No.30
No.30
「うーん。もしかして兄ちゃん渡界者?」
「はい。私は渡界者ですが、それが何か?」
「それは兄ちゃんの世界では常識な知識?」
「常識かどうかは分かりませんが。少なくともパイフー。チンロン。ショワンウー。チューチュエの別名である四神の名前。白虎。青龍。玄武。朱雀の方の名前は知らない方はいないと思われますが」
ハルシオンの質問に律儀に答えるシン。そんなハルシオンの方はと言うと。
「……ハァ」
長い溜め息を吐いていた。
「あの、どうかされたんですか?」
「こっちが苦労して集めていた情報が、ポンっとかってに現れた気分……ウキキ。まあ気疲れみたいな奴だから平気。あーそれと。先に言っておくけど。別におたくらを騙そうとかした訳じゃない。間違いなく集落を治めている『獣の王』は四人だけだ。ただその『獣の王』になる奴らは名が与える。その名前がさっき言ったナカゴやらキシュクやらの名前だ。そしてその与えられる名前だけど。同じ名前もあれば違う名前もある。それが一体幾つ在るんだと調べていたところで兄ちゃんからの言葉だ。まさに『口を開ければ果実が落ち入る』ってやつだな」
一体自分の苦労は何だったのだと言うように肩を落とすハルシオンであった。
「『獣の王』の名前が二十八在ると教えてくれた礼に。ここから一番近い集落チンロンへの道ぐらいなら教えてやるけど。どうする? ウキキッ」
別に必要がなければこの『魔境』でさ迷い歩く事になるがと暗に示してはいる。
どうするかと。シンは自分に話を任せてくれた後ろの者達に相談する。
「どうでしょうか。こちらのハルシオンさんに道案内を頼むと言うのは?」
「……胡散臭い奴だ。俺としては信用ならん」
「ならあんさんは一人別行動でもしますか? わいは町がある言うならそこに案内してもらいます」
キヤーナは反対意見を。プセマはハルシオンの案内に従うと言う。残りの三人は。
「俺もあの男は信用できない。だがこの『魔境』で生き残るには拠点が必要だ。見ておくのも悪くない」
ツークーも反対意見であったが。一度集落に行くのも悪い手ではないと言う意見を出す。
「この『魔境』で人が生活できるだけの場所が存在する、と言うのに驚きです。話を聞いた限りでは、まだ僕らがそこで受け入れられるかと言うのは分かりませんが。行ってみるべきだと言う意見には賛成です」
エスピオンも賛成の意見を述べた。
残る一人。短髪に褐色肌の中性的な印象を持つヴェレーノは。
「……こちらも構わない」
と、短く言葉を告げ。賛成の意見を述べた。
「渡界者のあんさんはどないします?」
「私も賛成の意見です。ハルシオンさんが素直に道案内をしてくれるかはさて置いておくとして。私にはここでやるべき事もあります。安全が確保できる場所があるならば、それに越したことはありませんから」
「あの晶石を100万個持ってくれば釈放と言う話ですか? あの看守長が約束を守るとは思えませんが」
「個ではなく。100万リーエン分ですが。それとアルニマさんにして頂いた契約書には、軽い呪いが掛けられて要るものだそうです。約束を違えればそれ相応の報いを受けるものだと伺っています」
「術装具の契約書ですね。それなら守るでしょうが。ただ軽いものだと反故される場合も……」
「確かにその効力が何処まで在るかは私には分かりません。ですのでその辺りはアルニマさんを信用するしかないでしょう」
あれが信用できる女かと、シン以外全員がそうした表情をしていた。
「キヤーナさん以外は全員ハルシオンさんに着いて行くことを決めましたが。キヤーナさんはどうされますか? ここからお一人で行動されますか?」
キヤーナ自身わかっている。この『魔境』は一人で生き残れるほどやわな場所ではないことを。暫し考えた後。
「きちんと案内するんだろうな」
「ウキキッ。そいつはもちろん。きちんとチンロンまでは案内するぜ」
にこやかにイケメンスマイルを見せるハルシオン。ただ全員がその笑顔を見ても安心できるものはなく。ただただ胡散臭い奴が笑顔を見えているだけと言う風にしか感じ取れていなかった。
「信用ないなぁ、俺っち」
お前の場合はその態度のせいだと思うぞ。
「ウキキッ。全員着いてくるならこっちだ。ただ会った時にも言ったが、俺っちは戦闘はさっぱりだ。もしモンスターに絡まれても俺っちは戦えないんでよろしく」
「お前のようなやつを当てにするか。良いからとっとと案内しろ!」
キヤーナに蹴飛ばされるよう催促されると、ハルシオン笑みを浮かべ。こっちだと手招きをしてシン達を導いていくのだった。
そしてハルシオンの案内で『魔境』の森を走るシン達がいた。
「このクソ野郎! この状況どうするつもりだ!」
「ウキキッ! だから言ったろう! 俺っちは戦闘は苦手だから。モンスターと遭遇したら任せるって! ウキキッー!」
「ふざけんな! テメェが通り道だと言って、ジャイアントアントの蟻塚の真横を通るから。俺達を敵と勘違いした奴らが襲ってくるんだろうが! テメェがどうにかしやがれ!」
キヤーナは走りなが口汚く罵るも。ハルシオンは笑いながら「それムリー!」と答え。キヤーナの額に青筋を多く浮かべさせていた。
「……これは、不味いかもしれませんね」
蟻達はシン達を諦めること無く追いかけてくる。
速度は決して速いわけではない。軽いジョギング程度の速度。しかしそれがいつまでも続くと、流石に体力的に問題がある。現にプセマは既に息が切れ。走りがおぼつかなくなっている。
「百地さん」
『おう! ようやく俺様の出番か!』
走り続けていたシンは立ち止まり。蟻と対峙する。
走りながら後ろを気にしていたキヤーナが、立ち止まったシンに気がつく。
「おい!? なにするつもりだ!?」
シンは答える事がない。それは珍しく少し余裕のない対応に思えた。
そして袖口に手を入れ引き抜くと。そこには鬼切状態の百地が現れる。
『さあ! いっちょ暴れるか相棒! だか気を付けろよ! 蟲系のモンスターはちょっとやそっと斬ったぐらいじゃ死なねぇからな!』
カタカタと刀全体が揺れ笑う百地。
「それでは百地さん。斬り殺すのではなく。食い殺す方法を取りましょうか」
『あぁん? あっははは! 面白いこと考える相棒だ!』
大爆笑と言うように先程より刀がカタカタと揺れ動く百地。
シンは握りしめ。ジャイアントアントに向かって走る。
眼前へと来るシンにジャイアントアントは立ち止まり。威嚇するようにカン高い音を体から発する。
シンはそれに気にすること無く。百地を横に構え。一閃振るう。その時百地の刀身、いやその全てが変化していく。刃は大きく幅広く。黒く大きな刀身に牙と口が現れる。
それは百地のもうひとつの姿。元の姿と言った方が良いだろう。日本刀であった『鬼切』百地から。片刃の巨大包丁『百地』へと変化したのである。
今までの場合巨大包丁である『百地』を振り扱うためにはシンのステータスでは扱いきれなかった。
しかし百地に日本刀の姿となる『鬼切』となったことで、シンのステータスでも扱いきれるまでには至った。
そこでシンと百地は導師・Tとの戦闘訓練の時に自分達の戦闘スタイルを見つけたのである。
それが振り回し扱いきれる『鬼切』の状態から『百地』へと状態変化を起こしたスタイルを。
これにより二つの変化しか持たない百地であってもいつ変化するか。それともしないのか。予想が着きにくい対人戦には極めて友好的な戦い方を見いだした二人であった。
もちろん予想が着きにくいだけではない。
以前は『百地』を振り回しながら戦っていたシン。それが今では百地に振り回されること無く戦えるのだ。それだけでシンの動きも洗練された動きとなる。
一閃と振るわれた百地は振るわれる途中で己の姿を巨大包丁へと変え。その刀身に在る口を大きく開け。ジャイアントアントに食らいつく。
『(バリッバリッ)噛みごたえの在るやつだが、あんま旨くはねぇな』
「そこは我慢して頂き。残りも行きますよ」
『おうよ! 喰らってやるから覚悟しやがれよ! アリンコども!』
その後は追われて逃げていたのが嘘のようにシン達の一方的な蹂躙劇が始まる。
『百地』から『鬼切』へ。『鬼切』から『百地』へ。ジャイアントアントに一撃を与える度に、その姿を変えていく。
斬られたとしても足や腕。頭さえ無くなろうとも。しばらくの間は動き続けることの出来る蟲系モンスターのジャイアントアント。
それが百地に体の大半を食われたことにより。その体を動かすことも叶わず。ピクピクと体を震わせその命を終わらせる。
一匹。二匹。三匹と百地に食われていき。ついには追ってきたジャイアントアントを全て食らい尽くした百地であった。
『ぷう、さすがに食いすぎって感じだな』
「お疲れ様でした百地さん。お陰で何とか為りました」
口からげっぷを出し。腹一杯と言う百地。
戦いとしてはまた一種異様な戦い方ではあったが、その戦いが終わった。
その様子を離れたところで見ていた者達は呆れと言うか。呆然と言うか。そんな表情をしていた。
「皆さん片付けが終わりました。これで走る必要がなくなりましたよ」
戦闘が終了したと告げるシン。それにいち早く反応したのがハルシオンである。
「ウキャキャキャ! 兄ちゃん面白い戦い方するんだな! あまりにも見たことない戦い方だから。俺っち見惚れちまってたぜ! ウキャキャキャ!」
合理的な戦術を見出だしているのに。そのやり方が力任せな戦い方。そんなちぐはぐ戦闘を見ておかしな兄ちゃんだと、バカ笑いをしながら称賛していた。
「また助けられたな。どっかで借りは返す」
「お気に為さらず……」
何処か意気消沈としているシン。どうかしたのかとキヤーナが尋ねる。
「あ、いえ。無用に襲ってくるのなら兎も角。ジャイアントアントの巣を横切ったのは私達です。追い返せれば良かったのですが、今の私達だとあの様な戦術しか選択できません……」
モンスターに同情しているのかと。呆れた表情をするが、シンの言葉にはまだ続きがあった。
「殺生をしたからにはそれを何かに活かす。それが私の自説ですが。今回はそれが思い付かないので気落ちしていたところです」
以前アコルの町に出現した『はぐれ異界の門』。そこより現れたゴブリンの群れは、突然現れた存在。
確かにジャイアントアントと同じ。縄張りに入ったから襲われる。とも言えなくもない。
しかしゴブリンの場合は町に程近く。放っておけば被害が出る。それ故に躊躇を持たずに退治する。
そしてもうひとつが倒せば、その死体を残さず消えていたので、シンも今回のような心情にはならなかった。
だが今回倒したジャイアントアントは門から現れたのではなく。外で、自然に生息する生物。その為、その姿は消えず。その遺骸を残したままとなっているので、シンは無駄な殺生をしたと気に病んでいたのであった。
「……ハア、ハア。なんやあんさん。無駄が嫌いやから。落ち込んどったんかい? せやったら蟲系のモンスターの外皮は処理すれば軽くて丈夫な鎧になる。ギ酸も持っとるやつも居るらしいで。そっちはどう使うか知らんけど。薬の材料になるて聞いたことがある」
プセマは荒い息を上げながら、自分も商人だから損は嫌いだと言うように、シンにジャイアントアントの使い道を教える。それは自分を助けるために立ち向かった。シンへの礼を兼ねての言葉であった。
「そうなのですか?」
「……ああ。モンスターの死体から武器防具を作ることはよく在る。以前に蟻の解体をしたことがある。もしやって良いのなら解体しよう」
今まで自己紹介以外ではほぼ沈黙を保っていたヴェレーノが名乗りを上げ。シンに許可を求めた。
シンは自分の心情のためこの場で解体作業を行うべきかと悩んだ。
「俺としては今のように逃げ回るしか手段が無いよりは、不恰好であろうと武器を持っていた方がいくらか安心だ」
更にツークーは、蟲であれば獣のような血の臭いで他の獣を呼び寄せる事はないだろうと、この場での解体を提案する。
ツークーの言葉が出たことで、それぞれそうした方が良いと意見が出た。
シンは皆さんが良いのであればと、小休憩を兼ねた解体作業を行うことにした。
小休憩をすると言うことなので、シンが持っていた携帯食と水を人数分取り出す。
「『魔境』に入れられるときは荷物は持たされないのが決まりなんですが、すごいですね。渡界者と言うのは」
携帯食とは言え。食べ物飲み物が得られるとは思っていたかったと驚くエスピオン。
「こうなるとわかっていれば、キチンとした食料も買い込んでおけば良かったですね」
『相棒が行き先を間違えなければ、そもそもこんな事態にはならなかったろ。そこはしゃあ無いんじゃないか?』
そこを言われてしまうとどうにも言えないと、苦笑するシンであった。
「すまない出来ればでいい。大きな刃物を貸してもらえないか。解体するのに必要なんだ」
解体を始めようとしていたヴェレーノがシンに刃物を貸してくれと言い寄ってくる。大きな刃物と言うことで一番大きな刃物は百地であったが。その百地が。
『俺様は相棒以外に使われる気はねぇぞ』
拒否の言葉を言ってきた。
それでは仕方がないと。クナイを取りだしそれをヴェレーノに渡す。
「百地さんは私以外には使われたくないと言うことなので、こちらで申し訳ありませんが」
「構わない。在るだけマシだ」
そう言ってクナイを受けとると解体作業を始めるヴェレーノ。
「もし宜しければご見学をさせて頂けませんか?」
「見ていて楽しいものじゃないぞ?」
「私も獣であれば解体をしたことありますが。こうした蟲系のものはありませんので、後学にと思いまして」
「……好きにすれば良い」
「それでは邪魔にならないよう見学させて頂きます」
シンはヴェレーノの解体作業を邪魔にならない位置で見学する。
その作業は不馴れな道具を扱っているとは思えないほど鮮やかなもので。シンも感嘆の溜め息を漏らしていた。
「鮮やかなお手並みです。これは一種芸術の域ですね」
「……慣れれば誰しもやれるものだ。ガラス性の密閉できる器はあるか?」
「ガラスですか? 少々お待ちを」
シンは袖に手を入れ。空を見つめるように探る。
「……いえ。在りませんね」
「……そうか」
「作業にご入り用で?」
「いや。蟻酸が採れる。それがわかっていながら見逃すのは、なんとも歯がゆいと思っただけだ」
「蟻酸ですか。こちらではどう使われるのかは知りませんが、プセマさんが薬の材料になるとか」
「薬と言えば薬だ。ただ『毒』薬と言う名前にはなるがな」
「参考までにお聞きしても?」
胡乱げな瞳でシンを見つめる。
シンはどんな毒なのか知っていれば回避も可能ではと、その毒に当たらないようにするための知識を欲した。
ヴェレーノは素人が使うのでなければと、シンにその毒のことを教える。
「この毒は口に入れると果実の様な酸味と痺れる様な味がある。少量なら問題はないが、多量に。コップの底が少し浸るくらいまで摂取すると、まず始めに手足の痺れを起こす。次に呼吸困難が起こり。やがて心の臓が止まり死に至る」
「対処の方法は?」
「鼻につんとした臭いがある。少し嗅いでみろ」
シンは言われジャイアントアントの死骸に近づきその臭いを嗅ぐ。
その臭いは少し鼻の奥を突き刺すような独特の臭いであった。
「確かに匂いますね。しかしこれは言われなければ分からないレベルではないでしょうか?」
「そうと知らなければ毒として知らずに摂取することが多い。だからこそこの手の毒物は暗殺なので用いられる。知らずに摂取した場合、舌に少しでも違和感があったら吐き出せ。毒が回ってからの対処はほとんど難しい。特定している間に死ぬからな」
「ご経験があるような口振りですが? もしや?」
ここにいるの重犯罪者。毒物に詳しいと言うことはそれを使用して行っていたのではと。しかしヴェレーノは。
「……お前は自ら間違えてこの『魔境』に来たと言っていたな。私も似た様なものだ」
「なるほど。ご事情は分かりませんが、深く聞き入ってしまったことにお詫び致します。何分気になったことには聞かずには要られない体質でして」
何処か影を指すヴェレーノ。この人物から犯罪者特有の気配を感じないことで、何か事情があって自分の様に今この場に居るのだろうと推測し。邪推した事への謝罪をするのであった。
「この足を貰っても良いか」
二人で話しているとツークーがジャイアントアントの足を一本欲しいと言ってきた。
「ええ。構いませんが。その足で武器をお作りになるので?」
「モンスターの生命力は凄まじい。死んでも直ぐであれば肉体を繋ぎ合わせれば癒着する。それを応用すれば槍の一本は作れる」
「そんなことが!? それを見学させて頂いても?」
「道具と引き換えだ。刃物と繋ぎ合わせるための縛る紐か何かを寄越せ」
「わかりました。ではこちらを。ヴェレーノさん。大変善き後学をさせて頂きました」
シンはヴェレーノに礼を言い。今度はツークーの作業を見学。シンは暫くツークーの作業を見学していた。
「お待たせ致しました。そろそろ出発を致しましょう」
「なんや。もうおしまいかいな。もうちょい食っておきたかったなぁ」
若干長めの小休憩となった休憩。その終わりを告げるとプセマが何かを頬張りながら残念そうに言った。
「携帯食でしたが、お気に召すものがありましたか?」
「ちゃうちゃう。あんさんがくれた携帯食じゃなく。わいが食いたい言ったのはこっちや」
プセマの手には木苺の様な果実があった。
「そちらは?」
シンが出した覚えの無い物たったので尋ねると。プセマはひとつの方向を指差す。
そこにはプセマの持つ果実と同じ実が生っている草木があった。
「ベリーの一種で野苺や。山ん中や森ん中にはよう有ってな。わいがまだ子供ん頃貧乏で食うもん困ってた時に食っていたもんや。商人として成功してもこれだけは好きでな。栽培もしたんやけど。どうも昔食った味とちゃうねん。だけどこいつは昔食ったまんまの味やったんや。思わず懐かしゅうてな。もうちょい食っておきたかっただけや。ただの感傷やからはよ行こうか」
名残惜しそうにしているプセマだったが、モンスターがいる場所でのんびり食事をして要るわけにも行かないと立ち上がり。他の者同様に行く準備を始めた。
一方シンはプセマが食べていた野苺が気になるのか、ひとつ果実を取り。それを口に入れると。少々顔をしかめたのである。
『どうした相棒?』
「いえ、少々思っていた味と違ったので驚いただけですよ」
『不味いのか?』
「ベリーと聞いたので、甘酸っぱい感じのものかと想像していたのですが。レモンの様な酸味の強い味でした」
『持っていってやるのか?』
「そうしても良いのですが。多くを収穫するのには時間が掛かります。皆さんを待たせてしまいますので。幾つかにしましょう。それに早めに集落へと着けば、こうした食べ物も有るかもしれません」
人が住み暮らす以上は食料が必要となる。この野苺も食料として集められているかもしれないと考え。シンは数粒の野苺だけを採ると、集落に向けての準備を始めると。
「ジャイアントアントから人数分の槍を作った」
そして出発前。ツークーからジャイアントアントから作ったとは思えない槍が手渡される。
「ウキキッ…。俺っちに渡されてもな……」
「わいは商人やで。戦ったことなんて無いでぇ」
「持つだけ持ってろ。多数のモンスターが来たらお前らなんて守ってられん」
ギヤーナの言葉で渋々と言うように受けとる二人。
「槍と言うよりは薙刀の様な感じですね。私は百地さんがいますので、何方かお使いに為られますか?」
「僕は槍は使ったことはないのですが。モンスターを突いての援護ぐらいは出来ますので」
『おい相棒。要らねぇなら俺様が食うぞ』
それそれが受け取り。集落チンロンへ向かい出発した。
そして一、二時間進んだ先で。
「ウキキッ。もうちょっと言った先で今日はもう休むぜ」
「一泊なんてこないな場所でするんかい!? それよりはよう集落へ連れてってんか」
モンスターがいる『魔境』で外で寝起きする。そんな危険行為出来るかと言うが、ハルシオンは頭上を指す。そこには茜射してきた空があった。
「この『魔境』の夜を進みたいって言うなら止めはしないぜ。ウキキッ」
「それは遠慮したいですね。昼間でさえ『魔境』の森は鬱蒼として暗いく。移動に困難しているのに、夜の『魔境』を歩くのは本当に自殺行為です」
「自分の身ぐらいならなんとかなるが。他人までとなると見捨てると言う選択肢しか思い付かん」
エスピオン。ツークーからの続けざまの言葉でプセマは押し黙った。
「夜営をするのは構いませんが、安全面はどうなのでしょうか?」
「洞窟だな。大型のモンスターは入るのは無理。中型もよほどじゃなければ入ろうとはしない。小型なら入ってこれるけど。入り口を閉じればなんとかなる。集落の奴らも休憩場所に使ってる場所だぜ。ウキキッ」
「なるほど。人が住むには不向きな場所ですが。一時の休む場所として使うなら問題ない場所と言うことですね」
納得した答えが出揃うと。一行はひとつの洞窟へとたどり着く。
そこは人が一人通れるか通れないかくらいの大きさの穴があった。
「ウキキッ。出入り口の穴は小さいが、中はそれなりに広いから安心だぜ」
そうして小さな洞窟の穴へと入っていく。




