No.35
いつもと時間が違いますが、何とか書き上げられたので、投稿いたしました。
No.35
「『魔境』にはオリジナルの『記録石』があり、それが使える!?」
ヨーグの鬼紋闘法術の名称がなぜ源流とも言われ、最早名すら消えかけている気功闘法術を扱うのかを再度問い聞くシン。その答えには『魔境』には『記録石』が存在し。『魔境』の住人はその『記録石』を使用できるとヨーグは語った。
そしてヨーグはその『記録石』から気功闘法術のスキルの力を引き継いだと言うのだ。
シンはその答えに酷く驚く。何しろ自分の情報、アコルの町でティグリスに聞いた情報では、この世界の住人は既に『記録石』は使用できなくなり。唯一別世界から来る渡界者のみが、『記録石』を使えると言うことなのだ。
ティグリスの情報が間違ったいたのかと考えるシンに、ヨーグは更なる情報を開示した。
「まあ全ての住人が使えるわけではないのう。使える者と使えぬ者が居るよ。儂はその差は"血"ではないかと考えられておる」
「血?」
「うむ。儂のような古からこの地に居る者。その者の血を引く者、これは使用が出来る。逆に出来ぬものは外から来た者じゃ。その者の子供も使用が出来ぬ。例え片親が『記録石』を使えたとしても、もう片親が使えねばその子供も使えぬ。今では多くの者が『記録石』を使えなくなって居るよ。おおっ! そう言えば渡界者との間の子供はどうなんじゃろうな? どうじゃろうか? 御主の子種を子供を欲しがっておる娘子に与えてくれんかのう」
あまりの突拍子もないヨーグの言葉にさしものシンも言葉が出てこなかったが、何とか正気を保ち慎んで辞退したシンであった。
「使用できる出来ないの差については、興味のあることですが、今は置いておきましょう。今は何故ヨーグさんが『記録石』を使用が出来るのと、気功闘法術の技がお使いに為られるかです」
「さてのう、儂も指して詳しくはわからん。使えるから使っておる。あの情報屋が色々と調べていたようじゃが」
「『獣の王』でしたね。もしや当代の『獣の王』は全員『記録石』が使用できる方達ですか?」
「そうじゃ。使用できる者達の中でも、特に非凡な才の持ち主が『獣の王』に選ばれておるのう」
シンはヨーグの話を聞き。暫し考え、ここ『魔境』にある『記録石』を見せて貰えないかと相談する。
「構わんよ。最早集落の者にとってはただの置物みたいなもんじゃからのう」
城壁に備えられたいた会議室の様な一室から城壁の中、つまり集落の中へと行く。
外は朝焼けが出始め、『魔境』の朝が始まろうとしていた。そこでシンはヨーグにも自分の都合があるのではと、場所だけ教えて貰えればあとは自分で探すと提案する。
「ほっほっほっ。大丈夫じゃよ。儂な様な老いぼれた爺が口を出しすぎると若いものが育たんからのう。ほれ、こっちじゃ」
本気なのか冗談なのか。ヨーグは軽快に笑いながらシンを集落チンロンの中を案内する。
集落チンロン。日が昇り始めてきた時刻だと言うのに人はまだ少ないが、あちこちで活動している者達が見受けられた。
「ああ翁。おはようございます」
「おはよ。昨晩は『魔境』が少し荒れておったぞ。外へ出る者が要れば気を付けるように言っておくのじゃ」
「はい。わかりました」
「翁様。おはようございます!」
「元気が良いのう。良いことじゃ。今日も一日がんばるんじゃぞ」
「はい!」
ヨーグが近くを通ると誰も彼もがヨーグに声をかける。ヨーグはその声かけに気さくに返事を返す。
「ヨーグさんはこちらのチンロンにお住まいなのですか?」
「いいや。儂は北のショワンウーの集落に家を持っとるよ。儂のような『魔境』の外に出て、ああっちこっちの集落に行くものは少ないからのう。半分は外の情報を知りたいと言うのがあるのかのう」
自分のように道楽で外に出る者は希だと。しかしその希な行動のお陰で、集落の者達も外の情報を知ることができるとヨーグは語る。
外は多くのモンスターが蠢くように活動していて、更に外縁には巨大な亀裂があって外界との情報遮断もされている。『魔境』で生活する者にとっては集落だけが安全で安らぐ場所となるのだから、外から来る者の情報と言うのは彼らにとっては有りがたいものなのかもしれないとシンは思っていた。
そうしてヨーグの案内の下、暫く集落内を歩いていると、木造が多くあるチンロンには珍しく石造りの半球体状の小さな建物が見えてくる。大きさ的には二階建ての一軒家ぐらいであろうか。出入口は一つらしく、その出入口にも扉はなく素通り出来る状態となっていた。
「ここじゃよ」
ヨーグはシンを手招きしながら建物内に入っていく。
アコルの町にある『記録石』は三十メートルは優にある碑石である。それが十メートル有るか無いかの建物内に在るのだろうかとシンは首を傾げるが。
「確かオリジナルの『記録石』は小さいと覚えがありますが」
『おうそうだな。俺様が覚えている限りでも、使い手だった奴よりは、幾分デケェかってくらいの大きさだったな』
「そこまで小さいのですか。なるほど、それならこの建物内にも収まる事は出来ますね」
シンも中へと入る。中に入ると外の石の材質とは違った。『高殿の搭』で初めてこの世界に来た時に見た。黒曜石のようなほのかに光源を放つような石が敷き詰められ、ドーム状の空間に光源無くと暗闇に困ることはなかった。
そしてこの建物内の中心には二メートル弱の同じ黒曜石の、こちらは光を放つことはない碑石。『記録石』が鎮座するように立てられている。
「これがオリジナルだと知らなければ、アコルの町である『記録石』の模造品だと言われても、分からないかもしれませんね」
『記録石』には碑文のように何かが刻まれ書かれているが、その文字を読み解くことはシンにはできなかった。
「こうすると使えるんじゃよ」
アコルの町にある『記録石』同様に、ユニークカードを置く台座にヨーグはユニークカードではなく手を置く。すると本来台座に仮想画面が現れるのが、こちらの『記録石』には刻まれている文字が輝き。その輝きが文章のようになる。
「これは!? これがオリジナルの『記録石』なのですか!?」
「外に在るものは儂は見たことがないのでなんとも言えんが、『魔境』にあるのはこんな風になるのう」
『相棒先に言っておくぞ。俺様の薄らぼんやりとした記憶にもこんな風になっていた覚えがある』
百地が先んじてシンに告げると、興奮した心を落ち着かせるように息を吐く。
目の前に光るオリジナルの『記録石』。その碑文内の文字の中でも光る文字だけは、シンにもそれが何と書いて在るのかが、何故か理解できた。
その理解できたものはヨーグのステータスであった。
【名前】:ヨーグ
【年齢】:146
【性別】:男
【種族】:妖魔族
【星力】:無
【職業】:氣功術師Lv:84
【称号】:格闘王 殺戮王 破壊王 獣の王
【獣王名】:虚宿天卿星君・虚日鼠
【職業能力値】
体力:A 筋力:B 耐久:B 知力:C
精神:C 敏捷:C 器用:C 感応:D
【継承固有スキル】:天地武神流・気功闘法術・C+
【クラススキル】:気功術・A
【保有スキル】:総合格闘術・S 不屈・S 農業・F
【エクストラスキル】:健康長寿・B
しかしそこに刻まれているものはシンの知るステータス表記とは、幾分違ったものであった。
(ステータスの表記の仕方に若干の違いがありますが、アコルにある『記録石』同様の仕組みはあるのでしょう。ヨーグさんが言っていた"血"のみならず、他にも何かしらの使用するための条件がこれにはありそうですね)
シンはティグリに聞いていた模倣された、現在渡界者のみに使える『記録石』には大きさだけでなく。こうした表記の現れ方からしても何かしらの違いがあるのだろうと推測していた。
「これを私が使用しても問題はありませんでしょうか? 集落ショワンウーの『獣の王』。虚宿天卿星君・虚日鼠殿」
『なっ!? このじいさんが!?』
「ほっほっほっ」
目の前の『記録石』に記載されていた情報から、ハルシオンが語った『魔境』に存在する五人の『獣の王』であることを知り。その名を口にした。
その名を口にしたことで百地は驚きの声を上げるも、こんな化け物のような強さを持つ老人がこの『魔境』にうようよと要る方が異常だと気がつき。寧ろ納得をする。
ヨーグの方は自身が『獣の王』であることが知られると、イタズラを仕掛けていた子供がそれが不発に終わってしまったと言うように笑っていた。
「来る時にも言ったが最早置物みたいなもんじゃ。必要時以外は誰も使わんからのう、別にええんじゃrーーー」
「いくら翁とは言え、この集落での勝手は控えて貰いたいものだな」
許可を出そうとした時、出入り口から若い男の声が鋭く発せられた。振り返ると朝日により逆光に晒されていたが、ゆっくりとした足取りで建物内に入ってくると、徐々にその姿が露となる。
二メートル近くありそうな身の丈に、細身であるがガッチリと発達した筋肉。そして爬虫類を思わせる獣頭人族に腰辺りから蛇のように長い尾が垂れ下がった、作務衣のような衣服を着た。ファンタジー世界ではリザードマンと呼ばれる者であった。
「なんじゃガルド。どうせ滅多に使わんのだから別に構わんじゃろうが?」
『……相棒。ありゃあ陸人族の奴だ。とすると奴が』
「ええ。彼がこのチンロンの『獣の王』心宿天王星君・心月狐でしょうね。何しろ」
「……ああ。ありゃあ強ぇな。強さがわかる強さだ」
導師・Tやヨーグのように一見強者なのか疑わしい存在感の者ではなく。強き者が放つ覇気のようなものが感じられた。それ故二人は現れた人物がこのチンロンを治めている『獣の王』だと認識したのであった。
「確かに儀式以外では使用していないとは言え、『獣の王』である俺を通さずの使用。あまつさえ勝手に『外』の人間を招き入れると言うことに問題があると言って要るんだ」
「うむ。そう言われると確かにそうじゃのう。使用云々に関しては詫びよう。しかし外からやって来たものが生きてここまで来れたんじゃ。中に入れてやる優しさくらいはあっても良いもんじゃぞ? 昔の御主ならそれぐらいの度量は持っておったがのう」
「いつの話をしている。俺とていつまでも子供ではない。今はチンロンに住む者達を守る『獣の王』の一人だ。危険の可能性の存在が要れば、排除するのが当然の責務だろう」
「言わんとすることはわかるがのう。じゃがもう少し柔軟な考え方をせんと、人として成長はせんぞ」
「だからいつまでも子供扱いをするな! 俺は今や貴方と同じ獣の王の一人だッ!」
今だ子や孫を相手をする祖父のような対応のヨーグに恥と怒りの声をあげる。
だが幾らそうであったとしても、その感情の爆発の仕方に少し違和感を持ったシンは。
「お二人のお話を割るような形と為りますが宜しいでしょうか?」
「なんじゃ?」
一旦クールダウンを兼ねて二人の間に割って入ると、ヨーグはどうかしたかとシンに聞き返すが、ガルドはシンに対して鋭き視線。それこそ親の仇のような敵意に違い視線を向けた。
「先ずは今回の事に関して陳謝を。ヨーグさんに連れて来られたとは言え、こちらのルールを知らぬ間に犯してしまったこと大変申し訳なく。此度の一見に関しましては、寛大なお心を持って対処して頂きたいと思います。またこちらの『記録石』の使用に関しましては、私は渡界者ですので、死亡した際に一番最後に『記録石』に触れた所に再出現致します。現在は外縁付近に在ります監視搭に為りますので、こちらで記録させて頂いた方が私にとって都合が良かったと言うことと。私の好奇心を満たすためから、ヨーグさんにご提案させて頂いたと言うことですので、どうかヨーグさんに咎めの責をお与え下さらぬようお願いします」
ヨーグは「御主も固いのう……」と、シンの詫びの言葉の感想を述べていた。
ガルドはシンの言葉に裏があるのではと言うように、その言葉の真意を推し量るように黙ったままでいた。
「以上のような理由があり。今回の行動に移った訳なのですが、その上でこの様な願いを申し上げるのは恥知らずだと言うのを承知で申し上げます。どうかこの私にこちらの『記録石』の使用の許可を頂けないでしょうか?」
ガルドにシンは深々と頭を下げ願う、だが。
「断る。何処の誰とも知れん者に『記録石』を使わせる訳にも、ましてやチンロンに滞在させておく理由もない。即刻立ち去れ」
「こりゃ! ガルド! 外から来た者にその態度は!」
にべもなく断ち切るガルドにヨーグは叱りつけるよう言う。ガルドはガルドでチンロンを守っているのは自分で、ヨーグではないのだから口出しするなと反論をしていた。
そして彼らの意見の違いから来る言葉の応酬となり得るところで、シンが再び断つように言葉を述べる。
「それは今このチンロンで何かしらの問題が起きていて、その問題を起こしている人物が判らず。兎に角怪しい人物は一人でもこの場所から出したい。そう言うことだからでしょうか?」
シンの言葉に真実があったからか、ガルドは驚きの表情を見せたあと。
「き……貴様か! やはりあの行いをしたのは貴様かッ!」
烈火の如く怒りの声をあげると、まるで飛ぶ矢のようにガルドはシンに向かって駆け出す。
「心気偶造・星火燎原!」
駆け出しながらガルドはひとつの力ある言葉を紡ぐ。するとその右手に長物、ハルバードが突然出現する。
ガルドはそのハルバードを一振り振り回すと、ハルバードから火の粉が舞い散る。
だがそのその火の粉はただ舞い散っているだけではない。異様なほどの熱量を放ちシンへと襲い掛かってくる。
シンの頭上にその熱量を持った刃が振り下ろされる。
「止めんか。いきなり物騒なものを振り下ろしおって」
ヨーグシンの前に立ち。『気』によるものだろう。薄く輝く膜のようなものでハルバードを防いでいた。
『気』の防御壁と火の粉を吹き上げるハルバードが攻めぎ合う。
「翁ッ! 邪魔をするなッ!」
「落ち着かんか。何をそんなに怒り猛っておる。この者は今日『魔境』に来たばかりじゃぞ。面識すらないじゃろうが」
阻まれたハルバードを再度振り回しその火の粉の量を上げ、何度何度ヨーグが作り出した防御壁にハルバードを叩き付ける。叩き付ける度にその衝撃音が大きく。防御壁を揺ら動かしていく。その揺れにヨーグは顔色ひとつ変えること無く受け止め続けている。
「まったく何を頭に血を昇らせておるんじゃ。すまんのう。何やら虫の居所が悪いようじゃ」
ガルドのこの不可解な行動に溜め息を吐くヨーグ。
「それは私の不用な発言のせいでしょう。申し訳ありません」
「そう言えば御主が言ってからじゃな。まるで誰か死人が出たように豹変したのは」
「……ええ、実際に亡くなった方が出たのでしょう。それも誰かに無惨に殺された形で。そして集落の皆さんはまだその事実を知らない。と、言ったところではないでしょうか」
「なんじゃとっ!? どう言うことじゃ!? 御主何か知っておるのか!?」
「いいえ。このチンロンで今起きている出来事の実情は知り得ません。ですが彼の、ガルドさんと仰いましたか。言動や態度、そして集落の様子から大凡予想してそう口にしただけです」
「それだけの情報でわかったと言うのか? 殺った者は誰じゃ!?」
「それは流石に。現場の状況などから調べればある程度は推測できるでしょうが……」
その許可をくれそうなものが冷静さを欠いていると、今だハルバードを叩き付けるガルドを見る。
「こやつも普段は物の通りがわかる奴なんじゃが、余程頭に来ておるのか、これでは話し合いに応じそうもないのう」
ヨーグは独特な呼吸法を用いて一呼吸する。
そして攻撃してくるガルドのハルバードを防御壁で受けつつ。
「ほい」
軽く飛ぶような動作にも関わらず、その姿を追うことも出来ず。気がついた時にはガルドが出入り口に向かってすっ飛んでいく姿が見えた。
通りの方で大きな音が立ち。騒ぎの声が聞こえてくる。
「これで少しは頭を冷やしたじゃろう」
『いや冷やしたって言うか、逆にヒートアップさせたみたいだぞ』
出入り口の方から先程よりも強い殺気を感じとる百地。その声が聞こえなくともヨーグもわかったようで。
「本当にどうしたと言うんじゃ?」
ガルドの様子が普段とおかしいことに訝しみ。建物の外へと出る。
そこには明らかに正気ではないとわかるガルドがいた。目は血走り。口からは泡を吐きながら呻くような声を漏らし。持っていたハルバードを技術も何もなく。ただ闇雲に振り回している姿があった。その姿を例えるなら理性を失った獣であった。
「うむ、これはもう少し強く殴って気絶させるかのう」
暴れ回って手の出し用のないガルドを黙らせるだけの力量を持つヨーグは、言った言葉を本気で実行しようとするので、それを慌てて止めるシンであった。
「お待ちをヨーグさん。それは現状の解決にはなるかもしれませんが、根本の解決にはなり得ないと思われますが」
「しかしのう、このまま放っておけば被害は確実に出るぞ」
「それはわかっています。ですのでガルドさんを正気に戻すためのご質問のお時間を少しください」
「なんじゃ?」
「ガルドさんは何かしらの薬物を常時使用されて要る方でしたか?」
「いやそんな話は聞いたことはないが? それがなにか関係があるのかのう?」
「若干の違いはありますが、あの症状は薬物による精神異常に似ています。もし薬の類いならその毒気を抜けば良いのですが」
「薬か、ならシューマが薬物に関することはこの『魔境』では一番じゃが、ここからパイフーまでは行って帰ってくるまでに一日は掛かるからのう」
やはり気絶させるのが手っ取り早いと動き出そうとするヨーグ。その時にシンの目を通して見ていた百地がシンにガルドの方を見るように告げた。
『ちょっとあの陸人族の奴を見てくれ相棒。そうだ。もうちょっと凝視するような感じで……』
「どうかしましたか? 百地さん」
『やっぱりだ。さっきはなかったが、奴の心の臓の辺りに『黒』っぽいモヤようなモノが見える』
「『モヤ』ですか? ……その様なものは見当たりませんが」
百地の言うモヤを探すが、シンの目にはそのモヤを捉えることは出来なかった。
「何かあったのかのう?」
「来る時にご紹介した百地さんから、ガルドさんの胸の辺りに黒いモヤが見えると言うので」
「モヤじゃと……そんなモノは見えんがのう」
二人がガルドを観察するように見るが、百地の言う黒いモヤを捉えることは出来ない。百地の気のせいではと言うが。
『いいや気のせいじゃねえぞ!? 相棒! 黒いモヤがどんどんでかくなってやがる!』
再びガルドを見ると黒いモヤは見ることは出来ないが、ガルドの体に変化が有ることに気がつく。
皮膚が黒く体が肥大化しつつあった。
「これは……悠長に話している時間はなさそうですね」
「じゃがどうする。ガルドがなぜあんな姿に為っていくかわからん以上、儂らには被害が出ぬようにする以外はないぞ」
「それなのですが、可能性としてひとつあります。上手く行くかは分かりませんが」
「なにダメ元と言うやつじゃ。ガルドも訳もわからず集落やそこに住むものを手に掛けたと知れば死んでも死にきれんじゃろう」
『……このじいさん救うんじゃなくて、確実に殺す方面で話してねぇか?』
シンはその方法を端的に話した。
「……なるほどのう。可能性としてはなくはない話じゃ。じゃが儂も手を貸すとは言え……危険な役割じゃぞ?」
「そこはそれです。事を納められるのと、上手く行けば相手から信も得られます。一石二鳥と言うやつです」
「物は言いようじゃな。……うむ。ではやるかのう」
「はい。百地さん」
『おうよ! 任せときな!』
袖から百地を引き抜き。今やハルバードを持たず。四肢で大地を踏み獣の如き咆哮を上げるガルドへと向かっていく。




