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No.19




 No.19




 「どうですか? 百地さん。中の様子は?」

 『おう! 相棒。問題ねえなぞ。なんとなく居心地が良い感じもするぜ』

 「そうでしたか。それは良かったです」


 怒濤の勢いで喋る百地の言葉を止め。【藍の衣服】の収納に百地が入るかどうかを試した。

 百地はシンが装備した【藍の衣服】の袖口からスルスルと収納箱(ボックス)の中へと収納されていく。

 収納箱(ボックス)に入ったあと、シンとの間にだけ百地との会話が出来るようであった。


 「うんうん。問題がないようでよかったよ」

 「ありがとうございます。トイ・ボーイさん。大変素晴らしいものを頂きました」

 「どういたしまして。僕も作ったものが使われるのは嬉しい限りだよ。でもちょっと不足かな」

 「不足? 私には十分な品物ですが?」

 「僕の迷宮に入って、僕のところまでたどり着く分は、その【藍の衣服(アイテム)】でいいと思うんだ。そうじゃなくて。さっき聞いた君たちの情報分だよ。その分の対価が無いと言うだけの話さ」

 「先程の話でしたら、対価は必要ないのですが」

 「ノン♪ ノン♪ 君には価値がなくても、それ以外の人たちには価値があるお話だったよ」

 「私の持っていた情報はまだこの世界では知られていないのですか?」

 「そう。まだ誰も知らない。だから価値があるの。だからその情報に価値をつけるとしたらーーーああちょっと待ってね」


 トイ・ボーイは後ろを向き。ゴソゴソと体の中を何かを探すように動いていた。


 「ええっと、これでもない。これだと彼には意味がなさそうだし。ああ! あった! これが良い! はい! これ!」


 もう一度振り返り。シンの方へ指先すらない。四角い手を差し出す。その手の上にはひとつの指輪と一降りのクナイが載っていた。


 「こちらは?」

 「こっちの指輪は【聖者の泉】。毎分最大精力(マイン)値の二%の値で精力(マイン)を回復してくれる指輪だよ。過剰回復はしないタイプだから安心して使えるよ。

 で、こっちのクナイは【無限の刃】。攻撃力はそれほど無いんだけど。使用する人の精力(マイン)が在れば幾らでも作り出せし。作り置きも出来るクナイだよ。ただ一本は残しておかないと複製が出来なくなるから注意はしてね。この二つとひとつのアドバイスを君にあげるよ。それが対価かな」

 「この二つで十分な気もしますが?」

 「【聖者の泉】はお店に行けばそこそこの値段で買えるものだよ。【無限の刃】は僕お手製だけど、幾らでも数が作れるってだけの物だからね」

 「常に武器の補充が出来ると言うのはありがたいと思いますが?」

 「そこは考え方かな。で、最後のひとつ。君は術師タイプの職業(クラス)でしょう」

 「はい。先程お話した通りに私は幻想者(ファンタズム)と言う詠唱者(エレメンタラー)使役者(スレイブマンサー)の複合職業(クラス)のようです」

 「それで君は【詠唱短縮】のスキルは持ってないよね? 持っていたらさっき百地(サーヴァント)を呼び出す時にいちいち長々と詠唱してない筈だもの」

 「仰る通りに私は【詠唱短縮】のスキルは持っていませんが、それが?」

 「それをポイントで取るのをお勧めするよ。取ると術式構築に必要な術文を短縮出来るからね。戦闘では役立つよ。成長すれば【詠唱省略】ってやつにもなるよ。

 ただこのスキルのデメリットはその分精力(マイン)の消費が高くなるから、|精力【マイン》が多くないと管理が大変になるけどね。そこでこの指輪が解決してくれるよ! 

 そして君は術師だからね。敵に近寄られた時のために、近接用の武器を持つことをお勧めするよ」

 『おうなんだ! 俺様じゃあ頼りねぇってか!?』


 トイ・ボーイの言葉に百地が自分では頼りないのかと訴えるも、今はその声はトイ・ボーイには届かない。


 「もちろんクナイは近接用武器だけでなく。投擲用にも使えるよ。ただ君の場合は【投擲】スキルが習得できるかだけど、まあなくても投げられるしね」

 「親切にご教授ありがとうございます」

 「あははは。どっちかと言うと人のプレイスタイルを決めかねないアドバイスだからね。参考程度にしといてよ。あーでもそうすると。対価としてはやっぱり適切じゃないかなぁ?」

 「十分ですよ」

 「そう? 僕としてはまだ不足してそうな気がするけど……うん! 今度また出会えた時にでもオマケしてあげるよ!」


 その後はトイ・ボーイの案内のもと出口へと案内される。


 「それではトイ・ボーイさん。またどこかで」

 「うん。また遊びに来てよ。今度はきちんと作られた、僕の()()にね」

 「はい。そうさせて頂きます」

 「バイバイ。『キツネさん』」

 「ーーーえ?」


 トイ・ボーイ案内された出口。光の扉へと入っていくシン。その最中トイ・ボーイから自分の現実(リアル)でのあだ名を呼ばれ。パッと振り返るシン。

 しかし振り返った時にはトイ・ボーイの姿はなく。町の路地裏の道が続いているだけであった。


 「……子供のように無邪気な方でしたが。年老いた賢人のような知恵者にも思えましたね」


 トイ・ボーイのその見て呉れではなく。その本質的なモノを感じ取ったシンであった。


 『よう相棒。これからどうするんだ?』


 少しぼーっとしたいたシンに声を掛けると、少し考え。


 「そうですね。当初の予定では依頼の完了を目指していました。ですがそれもこの道を通り過ぎれば終わりです。ですので次は消耗品の調達と、そうですね。出来れば百地さんの【鬼切】の性能を見させて頂きたいですね」

 『構わねえぜ! むしろ使って試せって感じだ!』

 「ありがとうございます。ところで百地さんはよく私がお教えする前に、ご自分の能力を把握してらっしゃいましたね」

 『うん? なんだ知らねえのか? 相棒達渡界者は、記録石(モノリス)ってやつになんかすると、力が上がるんだろう』

 「更新ですね。はい。その通りです」

 『俺様達のような使われる連中も、その更新ってやつをすると能力が解放されるって言うか。まあ分かるようになる。だから相棒が教えてくれなくても、更新をすりゃあ分かるってことだ』

 「なるほど。そうしたシステムがあるのですね。しかしそうなると、私が更新しない限りは」

 『いつまで経ってもそのまんまってやつだ。それは相棒の方も同じだろう?』

 「そうですね。暇があるなら出来うる限り更新をしておきなさいと教えられましたから」

 『でもまあ、更新したからと言って強くなってるとは限らねえけどな! あっはっはっはっ!』


 初めの内はレベルが上がりやすいが、徐々に上がりづらくなると、導き者・Dに告げられていた。

 しかし自分がそこまで上がるまで、この世界(ゲーム)に要るかと言うのはあった。


 (……私がゲームを止めてしまえば、百地さんはどうなるのでしょうか……。誰か別の方に使役されるのでしょうか。それとも……)


 付き合いは短くとも百地には知性があり。感情があることを理解しているシンは、己がここにいる理由は仕事であり。その仕事が終われば去る人間である。

 その時の事を考えるともを召喚したことは間違いであったのではないかと、少しばかり後悔にも似た感情が胸の奥に宿ったのであった。


 (先送りになってしまいますが、その時にでも考えましょうか……)


 そうしてシンは今の考えを頭の隅に置き。商人ギルドの在る。区画へと歩き出して行ったのである。




 どこだ!? どこだ!? ーーーいったあああ! こんな所に! あれ!? 服が変わってる!? もしかして店屋に入ってた? え? でもこの辺は住宅街で店屋は無いしなあ? うーん。はっ! いかん! 仕事せねば!

 ごほん。それではこれより再び自分、語り部(ナレーター)がお送りいたします。

 さて、一時姿をくらませたいたシンは、いつの間にやら装いも新たにし。再び町の散策へと向かっていくのであった。




 ☆★☆★☆




 「あらあら。ようこそ。いらっしゃい。商人ギルドへ。今日はお売り? それともお買い物?」


 『高殿(ウテナ)の搭』は違い。個人営業の店と言った雰囲気を持つ商人ギルドへ赴いたシン。

 ギルドへと入った途端に人の良さそうな恰幅の良い妙齢な女性(オバチャン)が威勢と言うか、元気の良い声でシンに声を掛けてきた。


 「本日は買い物nーーー」

 「あらそうなの。何が必要かしら? ウチに在るものだったらなんでも出してあげるわよ。ああもちろんお金はきちんと貰うわよ。それで何が必要?」


 言葉の途中でマシンガンの如く喋るオバチャン。

 うーん。この手の人はよく喋るな。


 「本日は消耗品をーーー」

 「消耗品ね。薬? 日用品? あなた渡界者? なら遠出に必要ものかしら? そう。なら日持ちする食べ物ね。あなたキャンプ道具は持ってる? 持ってない? じゃあキャンプ道具も一式必要ね。ああそうだ。これを聞いとかなきゃ。予算いくら? どこまでなら出せる?」


 オバチャンのトークは止まらない。

 怒濤の如く喋るオバチャンの言葉にシンは「はい」とか。「いいえ」とか。「それでお願いします」とかの返答しか返していなかった。


 『なんつうか。よくしゃべる奴だな』


 人の、いや剣の事は言えないと思うが、百地がオバチャンにたいしてそんな感想を述べていた。


 商人ギルドのオバチャンはいったい何人分。いや何十日分の品を用意したんだと言うくらいの品を出してきた。


 「多いですね。お金が足りますでしょか?」

 「あら心配ないわよ。きちんとあなたの予算内ですべて納めたらか。ああそれより、収納出来るものは持ってる? あらそう。持ってるの。じゃあこれは必要ないわね。代わりにこっちとあれと、ああそれも足しときましょう」


 さらに増える品物。もう地面が見えなくなっていた。


 「出して頂いておいて何なのですが、一人分でここまで必要になるのでしょうか?」

 「備えあれば憂いなしって言うんでしょう? なら足りなくなるよりは大丈夫よ。外に出て長く活動したりすると、必ず足りないものが出てくるから。少し多いくらいがちょうど良いのよ。あと必要なものはある? もう大丈夫? あとで足りなくなって困ったりしない?」

 「ええ。問題はないかと」


 その後シンはオバチャンから品物の説明を受けながら、全ての品を服の中へと仕舞い込んだ。

 なんだあの服!? あんなアイテム在ったか!? 制作者がいるな……あのアホが作ったものかよ……。

 他の渡界者から苦情は来るわ。バランス崩すような、物は作らないが、そのギリギリのラインの物を作ってバラ撒くは、いい加減出禁にするか。

 そんな私的な事を考えている間に、シンは品物を入れ終え。支払いを済ませ終えるのであった。


 「それでは失礼致します」

 「はいはい。また来てね」

 「はい。また機会があればぜひ」


 挨拶も済ませ。店を出ると。


 『次は俺様の試しか?』

 「そうですね。町の中では危険ですから、外へと行きましょうか」


 そう言って外へと通じる正門へと向かう。

 え? 忘れてるのか?


 「む? 申し訳ないがあなたを門の外へ通すことはできない」


 今度はきちんと正門から通ろうとしたシン。

 しかし門番からその通行を止められたのである。


 「何故でしょうか?」

 「あなたは罪人としての連絡が来ていて、その罪を償うことなく。外への出入りは禁止されている」

 「そうでした。カムイさんにそう教えられていましたね。失念してました」

 『おいおい』


 シンは先の『はぐれ異界の門』での出来事の際、マナーの悪い渡界者達を取り締まる為に、本来恩赦で許される筈のものをわざわざ罪を背負い。罪人として罪を償うことをしたのである。

 その際、全ての罪を償いきるまでは町への出入りは出来ないようになっていると説明を受けたのだが。シンはその事をすっかり忘れていたようであった。


 「困りましたね。百地さんの性能を試そうと思い。人の居ない外へと考えていましたが」

 「むっ。何かしらの試しと言うことか?」

 「はい。何処か都合の良い場所をご存じありませんでしょうか?」

 「ならば『傭兵ギルド』へ行くと良い。あそこには訓練所もある。ギルドに加入していない者でも、手続きをすれば誰でも使用は可能だ」

 「そうですか。それはご親切にありがとうございます」

 「うむ。今回は知らなかった、と言うことで見逃すが、今度ここへ来るときは必ず罪を償い通るように」

 「はい。その様に致します。ご面倒をお掛けしました」


 シンは門番に頭を下げ謝罪をしてから『傭兵ギルド』へと向かって行った。
















次回の更新は1月27日日となります。

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