俺は2ゲームで鬼頭先輩とマッチアップした…結果は次のゲームでも全く何もさせてもらえず3ゲーム目は木村先輩がボール運びを変わってくれたけど俺はボールにはほとんど触れずで終わってしまった。
それにしても…
「てかさ、鬼頭先輩ってめっちゃかわいいくせになんであんなにドSなんだよ!2ゲーム目なんて俺に対して全部トラップディフェンスからのダブルチームだぞ!最後には一緒にダブルチーム仕掛けてる三浦先輩すらドン引きしてたぞ。」
俺は溜まりに溜まったものを思い切り大声で吐き出す。
「まあ、その容赦のなさがU17日本代表なんだろ。」
恒哉め、涼しい顔して言ってくれるな。
「そういう恒哉だって何もしてないだろ。」
「そりゃボールの出処のお前がその前にターンオーバーばっかだったからな。」
くそっ!相変わらずレスバの強い奴だ。
「まあ、初日なんだし、そう落ち込むなよ。…じゃあ、また明日な。」
「ああ」
俺は恒哉と別れてポケットからスマホを取り出す。
メッセージが一件。
開いてみると母さんからだった。
「部活どうだった?どうせ見学だけじゃなくて参加したんでしょ。汗臭いの洗濯しちゃうから帰ったらすぐ出してね…ふぅん。いいお母さんだね。」
スマホに映し出されたメッセージを顔のすぐ横で読み上げる声。
声がした右側に顔を向けるとそこには俺をここまで凹ませた張本人が至近距離で俺のスマホを覗き込んでいた。
「は?えっ!鬼頭…先輩!?」
「やあやあ、加藤…くんでいいよね?お疲れお疲れ♪」
なんか部活の時ってかコートの中と雰囲気違うな。
「お疲れさまっす…何してるんすか?」
「うんとね、自転車で爆走してたら哀愁漂わせて佇む後輩の背中を見つけたから忍び寄ってみた。」
「本当に何してんすか?」
「いやー、私にコテンパンにされて落ち込んじゃってるのかなって」
…図星ではある。
「そんな気にしてくれるんならちょっとは手加減してくれても…」
「なんで?手加減なんて失礼でしょ。…それに」
「それに?」
「最初に徹底的にやって苦手意識植え付けとかないとね。ニシシシ。」
この人、マジでこえーよ。
「てか先輩の家ってこっちなんすか?」
「ううん。学校挟んで思い切り反対方向だよ。今日は週一のヨガ教室行くところ。」
「ヨガっすか?…もしかしてあの本屋の2階のところにある?」
「そうそう。知ってるんだ!」
「まあ、近所ですからね。」
鬼頭先輩がそれを聞いて唇の下に人差し指を当て顔を斜めに傾げて何やら考えているような仕草をしている…てかそのポーズはちょっと反則級にかわいいんでやめて欲しい。
「ねぇ、加藤くんもヨガやろうよ!」
急に何言い出すんだこの人は!?
俺がヨガ?
「なんでまたいきなりヨガなんすか?」
「うん。加藤くんって体硬い方でしょ。それにさっきの練習終わりのストレッチもいい加減だったし…それであのジャンプ力だもん。体の可動域を大きくすればダンクとかできちゃうかも…と思ってね。だからヨガ!」
「はあ…」
「信じてないな!ヨガはバスケのアフターケアにいいんだよ。」
さすがは日本代表だけあってバスケ中心に考えてんだな…そういうのは凄いや。
「わかりましたよ!ヨガやります。一応俺も着替えたいんで家に一度帰ってからでもいいですか?」
「もちろん!じゃあヨガの先生に体験希望を1人連れてくって連絡しとくね。」
はやっ!スマホのフリック入力はや!この辺は女子高生か…
「オッケー。じゃあ、加藤くんのお家に行っちゃおう!」
「もしかして先輩…家まで付いてくる気で?」
「当然!逃がさないよ。」
ど、どないしよ…




