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SPLASH!  作者: まるたん・しもんず


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第10話 ルックアップ

俺はストレッチしながら鬼頭先輩のシューティングを見ていた…正しくは見惚れていたの方がいいかな。

だってスパスパと決めるんだもん!

スリーポイントってそんなに決まるものなの?

5箇所を一本決めるごとに移動していってるみたいだけどトータルで2本しか外してないよ。


…俺、中学の頃から練習を含めても多分5本も決めたことないぞ。


「おまたせー、もう始められそう?」


「あっ、はい!バッチリです!」


先輩に声をかけられ俺は返事をしながらバッシュの紐を結ぶ。


「ねぇ、りょーへーくんのバッシュかっこいいよね、ナイキ。」


「そうすか?ありがとうございます。毎回父さんと選んでるんすよね。あの人、コービー好きのナイキ好きだから…」


俺が履いてるのはコービー9。父さんが高校の合格祝いで買ってくれたのだ。


「えっ?でも勝さんってずっとアシックス履いてたんじゃ…」


「ああ、プロになってオファーが来たのがアシックスだけだったらしいんですよ。それから結局一度もナイキからは話がなかったってたまに愚痴ったますよ…って先輩?どうかしました?」


なぜか目の前で先輩は絶望の表情をしている。


「ううん…なんでもないよ…よし!次買い換える時はあたしもアシックスじゃなくてナイキにしてみようかな!」


わかっちゃいるんだけど.なんとなくまた父さんに対して敗北感を抱いてしまった。


「はい!」


俺が少しモヤってると先輩がボールをバウンズパスで渡してきた。


「それではハンドリング練習するよ。」


「ハンドリングすか?」


「うん。だってりょーへーくん苦手でしょ?」


本当にこの先輩はバスケとなると容赦ないなぁ…


「だから、ハンドリング!あたしと同じことしてね。」


そう言うと先輩は俺の真正面で腰を少し落として俺の顔を見つめて…なんか恥ずかしい。

そして右手で力強くドリブルを始めた。


「ほら、同じようにやってみて!」


「はい!」


俺も同じように腰を落として同じようにドリブルをつく。


「ちゃんとあたしを見て!」


…なんかすごく恥ずかしくなること言われてません?


「いや、その…それはちょっと…照れるというか」


「ちゃんと正面で相手を見て!ボールは見ない!」


そうですよね…そういうことですよね。


俺はなんとか先輩の顔に視線を向ける…やっぱり俺のような彼女いない歴=年齢の高校一年生にこれはしんどい。

校内でもかわいいと評判の先輩と見つめ合いながらとかさ…


「あっ!」


案の定、俺はボールをファンブルしてしまう。


「す、すみません…」


「いいよ。失敗することはぜんぜんいいから。それよりもちゃんと相手を見て、ボールを見ないですることが大事だから。」


そう言ってる先輩は真剣な表情だ。

それを見たらなんか浮わついてた自分に罪悪感を覚えてしまう。

そうだ俺が上手くなれる方法を教えてくれてるのに俺が真剣にならなくちゃ!


ボールを再び力一杯ドリブルする。


「いいよ!次はもっと低い位置で!」


「はい!」


先輩は俺の顔から一切視線を全く逸らさずにより床に近い位置でやはり力強くドリブルする。


俺も同じようにやってみる。


「次は左手で!」


「右、左、右でフロントチェンジ!」


「レッグスルー!」


「ビハインドザバック!」


先輩の掛け声と共にメニューをこなす。

もちろん何度もボールは手からこぼれまくったけど…

一通り終わると額にうっすらと汗をかいた先輩が落としていた腰を上げる。


「ふぅ、一旦水分補給しよっか。飲み物もってきてる?」


「あっ、はい!来る途中で買ってきました。」


そして2人でそれぞれのカバンの中からスポドリを出して並んで飲んだ。


「ぜんぜん先輩みたいにはできないもんすね…」


先輩は一度もミスすることはなかった。あらためて同じことをやってみてその差がとんでもないことを実感させられる。


「当然!あたしは中一の時から毎日これやってるんだから。」


「毎日すか!?」


そりゃあんなに上手くもなるわけだ。すげー!


「毎日はちょっと言いすぎたかなぁ…風邪ひいちゃったりとか家族旅行や修学旅行の時にはできなかったし…」


いや、それ以外の日はやっとるんかい!


「それでもすごいですよ。ほぼ毎日じゃないですか。」


「うん。だからりょーへーくんもこれから毎日続ければ今より上手くなれるよ。」


「毎日ですか…」


「うん。だってね…これはバスケに限らないと思うけど理不尽だもん。上手くなるのは大変なくせに下手になるのはすごく簡単。だから少しずつでも毎日進まなきゃって…」


先輩は笑顔でそう言った。


なんか今の言葉がすごくしっくりときたというか…納得できた。


「そうですよね。ただでさえ俺は下手くそなんだから上手くなるためにはコツコツやるしかないすね!」


「頑張りたまえ!」


俺の決意に先輩は最高にかわいい笑顔を向けてくれた。


「じゃあ、最後のいきますか。りょーへーくん、ヘイ!」


先輩はそう言って左手を軽く上げて俺にボールを要求してきた。


俺はその左手に軽くボール投げる。

ボールを両脇に抱えて先輩はベースラインに向かう。

俺はそれについていく。


「じゃあ仕上げは2ボール。とりあえずあたしのやるの見てて。」


そう言うと先輩は左右同時にさっきと同じように力強くドリブルして見せてくれた。もちろん低い位置でも同じように。


「ほい、やってみて。さっきと一緒でちゃんとあたしの方を見てなきゃダメだからね。」


いかん…何度聞いても破壊力高すぎるセリフだ。


「やってみます。」


うん。やっぱりなかなかに上手くいかない。何度もボールが手からこぼれてしまいながらもやりきった。


「OK、OK。ちゃんとボールを見ずにルックアップしたままできたね。」


先輩が褒めてくれる。

そりゃそうだ。俺だって男だから先輩から見てていいと言われたからにはそのご尊顔をガン見しちゃいますともさ!


「じゃあ次で最後ね。ボールいい?」


そう言われて先輩にボールを二つとも渡す。


「じゃあ今からあたしが両手同時にドリブルついて逆サイドまでドリブルするから…りょーへーくんはあたしの両肩に手を置いておもいきり進ませないように押して。」


は?


いやちょっと待て!いきなりお触りはハードル高すぎてそんな!俺はいったい何を考えてる?そうじゃないだろ!いやでも先輩の体に触れるの!?


「い、いいんすか?」


「うん。よろしく。」


先輩はなんの抵抗もないようだ。ならばやるしかない!


「失礼します…」


俺は先輩の肩に手を置いて少し前傾姿勢になる。


「じゃあいくよ!」


先輩もさっきのように力強く両手でドリブルつきながらやはり前傾姿勢で前に進もうとする。


当然お互いの顔が最接近してしまう。

やばい…かわいすぎる。


先輩は真剣な顔で俺を少しずつ押しながら前進した。

結局、最後までドリブルをノーミスで逆サイドのベースラインまで俺を押しながらやりきってしまった。


「はあはあ…やっぱりりょーへーくんはパワーもあるね。朝練誘って正解だね。」


膝に手を置いて呼吸を整えながら先輩がそんなことを言っている。


「もしかして朝練誘ってくれたのは今のがやりたくてですか?」


「うん。りょーへーくんだと身長的にもバランスいいし、フィジカルは強いからちょうどいいかなって思いついちゃったの。なかなかに天才じゃない?」


…あるとはわかっていたけど、ああこれがオチってことね。


「よし!じゃ、次はりょーへーくんがドリブルね!」


ボールを持った俺の方に先輩が手を置く。


俺はやはり何度も何度もボールを逸らしながらコートを縦断したが…結構キツいなこれ。


「お疲れ様。もうすぐ女子の朝練が始まるからここまでだね…ありがとう。これからも一緒に朝練続けてくれてもいい?」


「もちろんですよ!なんだかんだ俺もかなり練習になりますから。」


「じゃあ明日も同じ時間に来てくれるかな?」


「いえ、明日からは俺も先輩と同じ6時に来るようにします。」


「やる気だねぇ、後輩。」


先輩がスッと右の拳を前に出す。

俺も同じように拳を突き出して先輩のそれにコツっとグータッチした。







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