第9話
スマホのアラームが鳴る。すぐさまあたしはオフにする。
今朝もアラームより目覚めの方が早かった。
あたしは寝る時用のTシャツと短パンから練習用のTシャツとバスパンに着替えて靴下を履く。
昨夜のうちにいつも通り制服や着替えはカバンに詰めてある。
そのちょっと重めのバックパックを手に持ち部屋を出て洗顔と歯磨きを終えてリビングの方に向かった。
「おはよう。今日も早いわね。」
そう言いながらキッチンではお母さんがすでにあたしのお弁当を作り終えて朝ごはんのお味噌汁に豆腐を投入してた。
「おはよ。お母さんの方が早いよ。」
時計はまだ午前5時をまわったところだ。
「私はいいのよ。シズを送り出してからゆっくりと二度寝しちゃうもん。お父さんの分の朝食も一緒に作ってるから。」
あたしはお母さんの言葉を受けて一人でキッチンでお味噌汁を温め直してるのを想像してしまった。
ごめんね、お父さん。
お母さんがあたしの朝ごはんをダイニングテーブルに運び始めたので配膳を手伝う。
ご飯に豆腐と大根にネギたっぷりのお味噌汁、玉子焼きと今日のメインは豚バラの梅と大葉巻き。毎朝手の込んだ料理を作ってくれるお母さには感謝しかない。
「いただきます!」
両手を合わせそう言ってあたしはパクパクと朝ごはんを食べ始める。
そして向かいに座ったお母さんと他愛のない世間話をするのが朝の日課だ。
「そうそう!ゆかりちゃんがそろそろ復帰できるかもって、この前会った時言ってたわよ。」
「へー…もう一年になるもんね。県大会にも出てくるのかなぁ?」
「うーん、夏はまだ難しいみたいよ。それよりうちの事務所に入ってくれないかしらねぇ…」
「お母さん、本気で狙ってるよね?」
「まあね。」
そんなふうに話しながら食べ終わる。
「ごちそうさま。じゃ、行ってくるね。」
そう言ってあたしは立ち上がり隣の椅子に置いておいたバックパックを背負う。
「うん。行ってらっしゃい…ねえ、もう半ば諦めてるんだけど髪ぐらいちゃんとしていったら、今日も寝ぐせ、そのままよ。」
お母さんに指摘されてあたしは手首につけていたヘアゴムで髪を一つに束ねる。
「これでいいかな?」
「あんたにはもう期待しない…」
お母さんは呆れながらも笑顔で手を振ってくれた。
玄関を出るとまだこの時間は肌寒い…せっかく背負ったバックパックを降ろして中からパーカーを取り出し羽織る。
学校までは15分ぐらいだからいつも通り6時前にはつけるね。
もう充分に明るくなった道を歩き始めた。
校門に着くと用務員の市川さんが体育館の方から歩いてきてた。
「鬼頭さん、おはよう。ちょうど今体育館開けといたから。」
「いつもありがとうございます。」
本当にいつも助かります。
そこであたしは今朝はもう1人来る可能性があることを思い出して…
「市川さん、もうちょっと後に男子バスケの子が1人来るかもなんで、もし見かけたら体育館もう開いてるって伝えてあげてくれませんか?」
「あいよ、まかしとき。」
市川さんに一礼して体育館に駆け足で向かった。
体育館はしっかり照明も空調もしっかりと点いている。
本当に市川さんには感謝しかない。
バックパックからバッシュを出して足を通す。
紐は締めないまま一通り軽めのストレッチの後にギュッと靴紐を締めた。
キュッキュッ…
何度かバッシュでフロアを軽く蹴ってスキール音鳴らす。
ボールを手に取ったあたしはゴール下から順番にシューティングを始めた。
ゴール下、ローポスト、ハイポスト、左回りで0度、45度、トップ、45度、0度とミドルレンジを決めてスリーポイントを打つために左のコーナーに向かおうとしたところで…
「お、おはようございます。先輩。」
少し驚いたような声が聞こえた。
「おはよ、りょーへーくん。思ってたより早く来たね。」
体育館の時計は6時20分。
伝えてた時間にはまだ10分ある。
「いや、てか先輩こそ何時から来てるんすか?」
「ん?6時ぐらいかな。」
本当にりょーへーくんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をよくしてくれておもしろい。
「とりあえず、あたしはシューティングがあとちょっとだからバッシュ履いてストレッチしっかりしておいてね。」
「う、うす。」
りょーへーくんの返事を聞いたあたしは左コーナーからのスリーポイントを決めた。




