第11話 禁止
第11話 禁止
「あらあら朝早くから2人で密会ですかな?」
俺と先輩がグータッチしたタイミングでそんなことを言いながら体育館に入ってきたのは…まあ当然といえば当然な東内先輩だ。
さすがにこの人のノリにも慣れてきたよ。
「おはよー、そうそう。2人だけの秘密だよ!」
ってこっちの先輩もナチュラルに対応できる人だったわ。
てか東内先輩が来たってことは…
「そろそろ女バスの朝練ですよね?…まだ教室行っても誰もいないだろうし、どうしようかな?」
そう、流石に女子の練習に参加するのはね…
「りょーちん、それなら外コートに1人孤独に練習してる男バス部員がいるからそやつに付き合ってはくれんか?」
東内先輩がそういうってことは…
「木村先輩も朝から練習してるんすね。流石だなぁ。」
「あはは、違う違う。ほら、匠海とあたしって部活終わりは美和先輩のこともあるからあんま一緒に帰ったりしずらいからさ。だったら朝は一緒に少し早く登校しようってあいつが言い出してね。かわいいとこあるよね。」
めっちゃ惚気聞かされちゃったよ!
それにしても…
「あの、三浦先輩にはやっぱりバレたらいけないんです?」
「うーん…もちろん、大丈夫とは思うんだけどね…うちの学校って3年生は夏の大会までで引退って方針じゃん。だから最後の大会に集中してもらいたいからさ。もちろん、終わったらタイミングみてちゃんと言うつもりだよ。」
なるほどな…でもそれって
「でもそれだと負けた後に知ることになっちゃって…えっと、泣きっ面に蜂、みたいな…」
「大丈夫だよ!」
急に鬼頭先輩がすごく通る声でそう言った。
俺が鬼頭先輩の方をに顔を向けると、そこにはすごく真剣な眼差しの笑顔があった。
「最後まで勝って終わればいいだけじゃない!そうすれば美和先輩のこと心配する必要ないよね!」
「……そうすっね!」
本当に鬼頭先輩のこういうところは素直にかっこいい。
だってそれインターハイで優勝するってことじゃん!
「シズってば相変わらず無茶言っちゃって…でもその話、のった!」
東内先輩はそう言って左手を高くあげる。
「「イェーイ!」」
その手に鬼頭先輩が軽くハイタッチをする。
なんかいいな…
「てなわけで、外にいる匠海の相手頼んだよ!」
「了解っす!」
俺はそう言ってバッシュを脱いで体育館を出ようとすると2人に背を向けて出口へ向かう。
そんな俺に背後から東内先輩が声をかけてきた。
「そうそう、あとこれからはあたしとシズのこと名字で呼ぶの禁止ね。もちろんあたしらがいなくてもだかんね。先輩命令だから絶対だぞ!」
「は?」
全くこの先輩はなに急に言い出すのだろうか…
「返事は?」
「わかりましたよ!…えっと、マリ先輩。」
「うむ、よろしい!」
俺は少し駆け足で体育館を出た。
しかし困ったな…静香先輩?いや、シズ先輩…ああ!もう!なかなかにハードルがしかも明日からも2人で朝練するんだよ?それなのに下の名前でって…でも先輩は俺のことをりょーへーって…いやいや、2人で名前で呼び合うとかさ…ああああああ!
なんで身悶えてしながら外コートに着くと確かに木村先輩が黙々とシューティングしていた。
「おはようございます。」
「ん?ああ、凌平か。朝練?」
俺を確認した木村先輩はそのままシューティングを続ける。
「はい…その、し…鬼頭先輩にハンドリング練習を付き合わされまして…」
我ながらヘタレだと自覚はある。
「ああ、女バスの練習始まるから追い出されたわけね。」
「そんな感じっすね。」
「俺もさ、今年はもっと上まで勝ち上がりたいから…少しでも練習しとかないとなって思ってな。」
木村先輩は俺と話しながらも黙々とシューティング続けている。
でもさっきマリ先輩からこの時間に来る理由聞いちゃってるんだよなぁ…まあ、ここはそれを踏まえて話を合わせるか。
「はい、そのためにマリ先輩と一緒にこの時間に来たんですよね!」
木村先輩がシュートを放ったままの態勢で固まったかと思うとゆっくりと俺の方を向いた。
「おい、凌平…今からなんつった?」
「は、はい?」
ヤバい…やらかしたのか?
ゆらゆらと揺れながら木村先輩が力強く俺の肩を掴む。
「マリ先輩?なんだそれは?」
ああ、そこが地雷だったのか!
「いえ!あのそう呼べと言われちゃいまして…」
「誰に?」
「ま…東内先輩にです!」
さっそく約束破りをしてしまった。
「ったく…マリのやつ、絶対俺にこの反応させたくてだろ。とりあえずお前もシューティングでもしたら?」
「はい。」
木村先輩からボールを受け取り一緒にシューティングをば始めた…だけど、俺のシュートは全く決まらん。
「凌平ってさ、恒哉と同じ中学で同じバスケ部だったんだよな?」
「そうすけど…」
「なんでこんなにスキルに差があるの?」
「ぐっ…」
痛いところ突かれた。
「まあいいけどさ…お前もっとシュートぐらいカッつけろよ。」
「でも、カッコつけても入んなきゃ意味なくないですか?」
「ダサいフォームで全然入らんお前が言うな!」
そんな正論言わなくても…
「いいか、NBAやBリーグなんかでもシュートが上手い人らってみんなフォームもかっこいいだろ。あれってなんでかわかるか?」
「……」
「単純だよ。もともとジャンプシュートって理にかなったフォームになるほどきれいでかっこいいフォームになるんだよ。だからフォームを意識しろってこと!」
「そういうことっすね!」
静香先輩も木村先輩もすごいな…ちゃんと色々と考えてバスケをやってるんだ。
だからあんなに上手くなれるのかな。
カッコいいフォームか…
パッと思い浮かんだのは…現役時代の父さんだった。
試合も何度か観に行ったし、チーム練習も連れてかれたっけ…あの頃は全く親のやってることに興味なかったし、カッコいいなんで感じてなかったけど…あのかっこいい静香先輩が憧れるんだから父さんは選手としてかっこよかったんだろう。
うろ覚えながら真似てみる。
肘は広がらないようにして…頭の上にボールをセットして目線の先にボールとリングを一直線に重ねる。半歩だけ右足を前にして軽く膝を曲げる。その曲げた膝を伸ばすように力まず軽くジャンプして…手首をリングの方へ曲げる。
シュッ!
俺が打ったのが信じられないぐらいきれいな弧を描いて
ボールはリングに触れることなくネットだけを揺らした…と言ってもリングの手前に落ちてネットに触れただけだけど…カッコ悪い!
そんなこと思ってるといきなり後ろから頭を掴まれたと思ったら髪の毛をワシャワシャにされてしまった。
「やればできんじゃん!大したもんだよ、凌平!」
木村先輩が満面の笑顔で誉めてくてる。
「でも入らなかったすよ…」
「当たり前だろ。はじめからスパスパ決められるかよ。でも左右にぶれなかったし、あとは距離感だけ掴んでけばいいだよ!それに…かっこいいフォームだったぞ。」
「木村先輩が教えてくれたからっすよ!ありがとうございます。」
「ああ、そうだな!俺のおかげだな。ガハハ!この調子で毎日打ち続ければかなり入るようになるぞ!」
「うす!」
ハンドリングにシューティング…毎日やらなきゃのことがいっぱいだ…でもなんかすげー楽しくなってきた!
「でもな、凌平…マリのこと名前で呼ぶのは禁止だからな。わかってるよな?」
「……うす。」




