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No.20




 No.20




 召喚()の百地の性能を試そうとしたが、アコルの町から出ることが出来ないと知ったシンは、門番から『傭兵ギルド』には訓練所が在ると聞き、『傭兵ギルド』へと来たのだった。


 「ここが『傭兵ギルド』ですか」

 『デケェ建物だな……』

 「おや? 外の様子が分かるのですか? 百地さん」

 『おうよ。相棒の見ている視点からになるが、こっちにも外の様子がわかるぜ』

 「そうでしたか。これは変な視線は向けられないってことですね」

 『まあそこまで気にする必要はねぇぞ。渡界者達の言うところの『テレビ』を見てるって感覚だ』

 「それはドキュメンタリー的な映像になるかも知れませんね」


 そんな会話をしながら『傭兵ギルド』へと入っていく。

 『傭兵ギルド』の中は木造仕立ての役所と言う感じであった。

 正面に受け付けカウンター。入って右側に待合所。左側にはボードが在り。そこに依頼書が張られていて、それを吟味している渡界者達がいた。

 シンは受付の空いてるカウンターへと向かう。


 「ようそこ『傭兵ギルド』へ。本日はどの様なご用件でしょうか?」


 受付では魔人族(イブル)の女性が対応した。

 魔人族(イブル)の女性は強靭な肉体を誇る男性とは違い。見た目は小学生から中学生くらいの容姿を持っている。

 しかしながら同時に大人の女性としての肉体も持ち合わせているのである。

 まあ何が言いたいかと言うと、見た目ロリなのにセクシーダイナマイツな肉体を持つ女性が多い種族なのである。

 そんな女性からコケティシュな笑顔を向けられたら、大概の男達は「あ、こいつ俺に気があんじゃねえ」と勘違いを起こすことだろう。

 現に待合所で座っている大半の野郎ども(渡界者達)は、このギルドに用があっているのではなく。彼女らに会うため()()に来ている哀しき男達(渡界者)である。


 「こちらで訓練所の施設が使えると聞いたのですが」

 「はい使えますよ。『傭兵ギルド』の会員の方でしょうか?」

 「いえギルドには加入していないのですが? 入会しないと駄目なのでしょうか?」

 「大丈夫ですよ。その場合必要手続きがあります。こちらの項目をお読みいただき。記載欄にサインをお願いいたします」


 受付の女性から木のバインダーを受け取り熟読をするシン。

 どうやらシンにはあの手の人物への耐性があるようだった。

 余程餓えてる哀しき男()はともかく。ロリ巨乳の人物とは言え、さすがに実年齢がさn(スコーン!)《ペンが木に突き刺さる音》。


 「どうかされましたか? いきなりペンを投げて?」

 「いえ~。ちょっと不穏な気配があちらの方からしたので、粗相を致しまして申し訳在りません」

 「そうでしたか? ああこちらはこれで宜しいですか?」

 「承ります」


 ガクガクブルブル。あと、三センチずれていたら目に刺さってた……。どうしてこちらの位置がわかったんだ!? 昨日から見つかってばかりだから、存在率は低くして、絶対に分からないようにしたはずなのに!?


 「では当施設の訓練所のご説明をさせていただきます。

 今回はゲスト登録と言う事で個人アリーナは使用できません。お使い出来るのは有料訓練所となります。

 こちらは他の使用される方もいらっしゃいますので、トラブルなど無きよう安全面にも気をつけてご使用ください」

 「分かりました。今回剣の試し切りをしたいのですが?」

 「ご項目欄に記載かれている物ですね。指定された区域でこちらの札を使用しますと、記載された的の形状。固さ。数。的の機動の有無等、項目通りの(モノ)が出現します。あとは練習をされて大丈夫です。

 ただ他に使用されている方やお待ちしている方がいらっしゃいましたら、譲合いの精神でお願いいたします」

 「譲合い、ですか?」

 「はい。当施設は全ての皆様にお使い頂けるほど大きくないので」

 「分かりました。その様に配慮いたします」

 「ありがとうございます。ではこちらの札をお持ちいただいて、あちらの扉より訓練所へと向かってください」

 「有り難う御座います」

 「使用が終わりましたら再びこの受け付けに来てください。その時に使用時間。的の出現回数等を計算致しましてお支払をしていただきます」

 「そうでしたか。前払いではないので、少し考えてしまいましたが、後払い方式なのですね」

 「中には何度も来て、手続きをするのが面倒だと言う方もいらっしゃいまして、このような方式を取らせていただいています」

 「分かりました。それでは使わせて頂きます」

 「はい。ご存分にお使いください」


 シンはカウンターから離れ。訓練所へと続く扉へと向かっていく。

 自分もシンの後を着いて行こうとカウンターを通りすぎる時に。


 「先程の女性に対しての発言の件。上に報告させていただきます」


 ちょっ!? はあ!? 言い掛けただけだし! それにこっちは危うく目に刺さるところだったんだぞ!


 「種族の身体的特徴はともかく。女性の年齢を暴露しようなどとは、万死に当たる行為です」


 そこまでッ!? って言うか! 何でさっきから自分のことを認識できる!?


 「気配遮断くらいの隠蔽では『傭兵ギルド』の受け付けなどやっていられません。ああそれとそこに居られると邪魔ですので、早くどっか行ってください」


 自分結構上の立場なんですけど。わかってます?


 「パワハラと受けとりますよ」


 ……はい。わかりました。

 くぅ、げにも恐ろしきオナゴよ。


 「聞こえてますよ」


 失礼しました!




 「これは……四ヘクタール分くらいの広さがありますかね」


 シンが言われた扉を潜ると、学校の校庭四つ分くらいの広さを持つ広場に繋がっていた。


 『おう相棒。ここはどうやら別空間みたいだぞ』

 「別空間?」

 『ああ。入った瞬間に結界のようなものを感じた』

 「そうなのですか?」

 『何かしらのアイテム(モノ)で、空間を広く取っているんじゃねえかと思うんだが? 俺様はそう言うのが専門じゃねえからわからねぇ』

 「便利なものがあると思えば良いでしょう。指定区域は、ああ、あちらですね」


 案内の文字が床に書かれており。シンはそれを見ながら練習区域へ向かっていく。しかしそこには。


 「……これは、人数が多いですね」

 『バカじゃねえかって、くらいに並んでやがるな。どうする相棒?』

 「様子見ですね。回転が速いかもしれませんし。それに何より。百地さんの新しい性能を一度知っておかなければいけませんから」

 『そうかい。しっかしなげぇ列だな』


 日本人とは列があれば並ぶもの。とまでは言わないが、こうした行為は最早国柄の特色なのだろう。

 シンは素直に列に並び。順番が来るのを待ちながら、自分と同じ訓練をしている者達を眺め見ていた。


 『おい相棒。見てて面白いか?』

 「そうですね……。今行っている方。型は綺麗なのですが、動きが直線的なのです。まるで動きをなぞっているような動きですね」

 『どれどれ。おおっホントだな! なんっうか見本みてぇな奴だな!』


 シン達が見ている渡界者は『デフォルト』と呼ばれる機能を使っている。

 この機能は予め決められているモーションをなぞるように動くよう設定されている為、システム上の機能を一切使っていないシンからすれば、誰かに見せるためのお手本のような動きに見えていた。


 「あれはスキルを唱えて、それに全て任せてるから、ああ言う動きになるんだよ」

 「え? ビックリいたしました。昨晩ぶりですね。Tさん」


 順番待ちをしていたシンのところに、昨日出会った導師・Tがそこにいた。

 導師・Tに突然声を掛けられたシンは驚いたと言う言葉を言うが、その顔は全く変わらず。本当に驚いているか? とツッコミたくなるほどであった。


 「こんにちは。昨日ぶりだね。今日はちゃんとごはん食べた?」

 「ええ。頂きました。昨夜のような失態は無いように致したいです」

 『誰だこの姉ちゃん? それと昨日なんかあったのか?』

 「百地さんはまだご存じなかったですね。こちらの方はこの『傭兵ギルド』のギルド長をされている、導師・Tさんです。昨夜私の失態でお世話になった方です」

 「うにゅ? 誰とお話ししてるの?」


 導師・Tは一人で誰かに話すように喋るシンを不思議そうな顔をして聞く。


 「これは失礼いたしました。実は今私は使役するモノ(サーヴァント)の百地さんとお話をしていまして、ご挨拶をしたいと思いますが、ここでは他の方にご迷惑となりますので、私からの言葉だけでご容赦ください」

 「へぇーそうなんだ。私は導師・T。よろしくね」

 『おう! よろしくな姉ちゃん』


 百地の言葉を通訳するシン。そして導師・Tからここへ来た理由を問われ。


 「みんなが使える場所はいつも人が一杯だからね……。個人用になると違ってくるんだよ」


 導師・Tはそれから少し考えて。


 「ねえねえ。その子の力が試せればどこでも良い?」

 「はい? ええ。確かに百地さんの性能が試せれば何処でも構いませんが」

 「ならねえ。ここじゃなくてこっちが良いと思うよ」


 そう言って手招きをしながらシンを別の場所へと案内する。

 そして案内された先は同じ施設内。人が極めて少ないエリア。

 そこは『PVPエリア』と呼ばれる対人戦専用エリアであった。

 おい……まさか……。


 「しかしこちらのエリアは二人以上の利用からしか使用できなかった筈ですが?」

 「ん? だから私が相手してあげる」

 「Tさんがですか? 宜しいのですか?」


 おい! 相手するのは構わないけど、絶対に! ぜ~ったいに手加減しろよ! それと体術だけだからな! 術も技も使うなよ!


 「うん! 大丈夫!」


 その返事はどちらに対しての返事だか分からないが、とても良い笑顔で答えたのだった。


 『俺様達の相手をするんだぜ? わかってるのかこの姉ちゃんは?』

 「分かっておいでですよ。それに百地さん」

 『あん? なんだ?』


 導師・Tはエリア内に入り。準備体操をしている。それが一通り終わるとシンを手招きして「いつでも良いよー」と声を掛けてきた。


 「あの方はかなりの力量者です……」

 『マジかッ!? あんなすっとボケたような姉ちゃんがか!?』

 「体幹。足運び。纏う雰囲気。どれも私の知り合いにいる、達人と呼ばれる人達と遜色ないモノをお待ちです」


 シンは「気を引き締めないと一瞬で終わります」と、導師・Tと自分達の力量差を百地に告げる。だが当の百地は半信半疑だったが。


 『まあ、やりゃあわかるか。行けるか相棒!』

 「こちらはいつでも。未熟者であるこの身。今はTさんにその胸を御借りし。今後の精進と致したいと思います」


 シンの言葉にきょとんとした表情を見せる導師・T。

 あなたの練習相手にはならないだろうが、今回はよろしくお願いしますってことだ。


 「あ! うん! こっちこそ! ドンと来いだよ!」


 威勢良く自分の胸を叩き。その豊かな胸を弾ませた。

 シンはエリア内に入ると、先ず百地を取り出した。

 巨大な包丁のような片刃の大剣がシンの袖口から姿を顕す。

 それは剣先から柄頭に至るまで黒一色のモノ。

 闇夜を思わせるそれに()は、生物を思わせるモノが存在した。

 (はばき)の部分にギョロリと目が。刀身の中程から稲妻が走ったかのように裂けた口が。

 本来無機物である筈の物に生物の()を持った。明らかに普通の刀剣ではないモノであった。


 『よう姉ちゃん。改めて自己紹介するぜ。俺様は銘は『百地』。千変万化に変化する生きた刀剣よ。おっといけねぇ。今の俺様はちっと弱くなっていてな。千も万も変化は出来ねえ。然れど弱いと思われちゃあ癪にさわる。無敵無敗の俺様があ! ちっと変わらなくなった程度で弱者呼ばわりは勘弁だあ! そいつを今から見せてやるから、その目ん玉見開いて、よぉ~く見やがれよ!』


 役者のような言い回しの言葉。導師・Tは目をパチクリとさせてから。


 「わあ!? しゃべる剣さんだ! うん! こっちこそよろしくね!」

 『カアッ~。怯えも無しかよ! 俺様の姿を見た奴は大概驚くんだがな! 肝が太ぇんだか。本当にすっとボケてんでかわかんねぇ姉ちゃんだ!』


 百地は導師・Tの態度に面白いと言うように笑い声を上げている。


 「それではご挨拶はここまでとして」

 「うん。やろうか。あ、一応ここの説明、いる?」

 「お願いできますか」

 「いいよー。ここは対人戦専用エリア。様々な設定をする事で色々な状況で闘うことが出来るの。でも今回はそう言う設定は無しね。

 在るのは互いのダメージが一定量になると対戦終了だけ。純粋な技量のみの場だよ。それとも何か必要?」

 「いえ。お気遣いなく。こちらとしても私自身の今の技量と百地さんの性能を試したいので、余計なものを付けない方が判断しやすいです」

 「じゃあ説明終わり。あ、ちょうど良いところに、虎次郎ー!」

 「にゃあ? うにゃーん」


 緑色の毛並みに虎縞模様を持つ猫。にしか見えない賢獣がトコトコと施設内を散歩していたところに導師・Tに声を掛けられ。その声に「何かよう?」と、言うように駆け寄ってくる。


 「虎次郎。今からちょっと鍛練するから。始まりの掛け声だけお願いできる?」

 「にゃーん!」

 「うん! よろしくね!」


 虎次郎から心地よい返事を貰え。改めてシンと対峙する導師・T。その姿に構えなく。自然体の立ち姿であった。

 片やシンは右足を引き。百地を右下に構える。剣道で言うところの『脇構え』と言う構えを取った。


 「……」

 「……」


 互いに無言。

 しかし既に戦いは始まっている。

 戦いの場には緊張の空気が高まる。


 「うにゃ~~~ん!」


 虎次郎が一際高く鳴く。

 その合図に先ず出たのはシンである。

 導師・Tとの力量は明白。ならば守るより攻め。

 そして何より百地の性能を知らねばならない。

 駆け出したシン。導師・Tとの間はまだあると言うのに百地を振り抜く。

 訝しむ導師・T。

 しかし直ぐにシンの意図を理解する。

 巨大な大剣自在に振り回すことのできないシンは、その遠心力を利用して百地を扱おうとして要ることに。

 百地を回し。徐々にそのスピードが上がる。

 初めて百地を振るったときに比べ。まだ百地に振り回されていると言う感じはあるが、それが徐々に修正されているようで、大分自分の思い通りに百地を振っていると言うようになってきていた。

 そんな常に大振りな振り方をしているシンに、導師・Tは柳に風と言うように悠々と躱し。


 「それじゃ当たらないよ」

 「でしょうね。百地さん」

 『おうさ! 新しいのだな!』


 百地の形状が変わっていく。

 幅広い刀身が細く鋭く。夜空に浮かぶ三日月を思わせる美しき刀身に。

 片刃の刀身の長さは大剣時よりは幾らか短くなり。中央より手元の部分から反り返った腰反りに。刃文は互の目乱れと呼ばれる波打つような刃文へ。

 相も変わらず(はばき)の部分に目はあるが、裂けた口は無くなった。

 目の部分(それ)さえなければ日本刀と然して変わらない刀剣に変化したのだ。


 「これが鬼切ですか。日本刀の太刀の分類に入る刀に変わりましたね」

 『おうよ! これなら相棒もいくぶん振りやすくなるだろう! いくぜ! 姉ちゃん!』

















次回の更新は2月3日となります。

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